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スペイン語のラップバトルが好きな奴の、壮大な独り言  作者: Verdadero chino soy yo
「なに聴いてんの?」「ラップバトルです」「へぇ~。Yo Yo!みたいな?笑」「いやconmigo tiene nada que hacerって感じっす」「は?」
1/5

【悲報】日本人僕、日本のラップバトル、よく分からない

 

 お前誰だよ、というのは重々承知で、あたかも古株の物書きであるかのように、本エッセイを書いていきたい。

 いや、エッセイと言える代物でもない。日記だ。いや、日記でもない。チラ裏でもない。トイレしてる時に読むのがちょうど良い。


 じゃあなんでそんなものを書いているのかというと、非常に強烈な孤独を感じているからである。その孤独というのは、好きなものをこれっぽっちも他人(ここでは、明らかに、周囲の日本人)と共有することができないことに対する、切実な寂しさである。


 というのは、私の好きなものは、「ラテンアメリカ(スペイン語圏)のラップバトル」という、純ジャパなら本来迷い込まないような領域にあるのだ。


 ところで、あなたは現在最も成功したフリースタイラーの一人である「Aczino(ググるとアチノと翻訳されているが、正しくはアセシーノ)」を知っているだろうか? 知っているならば、是非とも語り合おう。知らないならば、知らないままでいい。


 スペイン語圏でフリースタイルが好きな人間ならば、このメキシコのラッパーを知らない者はいない。しかしながら、私が言いたいのは、これが日本では、私と同等かそれ以下の知名度しか持っていないということである。すなわち、ゼロ。知名度は皆無だ。


 ――当たり前である。

 教育の程度は人によって多様であるが、少なくとも義務教育によって3年間、(これからは6年間!)英語学習に時間を捧げてきたはずの日本人は、いまだ自己認識の部分からしてモノリンガルであり続けている人が多い(我らジャパニーズは「話せる」のハードルを高く設定しすぎている気がする)。


 そのような状況の中で、スペイン語を学び、それを第二または第三言語として習得している人間は、どれほどいるのだろうか? そして、その中の一体どれほどの人数が、「スペイン語のラップバトル」という世界に辿り着くのか?


 天文学的確率だ、などと誇張しては決して言うまい。だが、少なくとも、日本語を母語とする集団の中で、そして現に日本に住んでいる人の中で、それを趣味にしている人間は、私ただ一人のように思われるのである。


 これがどれほど寂しいことか。


 おっと。周囲の人間に布教すればいい、というのは、浅薄なGPTが既に口にしたAIクオリティアドバイスである。やめていただきたい。ここで書いていることも、布教などと言うつもりはなくて、博物館の展示品についている解説程度に私自身は思っている。


 事はそう単純でない。まず、ラップバトルというコンテンツからして、人を選ぶ。

 舞台の上では下品な言葉を用いたディスリ合いがしばしば起こり(というか、ほとんどそれ)、そうでなければ、素面では言うのが憚られる強烈な自己賛美があなたの耳に入ってくる。


 もちろん、ラップバトルはもっと奥が深い!面白い! だが、実のところ、中身を知らなければ、目につくのはそうした攻撃的かつナルシストな一面だ。


 あ、待って、石を投げないで。

「てめぇラップバトル知らねえだろ」「フリースタイルエアプだろ」と言っているそこの君。君のは日本製かヤンキー製だろう? 私はほとんどそれについて無知なので、もし万が一私の言っていることがナンセンスに感じられるなら、それはたぶん、前提にしている土台がまるきり違うからであるので、冷静になってほしい。日本の対蹠地たる南米諸国、文字通りの意味で、土台が違うわけだ。


 話を戻すと、ラップバトルと聞いた時の反応として、基本的に「うーん」な人が多い印象。


 なんかいかついし。ヤクやってそうだし。おもんないし。


 上記は私が日本のフリースタイルを初めて見たときに(もちろん、スペイン語のフリースタイルも知らなかった頃に)実際に抱いた印象である。ごめんなさい。


 これがもし曲、純粋な音楽作品としてのラップ(すなわち、即興でなくて、時間をかけてしっかりメッセージとか表現方法とか考える系のやつ)であれば、1つの音楽ジャンルとして「自分こういうの好きなんです」と提示することができる。


 しかし、即興ラップバトルというのは、その名にバトルとついているように、勝負の要素を備えた興行である。動画になっているから、同じ場面を何度も再生はできるのだけれど、それはあくまで「再演」/「再視聴」にすぎない。気に入った曲を始めに巻き戻し、作品としてもう一度「鑑賞」するのとは本質的に異なる。


 だから、なおさらに他人におすすめするのはためらわれるのである。1つの音楽ジャンルを勧めるのは、他人の本棚に「これもどうですか。オランダのハードコアテクノっていうんですけど」などと言って一冊の本を入れるか提案する行為にすぎない。


 これに対して、フリースタイルを勧めるということは、極論を言えば、「プロレスどうですか」とまるきり新しい本棚それ自体を渡そうとする行為である。どうしても、受け入れられる先は限られる。


 ちなみに、スペイン語のラップであっても曲なら聴く、という人は少なからず観測しているが、残念なことに私は曲としてのラップはあまり聴かない。つまり、Bad BunnyとかYoung Mikoとか、あの辺は本当に聴かない(このニ人が例で挙げる名前として適切なのかも分からない)。


 そのため、ごく稀に「中南米のヒップホップ・トラップ好き」という人がいても、全く話に追いつけない。知らない名前が続々と出てきて、「あー、あれね、ハイハイ」と何となく相槌を口にするだけである。


 もちろん、プロデュースされた曲が嫌いという訳ではない。そこに込められたメッセージの力だけでなく、その豊かな音楽性によっても感情を刺激してくるのは、曲ならではの体験だ。


 だが、それでも、一番に私を惹きつけるのは、マイク一本でぶつかり合うMCたちの熱き戦いなのである。


 ……適当に書いていたらイイ感じに締めの一文が出力されたが、まるで話は終わっていない。


 しかし、書いている側としても冗長な文章に嫌気がさしてきたので、本エピソードはこれで終了とする。


 ¡Luego, pibe!

この前のFMS InternacionalとかSangre x Sangre観た方、感想欄で存在を知らせてください笑

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