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渋谷〇〇書店日誌  作者: 粉雪


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34/58

34.186番 モナミ書店さん

186番モナミ書店さんの棚

挿絵(By みてみん)

「藤沢駅から有隣堂が消えるんです。大問題だわ!」


 初めてお会いしたモナミ書店さんはおっしゃった。


 有隣堂とは……関東で展開する大型書店チェーンで横浜駅や恵比寿駅にもある。


 本の品ぞろえもよく、学習参考書も充実していて学生にも利用しやすく、ブックカバーやしおり、カードや文房具といった小物も充実している。


 なんで詳しいかというと、渋谷〇〇書店で『魔術師の杖』を購入されたお客さんにお渡しするSS入りのカードは、有隣堂で買ったものがけっこう多い。


「書店がなくなるの、痛いですねぇ」


 かつて全国に1万5千軒あった書店も、今では8千軒。新規開店も含む数字だから、実際にはもっと多くの書店が閉店している。世知辛い。


 なんでそんなことまで気にするかというと、商業作家にとっては『初版発行部数』……これにダイレクトに影響するのだ!


 まぁ商業作家さんたちの悲鳴はこの際、置いといて。


 モナミ書店さん、棚がスカスカである。


「しばらく家のことが忙しくて。こっちがほったらかしになっちゃった!」


 初対面でも棚主同士だと、棚を見てお互いを知っている。お互いの棚を眺めながら、ワイワイと自己紹介。


「この棚主さんて、どんな人なんだろう」という、密かに抱いていた疑問が解消されていく。


「『モナミ書店』の由来は何ですか?」


「エルキュール・ポワロがね、『私の友だち』と呼びかける時に『モナミ』と言うから」


「おおっ、アガサ・クリスティー!」


「ふだんはギャラリーでイベント関係の仕事をしているんです。棚にある本は私のと、父が趣味で集めた本とかですね」


 みんな別の仕事をしながら、楽しんでやられている方が多い。


 本業が忙しくなれば、パッと抜ける方もおられるし、気負わず楽しめるのが共同書店のいい所だ。


 で、モナミ書店さんには別の計画もあるらしい。


「自宅を改装して、ブックカフェをやりたいんです。渋谷〇〇書店と同じように棚貸しにして」


「ああ、銭湯の棚を利用した共同書店とかもありますね」


「そうです。だいそれた事は考えてなくて。みんなが本に親しんで、ゆっくり読書できるような場所にしたくて。店番は父に頼もうかなって」


 実は高齢のお父様が自宅にこもりがちなため、その生活に変化を持たせることも考えられていた。


「いいですね。じゃあ渋谷のこの店はやめちゃうんですか?」


「いいえ!始めたらこっちでも宣伝しますよ!お客さん呼びこまないと!」


 自分のペースで本と遊ぶ。モナミ書店さんの開業も楽しみだ。




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