3.店番スタート
初日はゴールデンウィークにでかけ、スタッフさんからレクチャーを受けたあとは、いつでも自由にカレンダーでシフトを入れられるようになった。
(……あれ?)
なんと5月のカレンダーはほぼ真っ白で、いつでも入り放題だった。とりあえず11日とあと何日か入れる。書店に置いてあるチラシにはこう書いてある。
『棚主さんは最低でも三か月に一度シフトに入って下さい』
1日のシフトは前半と後半にわかれていて、どちらも3時間。130人で……回るわけがない。しかも入れ替わりの時期だったらしく、退店する棚主さんもいて、店番がちょうど不足していた。
よろづ先生のイラストのパネルも展示するため、持ちこむ荷物が多い私は、数日間まとめて入ることにした。
店番が終われば片づける決まりだけど、数日まとめて入ればいちいち持ち帰らなくても済む。最初は平日に入り、慣れてきたら土日もやるようになった。
本は平日で10冊ぐらい、土日だと2~30冊は本が売れる。
海外からの観光客も多く、スターウォーズのライトセイバー型風船に、ハングル語で『本』と書かれたピンバッジなど、話しかけるとなぜかいろいろ貰った。
もともと接客業だし、本のことなら深刻な話にならない。月末になると退店する棚主さんが撤収のためやってきた。
時々書店さんはその名の通り、ときどき棚主をやるのだという。
「棚を置いて奥にある本がよく見えるように、高さを出すといいですよ」
そう教えてくれて、使っていた棚をそのまま貰った。また数年たったら、ふらりと戻ってこられるのかもしれない。
別の棚主さんからは、販売ケースに残っていた最後の1冊を貰う。
家で印刷してホチキスで留めた、手作りのZINEと呼ばれる小冊子だった。棚主さんが幼少時にいっしょに過ごした人形たちの、大切な思い出がつづられている。
少し名残惜しそうに眺めてからそれを下さったから、処分するのはしのびなかったのだろう。家に持って帰って本棚に置いた。









