21.2番 みこと書店さん
「棚主を始めたのは、自分がその立場になったとき、『必要だ』と感じたからです」
みこと書店さん『中学受験を控えた子どもたちのための課題図書』を中心に、棚を揃えておられる。
8月は夏休みシーズンということで、本の補充にこられた。
夏休み前になると、店頭に山と積まれる課題図書なんて懐かしい。今は長編小説を書いているのに、学校の読書感想文なんて毎回苦労した記憶しかない。
「それ、絶対必要ですね!」
「けどこれが必要なお子さんを持つ親御さんって忙しいから、ヒカリエにあるこの書店まで来られる方って少なくて……そこは盲点でした」
明るく笑われる。
昔、私は小学生だったとき、担任に注意された。
「読書感想文は、あらすじを書くのとは違います」
だってマス目を埋めるのが大変だったんだもの。作文でほめられるのは、いつも決まった子だった。
「心情が生き生きと表現されていて素晴らしい。将来は作家か……文章を書く仕事がいいでしょう!」
今も文章が上手だという気はしない。そういえば、あの子は文章を書く仕事についたのかしら。
絵本や児童書とも違う、課題図書。大人の世界を知りつつある、思春期の少年少女に刺さりそうな表紙は瑞々しさに満ちている。
身近な題材を扱いながら、友人や家族との関わりを考えさせるような内容は、大人になったら読まないだろう。
課題図書に選ばれているからと、仕方なく本を読みだせば、意外と心にぐっさりと刺さるものが多い。
健やかな成長を願って。
人生の荒波にもまれても、たくましく生きられるように。
これらの本はきちんと精査し、選ばれたうえで、著者だけでなく、たくさんの人の想いをこめて、読み手に届けられている。
そんなことにようやく気づけた夏だった。









