4.居心地はひたすらいい
ヒカリエ8階のギャラリーフロアは、ひと気もなく静かな場所だけれど、ギャラリーでは定期的にイベントが開催されるし、渋谷区の行政サービスセンターもある。
「こんなところに本屋があるなんて知らなかった」
人通りだけはあり、ふらりと入ってくるお客さんも多い。たいていは冷やかしだけれど、興味を示して長時間過ごしていく人もいる。
渋谷〇〇書店のことを、どこかで知って訪ねる人もたまにいる。
Wi-Fiも使えて空調も効いたスペースは、BGMも好きな曲をかけられて居心地がいい。おもしろそうな本を見つければ、あっというまに時間が経ってしまう。
給料がでないことを除けば、本好きにはとても楽しい、ぜいたくな空間だ。
店番をしていれば『魔術師の杖』もポツポツ売れた。たまに読者さんがやってきて、ドカンとまとめ買いされる。2,200円もするペーパーバックを、遠方からやってきて10冊まとめ買いされる方もいて、他の棚主さんをびっくりさせた。
お気に入りの巻だけを「紙でほしい」と買いにこられる方もいたけれど、私もそこまで売れるとは思っていなかった。
生のラノベ作家だということで、初見の方に面白がって買って頂いたり、「記念に」と買って頂いたり。お客さんと話すのは楽しいし、自分の本じゃなくとも売れると嬉しい。
けれど書店に並べてみれば、美麗な表紙も素通りされることが多い。よく漫画と間違われたし、ZINEを探しにくる人たちは、まったく興味を示さない。
人は無意識に興味を持てない分野だと判断すると、目の前に本があっても気づかない。
もちろん表紙にひかれて立ち止まり、購入して下さる方もいて、そういう人は店に入ってきた瞬間にわかる。本を見つけた時の目の輝きが違う。
どんな表紙に目を留めるのか気になって、お客さんの動線や目の動きを観察するようになった。









