31.3冊の献本と表紙についての考察
9月23日、ヒカリエ8階のイベントフロアで、〜マンガとWEBTOONから読み解く日韓クリエイション「越境」の可能性〜という催しがあった。
私は3冊の献本を持って行った。
イベントは映像研の作者大童澄瞳先生、Seoul Webtoon Academy理事長のパク・インハ氏、デジタルIPパブリッシャー「ナンバーナイン」CXO小禄氏の御三方によるトークショーだ。
Seoul Webtoon Academy理事長のパク・インハ氏によると、韓国では漫画バブルが起きた時、大学にも学科が作られ、専門学校まで設立されたという。
今ではシナリオ、ネーム、作画、演出、彩色等々、すべて分業で作品が作られている。
「今の大きなニュースは、Disneyと契約したことです。北米ではまだ縦スクロールに馴染みがなく、Webtoonは一般的ではないので」とパク氏。
横開きの漫画と違い、Webtoonはスマホの画面に特化した、縦スクロールの構成で、両方ともコミックとひとくくりにされるけれど、実はまったくの別物だ。
ナンバーナインの小緑氏は「当たれば大きい」と発言し、大ヒットとなった作品の紙書籍版第一弾の発売を控えておられた。
パク・インハ氏が「紙媒体とは違う光の表現の多彩さが、Webtoonならではの新しい表現であり魅力となっている」と言われる。
『魔術師の杖』は電子書籍がぐーんと伸びた時期に発売され、波に乗れたのは、表紙やキャラクターデザインをお願いしたよろづ先生が、元々ゲームのイラストレーターだったことも大きい。
肩書きは『会社員』だけど、しっかりとしたキャリアをお持ちのベテランで、社内では指導的役割もされていたと聞いている。こうしてフリーランスでときどき仕事も請け負い、『魔術師の杖』も引き受けて頂いた。
彼女のイラストは紙に描かれたようなものではなく、透過光を生かした光の表現や色彩のバランス感覚が素晴らしい。
海中や夕暮れの街、夜の月明りから魔導シャンデリアに照らされた舞踏会の場面まで、さまざまな光で文中の場面を表現してもらった。
まさに電書時代だからこその表紙で、スマホやパソコンのモニター画面で、とてもよく映えるため、表紙のイラストに惹かれて読み始めた読者さんも多い。
「我が社で制作に携わるクリエイターさんにも、漫画家ではなくイラストレーター出身の方がいます」とは小緑氏。
ただし電子書籍は書店に並ぶ本と違い、作品の露出自体は販売サイトにおける広告や、サムネイルと呼ばれる小さな表示に頼るため、その表現には制限がある。
感覚的には切手ぐらいの小さな画面に、表紙が凝縮されてしまう。1冊の本として手にとっても見応えがあり、小さくしても何が描いてあるか、パッと理解させる表紙を描くには技術がいる。
よろづ先生の絵は商品パッケージとしても優秀で、見た人を物語の世界へと引きこむ力があった。
しかも『魔術師の杖』は表紙と中身がピッタリ合っていた。
単巻でそれぞれの表紙を見ても美しいけれど、この作品は10冊並べた時がいちばん映える。
けれど書店に並ぶ本ならば、もっと違う表現が追及できただろう。彼女のイラストを見るには、四六版でも小さいと感じてしまう。
だから小緑氏の「日々、戦いです」という言葉もずしんと重く響いた。
いろいろ興味深いお話を聞いた後、御三方にそれぞれ『魔術師の杖』の献本をお渡しした。
みなさん開口一番に「美麗な表紙だ」とほめて下さって誇らしい。なんとなく表紙で大切なことはつかめてきた。
・当然、パッと目をひくものがいい。
・表紙に載せる情報は精査しないといけない。
表紙は本全体の印象を左右するから、キャラクターの表情や服装、ポーズ、小物まで、作者は自分で考え決定して、それをわかりやすく伝える。
イメージ通りに……というのは、なかなか大変な仕事だ。
表紙や挿絵の指示をだすときは、もうすでに頭の中に完成形がある。よろづ先生はいつも、それを超えるものを描いて下さるからありがたい。
実は『魔術師の杖』に初めてレビューを下さったのは韓国の方で、翻訳ソフトを使ってなろうを読まれ、毎月感想を頂いていた。
まだ書籍化も決まる前の無名な時期だったから、本当に心の支えになったことを、ご本人ではないけれどパク氏に話し、献本をお渡しした。
読者さんと作家の関係は一方的で、こちらから何か伝えたいと思ったら、文章を書くしかない。
もうその方はなろうでの活動を止めていて、感想を頂くことはないけれど、どこかで『魔術師の杖』を見かけて、「お、頑張ってるな」と思って下さったらそれでいい。
「『魔術師の杖』は出版社に『縦スクロールのWebtoonには向かない作品です』と言われ、結局横開きの漫画でコミカライズが決まったんですよ」
そう通訳を介して伝えたら、パク氏もおやという顔をされた。
たぶん次に見るとしたら、コミックの単行本第一巻の表紙だろう。
小説と漫画の表紙も別物で、小説の場合は背景や小物など、場面をしっかりと描くことが多い。けれど漫画の場合は人物のドアップなど、キャラクターを前面に出した表紙が多い。
こちらはマッグガーデン様にお任せなので、ひつじロボ先生が描かれる表紙も今から楽しみだ。
せっかくなので大童先生にサインをして頂く。フレンドリーで優しい方だった。漫画家になるつもりで創作活動はしていなかったとおっしゃる。
「僕はおしゃべりなので、トークショーみたいなイベントには、よく駆り出されるんです。原稿の持ち込みではなく、イベントでスカウトされたのがきっかけですね」
ちょうどネット大賞の発表があったばかりで、受賞された九條葉月先生のサインと並べて渋谷〇〇書店に飾った。
で、肝心の『魔術師の杖』の表紙を次はどうするか、まだ頭の中に浮かんでいない。読者さんにアンケートをするには、タイミングを逃してしまった。バシッと決まらなければ動かないと思う。









