2.あんなの起業
私は自らを広告塔として『Silke』という名前で基礎化粧品を売ることにした。高級感のあるタイプもお手軽タイプも同じ名称。ただ、ボトルに変化をつけた。中身もそりゃ高級感がある方がよりいいものだけど。
男性用には『Cream』という名称にした。髪剃りまけとかで結構肌の悩みを抱えている男性が多いこともわかった。
外商用にはさらに高級感のあるボトルで売ることにした。
広告塔は私なので、広告料がかからない。
私がそこらを歩くだけでいいんだけど、どうやら私は痩せるとかなりの美人さんらしく、バーンとおおきなポスターが街中に貼っていたりする。正直に言うと恥ずかしいです。
「あんな?事業は順調みたいだな?」
「お父様が許可してくれたおかげです。各方面、今は口コミだけでなくSNSでも情報が拡散されるので、かなりの収益を上げていますよ?」
「全く、東郷サマサマだな。婚約破棄をしてくれたおかげでうちは大儲けだ!」
「うふふ」
「ははは」
あとは…恋をしたいと思っています。とは流石にお父様に言えませんでした。恥ずかしいじゃない!
腐っても西条グループ。各方面から社交界のパーティーに招待されているようで。私も参加するようにとお父様よりお達しをいただきました。
社交界なんて久しぶり。えーと、婚約を破棄されてから参加していなかったかも。多分社交界では「婚約破棄されて傷心なのよ…」とか噂されてたかもしれないけど、起業して忙しくてそれどころじゃなかったのよね。
久しぶりの社交界でのパーティー、どんな皮肉とか嫌味を言われるだろうかと覚悟をして行ったところ、
「あのポスターの女性ってあんなさん本人だったの?」
「そうですよ?SNSで結構話題になってましたけど、ご存じなかった?」
「え、ええ勿論知ってたわよ。娘が言ってたわね~」
この人…娘さんなんかいたっけ?数年の間に生まれた?SNSを見るような年頃の子?
かなり好奇の目で私を見られた。そうでしょうね。今までの私はデブでしたから。皆様、婚約破棄された‘デブに一言モノ申す!’みたいな気でいたんでしょうね。
「この容姿のおかげか基礎化粧品の売り上げがかなり上がっていますわ。SNSには普通の化粧品を求める声もあったりしますけれど、業務の規模を広げて基礎化粧品の扱いを疎かにしたくないので、今のところは基礎化粧品一筋ですね」
などと、地味だけれども自社の宣伝もできた。
社交のパーティーって怖~い。って私が書いたんだけど。