第六話:呼び出し
今回は文字数たっぷり!頑張りました♪ 一軍女子の圧力、恐るべし...。
授業後の休み時間。
「ねえ、篠原さん。実はちょっと話したいことがあって」
と私の席に来たのは一軍女子のリーダー、西城朋佳とその取り巻きである、吉川瑠海・佐藤真子の三人。
ああ、これ絶対呼び出しだ。まずいな。
できるだけ穏やかな顔を装っているみたいだけど、私に向けられている殺意は残念ながら、隠しきれていない。そんなに怒ることか?
こうして無事人気のない階段に連れて行かれた私は拷問か?というほど質問と説教をたっぷり浴びせられた。
「あのさ、あんたみたいな陰キャが壮真と話してるとむかつくの」
と西城。
「ほんと、調子乗らない方がいいよ〜?」
「朋佳は掛谷くんのこと好きなんだから」
と取り巻き二人。
「別に私そういう気持ちはないけど」
と平然と答えると、怯えていないことが気に入らないのか、
「そういう問題じゃなくて、私達からそういう風に見えるならダメなの」
今度は少しキレ気味で。
「瑠美思うんだけどさー、お前みたいなやつが掛谷くんと話すと、掛谷くんが汚れるでしょ?」
「それな〜 真子も思った。大体陰キャの分際で掛谷くんと関わらないでくれる?」
なにこいつら。私だって、できることなら関わりたくないし。
「仕方ないでしょ。実行委員になっちゃったんだから」
「だとしてももうちょっと態度わきまえなよ」
「陰キャのくせに距離近すぎ」
さっきからなんなの、『陰キャが壮真と話してるとむかつく』『陰キャの分際で』『陰キャのくせに』
最初の方は我慢していたけれど、さすがにそろそろキレそう。
「そもそも、私達に口答えするとか生意気」
あ、もう無理かも――。
「また、そういうことしてるの?」
そこには、呆れた顔をした掛谷くんがいた。
私は言いかけた言葉を飲み込み、彼の方を見た。
これまで色んな本を読んできた私は、こういうピンチのときに助けに来る系って本当にあるんだ、と驚いた。だが、残念ながら一目惚れとか運命の出会いみたいな王道展開にはならない。私の気持ちもそうだけど、そもそも別世界を生きる彼が私のことを見ているわけがない。
でも本音を言ってしまえば、少しだけ、期待していたし、嬉しかった。
「...遅いよ」
安心した。いくら冷静に対処できるとはいえ、慣れないことに不安だったし、怖かった。
「ごめん」
事態を飲み込めない女子達は固まって動かない。
ようやく気付いたかと思えば
「違うの、壮真くん。篠原さんが急に...」
と言い訳し始めた。しかし、
「言い訳するとか、ダサいよ」
とあっさりと否定される。
すると、ついに最終手段を出した。
「本当のことなのに...!」
と目を潤ませて彼に近づいた。
が、またもやあっさりと避けられて、ついに西城朋佳が泣いた。
「...あのさ」
たぶん、彼女達は「やっぱり勘違いだった。ごめんね」という言葉を期待しているのか、
「うん...!」
と彼の目を真っ直ぐに見つめた。
正直この先どんな展開になろうと、私にはどうでもよかった。
これでいじめに発展しても、いつも通り一人を貫けばいい。
いじめっ子という生物は標的の反応を楽しんでいるので、無視を続けると飽きてくれる。
だから本当に、このまま彼女達が庇われようと私が守られようとどうでもよかった。
しかし、この流れで来るとどちらに展開が傾くかは分かりきってはいた。
「はっきり言うけど、俺お前みたいな女子嫌いなの」
彼の言う『お前』がまさか自分のことだと思わない自己中な彼女達はニコニコと笑っている。
それどころか、私の方を見て「ざまあ見ろ」といわんばかりのどや顔。
「もしかして、自分は違う、とか思ってるの?」
そこでようやく彼のいう「お前」が自分たちであることに彼女達が気付く。
「え、?」
こうなるはずじゃなかった。おかしい、おかしいといった表情。
別に彼女達に特別恨みがあるわけではないけれど、少しスカッとした。
「だから、お前だよ」
明らかに西城朋佳のことを言っているのにも関わらず、藁にも縋るように
「お前って言われてもわからないよ、名前、言ってよ」
と言う彼女の顔はもう苦笑いで心做しか少し声が震えている。
「だから、」
「西城、お前のことだよ」
なんか掛谷くん怒ってる?気のせいか。
「あ、あと」
「他人事みたいな顔してるけど、吉川と佐藤もだよ」
「「は?」」
いやいやなんでそこでキレるの。
「あーあ、やってらんない」
「朋佳、こんな男放っておこうよ」
「え、あ、うん...」
当の彼女はなんだか納得のいかない様子で二人を追いかけてどこかにいった。
疲れたあ...。陽キャの人って常にこんな毎日なのかな。つらそう...私だったらいまの生活の方がいいわ。気を遣う必要もないし、自分の好きなことできるし。
「篠原、変なことに巻き込んでごめんね、大丈夫だった?」
「大丈夫、気にしてない。ほとんど聞き流してたし」
「よかった。またなにかされたら遠慮なく言って」
「わかった」
陽キャとの会話は最低限に抑えたいので、何事もなかったかのように彼を追い越し、教室に戻る。
「あ、ちょっと待って」
「なに?」
「さっきのつづきの話だけど」
「ああ」
「近くの『カフェ和み丸』ってところがあって」
「うん」
「そこに、15:45くらいに集合でいいかな」
「うん」
「ありがとう。じゃあ、またあとで」
今日はまだ色々と忙しそうだな...とこの先のことを考え、ため息をつく私なのであった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
書いていてこちらもスッキリしました、笑
作者自身もこういう女子が大嫌いなのです...。
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