14.ぬい撮りですよ、粉雪さん!
200番のサチヲ書店さんは最初、画集などを中心に並べていたという。外国製の美しい仕掛け絵本なども売られている。
私が入店したときにはZINEコーナーの一角に、豆本をいくつか置かれていた。指でつまめる小さな絵本で、1ページごとに絵柄も変わる。
それが「かわいい!」と大人気で、よく売れていた。小学生がおこづかいで買うこともある。
なんと私が置いていた『魔術師の杖』を、ひと目で気に入って下さった棚主さんは、私が店番のときにいらして、話しかけてこられた。
ミニチュア作りに凝っていて、その普及のために豆本を売り始めたけれど、「豆本にシフトしようかな」とおっしゃる。
「自分にできることで、この渋谷〇〇書店を盛り上げていきたいと思っているんですよ」
「それがミニチュアなんですね」
「はい、『粉雪書店』もぜひ応援させて下さい!」
そう言ってご自分の棚に、豆本用の本棚までこさえただけでなく、店頭で配布していたよろづ先生のイラストカードから、グッズも作って下さった。
そして教えられる。
「ぬい撮りですよ、粉雪さん!」
「ぬい撮り?」
「お客さんは店内あちこちで撮影されてらっしゃいますよ。撮影小物になるようなグッズを作って置いておくんです」
「なるほど」
百均のSeriaに寄って推し活グッズを買い、家でフィギュアと一緒に、もらった豆本を撮影してみる。
なんだか雰囲気があってそれっぽい。
そういえば街の書店もよく見れば、季節感のある飾りを工夫したり、食べ物関係の選書コーナーなら、野菜や果物の模型が置いてあったりする。
お店にお客さんを呼ぶには、「この本屋、楽しい」と思えるような工夫があるといいと思った。
(本を買わなくても、『面白い本屋だ』と印象に残るようなもの……ついでに作品を覚えてもらえたら)
8月は猛暑で頭も働かない。原稿に向かうより夏休みの工作だ。お客さんが自分のぬいに持たせて撮影できるよう、まずは推し活のミニうちわ作りにチャレンジした。
ぬいに持たせられるよう、持ち手の穴に引っ掛けるためのゴム紐を通したり、内輪の裏にマグネットにつく鉄粉シートを貼る。
「ママが人形遊びしてる……」
「おかーさんはまじめにお仕事をしているのです!」
これも立派な広告宣伝活動なのだ。あ、領収書……もらったっけな?









