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渋谷〇〇書店日誌  作者: 粉雪@『魔術師の杖』11月1日コミカライズ開始!


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23.224番 コトプロ書店さん

224番 コトプロ書店さんの棚

挿絵(By みてみん)

 コトプロ書店さんは自費出版の同人誌を売っておられる。


『東京近郊、日帰り山行 手描き香盤集』


「900部刷っちゃったんですよねぇ。文学フリマとか神保町のブックイベントでも売っているけれど、余っちゃって。だから棚を借りて在庫減らそうかなって」


 ハイキング、山歩き……登山ほど重装備はいらず、気軽に楽しめるレジャーとしても人気だ。


 何時に出発してどこそこを経由して……と、手描きの行程表を『香盤』と呼び、写真や図も使って、実際に山に登った気になる。


 山歩きを楽しむ人は多いのか、ちょくちょく売れている。


 あとは一緒に置かれている、ご友人のZINEも評判がいい。

挿絵(By みてみん)

【カフェ・バクダッド】


『中東カフェを旅する』

 行きたくても行けないようなカフェ。写真入りで1店1店紹介されている。大昔、コーヒーは薬として扱われていた。布製のひさしの下、濃いぃ面々がカップを手に水たばこをくゆらせ、レンズに目を向けている。


『日本で食べられる中東料理ガイドブック』

 こちらは第二版ができたばかりだ。


『この広い世界を知るための10皿 西部アフリカ篇』

 西部アフリカ料理を食べられる、都内の店を紹介している。


 どれも一般書店では買えず、内容は特殊でおもしろい本だから、入荷してもすぐ売り切れるため注意してほしい。


 224番のコトプロ書店さんは、221番の粉雪書店と入店時期も近く、出店準備や店番、棚のチェックでちょくちょく顔を合わせた。


 もとはテレビ局のお仕事をされていたという。


「ロケの連絡って送ってもみんな忘れちゃうから、当日ペーパー1枚に手描きした行程表を配るんです。わかりやすいって評判で。山歩きも趣味で続けてて同じように作ったんですよ。それがこの香盤表のもとになってて」


「あ、なるほど。けっこう売れてますよ」


 老若男女問わず、香盤表に興味を示す方はいて、じっくりご覧になってから購入される。休日はコトプロ書店さんの香盤表を手に、山に行かれるのかもしれない。


「それでね、粉雪さん」


 コトプロ書店さんは、渋谷〇〇書店のカウンターに、ぐいっと身を乗りだした。


「実は『山と渓谷社』の編集長に連絡とって、この香盤表持って会いに行ったんですよ。最初はね、相手してくれるかなぁなんて思ったんですけど。連絡してみたら、会ってくれることになって!」


「おお!」


「こういうの他にないし。それに『香盤』って言葉を『断捨離』みたいに定着させたいんですよ。もとは香道の言葉が、歌舞伎で使われるようになって、それから映画や芸能の世界で普及したんです」


「いいですね!」


 その先は私も、ここに書いていいかわからないので、ご興味のある方はコトプロ書店さんに直接たずねられるといい。


 渋谷〇〇書店は、ちょっと面白いことをやっている人たちが集まる本屋でもある。

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