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第二話:あの日のこと

これは、美菜が話しかけてくれた日のこと。

「寂しくないの?」

正直すごく驚いた。明らかに話しかけるなオーラを醸し出していた私に話しかけてくる人がいるとは思っていなかったから。

「うん」

「もったいないよ〜高校生なんだから、青春しなきゃ!」

「...青春」

めんどくさそうなやつ、というのが第一印象だった。

「そう!なんか趣味とかないの?」

「見ての通り、読書だけど」

早く行ってくれないかな...。

「あ、そうだよね〜 私は読書苦手だから凄いと思うな〜」

こいつ、THE陽キャの塊だな。

「...」

「美菜ーこっちこっち〜」

ほら、陽キャが陽キャを呼んでる。

「あ、はーい!今行く〜 じゃあ、またお昼ね〜」

「来なくていいよ」

完全に絡まれたな...。

「冷たいなあ。別にいいじゃんか」

冷たいに決まってんじゃん。早く行ってよ。

「早くー」

「呼んでるよ」

「あ、うん、それじゃ」

眩しい笑顔で私の方を振り返ると、駆け足で教室を出ていった。


はあ、最悪...。あのタイプの陽キャは絶対に心を開くまで絡んでくる。

あの表情、確実に昼も来るだろう。面倒なやつに絡まれた。


キーンコーンカーンコーン

「はい、じゃあ、これで四時限目は終わりです。」

「「ありがとうございました」」

タッタッタッタッタッ

「一緒に食べよ!」

…やっぱり来たか。

「友だちと食べたら?」

私は一人でいいんだ。

「ああ、あの子達はあんまり仲良くないから」

そうなんだ。いやどうでもいい。

「あ、そう。じゃあ他の子と...」

「それに、私は恵美のこと友達だと思ってるし!」

屈折のない笑顔。しかも勝手に恵美呼び。

思わず頬が引きつる。これはいよいよやばいことになってきた。

「勝手にどうぞ」

「やったー!」

そういうと私の隣の空席に座り、いそいそと弁当を出し始めた。

まあいい、極力話さなければ諦めてくれるだろう。

いつも通り、弁当を出してフタを開けると、横から声が。

「すっごく美味しそう!もしかして自分で作ってるの?」

身を乗り出して、興味津々に。

うわー、陽キャだ。大体いきなりすぎる。

「...うん、そうだけど」

「えー!!すごっ!私料理下手だからなあ」

また無視してもよかったけれど、褒められたことが嬉しくて、

「...別にそっちも美味しそうじゃん」

と不本意にも言ってしまった。

やば、今の会話の流れは答えなくても良かったのに!

自分が彼女に心を開きつつあることに危機感を覚えた。

でも同時に名前のわからない感情が私の中を渦巻いている。

「そうかな〜別にまずいわけじゃないけど、やっぱそっちの方が美味しそうじゃん!」

「...ありがと」

この気持ちは、なんだろう。

「ねえ、一個頂戴!」

「...えっ」

まさかそんなことを言われるとは思わなかった。

突然の申し出にさっきまでの思考が遮断される。

「ダメかな?」

これ、男子だったら絶対ダメなヤツ。陰キャでも辛いけど。

だってこんな、断れないじゃんか...。

「ほら、学校の規則とか、さ...」

「大丈夫だよ!バレないバレない」

いや、声量デカすぎ。クラス中に聞こえてるから。

しかも、みんなこっち見てるし。なんでこうなるの...。

「わかった、あげるから、声量下げて」

「ほんと!?どれにしよっかなあ...」

だから、声がデカいっての。

だが、クラスの視線とは反対に彼女の目線は弁当一直線。

「これがいい!」

彼女が指さしたのは、卵焼き。至ってシンプルだった。

「あのさ、わかったから、声量下げて」

「え?下げたよ?」

まじか、こいつ天然か?

「みんなこっち見てるから」

「え?あ」

ようやく状況に気づいたのか、声に焦りが見えた。

「あはは〜ごめんごめーん」

それでもほんわかしている陽キャ、恐るべし。

箸を使って彼女の弁当に卵焼きを入れた。

「なにほしい?」

「...ん?」

「あ、いや、もらっちゃったから一個とるかなーって」

「いらない、大丈夫」

「いやいやいや申し訳ないから!」

「そう、じゃあ遠慮せず」

彼女の弁当からウインナーを一本とり、こちらに移す。

すると、満足そうに笑って

「いただきまーす!」

と元気に言った。

何から食べるのかな、と見ていると、すぐに卵焼きを掴み、一口で食べた。

「はむはむ...」

「...」

「ん!美味しい‼️」

いちいち騒がしいな。

「すごい!すごいよ‼️ ほんとに手作り!?めっちゃ美味しい!」

一人興奮している彼女を眺めながら、思わず頬が緩んだ。

よかった、ほんとうに。


あの日から、彼女とは頻繁に話すようになった。

一度、なんであんなに消極的だったの?と聞かれたことがあった。

「うーん、怖かったから、かな」

「怖い?トラブルとか?」

「うん、まあ、そんな感じ」

「えー気になる!いつか教えてよねー」

「しょうがないなあ、いつかね」

「やった〜約束ね!」

「...うん」

あの日、私は久々に嬉しさを含んだ返事をしたと思う。

彼女に出会えてよかった。いま、そう思えている。

でも、もしまた同じようなことが起きたら?

彼女に嫌われたら?いまでも、怖い。

それでも、話したい、と思えるような友達、いや、親友を私は()()()のだ。

「ねえ、聞いてる?」

あ、そうだ、いまは登校中なんだ。

「え、あ!ごめん!」

「も〜なに想像してたの?」

「んー色々」

「えーなにそれー」

キーンコーンカーンコーン

「あ、やば、チャイム鳴ってる!」

「走るよ、美菜!」

「「遅刻するー!!」」

あの日と同じ、チャイムが響くこの学校で、私は楽しくやっている。

でも、楽しいだけで済むはずがなかった。事件はきっと、もうすぐやってくる。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

まだまだ初心者ですが、温かい目で見守っていただけると嬉しいです。

よければ、感想お待ちしています。

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