20.166番サニークッキーの七色書店さん
166番サニークッキーの七色書店さんは、広告関係のグラフィックデザイナーさんで、事務所を移転したのを機に、置けなくなった本を店に並べておられる。
装丁も凝った大型本が多く、今となっては手に入りづらい稀少な本ばかりだ。たまに見つけて、何冊もまとめ買いをされる方もいらっしゃる。
「もう今では手に入らないから高いんだけど、なかなか買う人がいなくて」
デザイン関係の本なので、それ専門の人しか買って行かない。あまり長いあいだ店に置いていても、本が傷むから困るとおっしゃる。
この日も持ってきた本の値段をメルカリで調べて、ため息をつかれた。
「あらやだ。この本、1万8千円もするわ。持って帰ってメルカリで出品したほうがいいかも」
置きっぱなしでいい渋谷〇〇書店の方が管理は楽だけど、確実に売りたいときはメルカリも利用されるという。
というか、お店にくるお客さんがときどき、本棚の前でスマホをいじっているのは、棚の写真を撮るだけじゃなくて、七色書店さんのように本の値段を調べていたのかもしれない。
「この書店、『え、こんな本が⁉』と思うようなのが、無造作にあちこち置かれているんですよねぇ」
「そうそう。だから探す人は、棚の奥までチェックしますよ」
ヒマワリのような形の『サニークッキー』というキャラクターをデザインされた方で、漫画家のひつじロボ先生が描かれた、『魔術師の杖』のイラストを指さしておっしゃった。
「私、こういう絵は好きじゃないんですよ。もっとシンプルなのが好み」
「はぁ」
はっきり言われる方だ。
「やなせたかし先生のアンパンマンとか、そんな感じの絵柄が好きなんです」
「そうなんですか」
私は頭の中で、やなせたかし風『魔術師の杖』を想像してみた。
元気いっぱいのネリアは、なんとなくドキンちゃんかな?
クールなレオポルドはイケメン枠だから……食パンマン?
正義のヒーローっぽいアンパンマンは、ライアスだとして……イメージがだいぶ違う。
愛嬌たっぷりのチーズは、ミストレイだとゴツすぎるかな。
ジャムおじさん風グレンに、バイキンマン風オドゥ……まったく違う物語になりそうだ。
「仕事もあって、たまにしかこられないし……まめに棚の手入れもできたらいいんですけど」
棚の本が減った頃合いを見計らい、仕事の合間を縫って補充にこられる。重たい大型本が何冊もあると大変そうだ。
けれど処分するのはもったいない。必要とされる方の手に渡したい、という想いは伝わってくる。実際に、デザインを学ぶ学生さんが、買って行かれることもある。
お話してからは私も意識して棚に目を配り、サニークッキーの七色書店さんの本を、目立つところに置くようにした。
見栄えのいい大型本は、それで売れることもあるから、ちょっとは売り上げに貢献できているかも。









