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半神半霊

「ここは…確か不死殺しの剣で…。」

気がつくと私は何も無い空間に立っていた。亜空間…?いえ、この魔力の流れは私の世界のものね。でも懐かしい気がする。

永遠に続く空間に私以外の誰かがいた。

「…この感じ…オベロン様ですか?」

昔私がまだ精霊の森にいた時とてもお世話になったオベロン様。精霊族の長にして私の魔法の師。


・・・・・・・・・・・・・・・・


私は元々人間の親を持っていた。でも生まれてすぐ精霊の森に捨てられた。当時神が世界を支配していた時代精霊は世界樹の元にある森から出ることはなかった。外との接触がないため当然人間なんていう未知の生物に対して彼らはすごく臆病だった。だから私や私を捨てた母と呼ばれるそれの侵入にとても怯えていた。だが母は私を捨て足早に森を去った。残されたのは私1人。魔除けの霊草が近くにあったみたいだけど生まれてすぐの子供1人で生きていける訳もなくただ死を待つだけだった。そんな時私を拾って育ててくれたのが風の精霊シルフィードお母様。

私は5歳までなに不自由なく暮らしていた。もちろん怯えている精霊はいたけど四大精霊をはじめお母様と親しくしている精霊は少しづつ私を受け入れてくれた。私の侵入によってピリピリしていた空気が少しずつ穏やかになり私は精霊たちといつも通りの日常を送っていた。あの時までは…。私はいつも通りお母様の指導の元、村から少し離れた場所で魔法の訓練をしていた。魔法の訓練中突然身体に力が入らなくなり倒れたと思うと魔力が暴走を始めた。後から分かったことだけど本来人間は精霊の森のような魔素の濃い場所に長時間居続けることはできない。理由として精霊の森は人間の領域より魔素の質と量が比べ物にならないほど高いから。本来人間の子供が迷いこめば1時間で肉体は崩れ消滅してしまう。オベロン様はそれを懸念し手を出さなかったが1時間、2時間と経ってもなお私の身体は崩れなかった。そんなオベロン様に痺れを切らしてシルフィードお母様は私を拾ったらしい。

精霊の森の濃い魔素が身体に合わず体内の魔力と外から入ってくる魔素が相剋(そうこく)を始めてしまった。もちろん子供の微量な魔力など有って無いようなものなので体内の魔力は消滅し高濃度の魔素が無尽蔵に体内に入ってきた。1000年以上経った今も苦しかったのを覚えている。

焼き付くような痛みに悶えている私を見るに耐えなかったシルフィードお母様は同化することで私を守ろうとしてくれた。でもそれは確実に救える方法ではなく下手をすれば精霊の森自体が消滅することなる。

「……あの()を殺そう。」

駆けつけた末オベロン様は決断した。

オベロン様の判断は正しい。あれを放っておけば精霊の森は破壊され中央の世界樹にまで被害が及んでしまう。そうなれば世界が終わる。

「そんな…あの子はまだ5年しか生きていないのです!それなのに…」

「シルフィード、人の子1人の命と我ら精霊、ひいては世界の命どちらが重いか分かるだろ。」

「それは……。」

お母様は言葉を詰まらせた。お母様もわかっていたから。私一人のために世界を捨てることは世界の守護を任されている精霊として許されないことだと。

「お母…様。大丈夫…。」

あの時私の声はお母様に聴こえていたのかそれは分からないけど私はあの時できる精一杯の笑顔をお母様に向けた。

ちゃんと笑えていたかな?

オベロン様と複数人の精霊は私を取り囲んだ。拘束された私はオベロン様の綺麗な魔法を見ながら死んだんだと思う。


──── ───── ────


次に目を醒ますと私の手を握りながら泣き崩れているお母様とオベロン様が目に入った。

「……………………」

声を出そうとしても出ない。

一時的に声帯を封印していると言われた。話を聞くと私が死んだ直後私の口から私のものとは思えない音が発せられたらしい。それは男声のような女声のようなあるいはその両方…複数人の叫び声が聞こえたらしい。そしてその直後強力な呪いが解かれたと言っていた。詳しく調べると私はただの人の子ではなく神と人の間の子ということが判明した。

私が精霊の森に順応できていたのはそういうこと…でも呪いは解かれても死んだ事実は変わらないのにどうして…。

私の考えを汲み取ったオベロン様は話し始めた。

「どうして生きているか疑問のようだな。答えはリアナの心臓にある。」

(私の…心臓…。)

「リアナの心臓は呪いの負荷により既に腐敗していた。人に詳しくない私たちでもそれが無いと生きていけないことは分かる。だが今この森で人の心臓は無い。本来なら蘇生は不可能だ。だがそれは君が純粋な人である場合。神の血が入っているのなら方法はある。地水火風(ちすいかふう)、四大精霊を始め一部の精霊は君の蘇生に力を貸してくれた。精霊の核…。今君が生きているのはそれが心臓の代わりになっているからだ。蘇生には成功したが同時に君は人ではなくなってしまった。半神半霊というのが正しいのかもしれない。すまない…。」

朧気だが沢山の精霊が心配そうに私の様子を伺っていた気がする。

(綺麗…。)

その後半神半霊になった私はお母様やオベロン様の指導のもと、精霊魔法を使えるようになり神との戦争に参加することになる。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


「貴方は本当にオベロンさまですか…?」

私の目の前にはオベロン様がいた。でもそんなはずは無い。だってオベロン様は過去の戦争で私を庇って死んだのだから。精霊は本来伝承が残れば復活出来るがオベロン様は復活することなくこの世から消滅した。そんなことができるのはこの世界で二つと無い魔剣、『不死殺しの剣』だけ。

「そうですか…貴女には精霊王オベロンの姿に見えるのですね。」

オベロン様が発した声は女性の声だった。

「少し待っていてください。」

オベロン様の形をしたそれは光を発し姿を変えていった。ルナやシルフィードお母様の姿に変化したそれはやがて1人の女性に姿を変えた。金髪に紅い瞳…私だ。

「時間がありませんがこれでゆっくり話せますね。初めまして私はヘファ…いえマーリンと申します。」

「マーリン…ですか。」

マーリンは私が神代戦争に参加していた際に名乗っていた名だ。たまたま…いえ、過去の私を知っている?となれば目の前に立っているこれは神。でもそうだとしたら過去に倒した神とは何かが違う。…そうか、神としてこの世に発生してから今まで戦いに興味がなかったんだ。こんな神もいるんだ。私は少し警戒を解く。

「ご理解いただき感謝します。」

「それで私はどうなったのですか?」

マーリンと名乗った女性は私が不死殺しの剣に倒れた後のことを説明した。

「…なるほどね。お母様とルナが精霊の森に戻ったなら心配することはないわ。でも気になることはあるわね。アーサーやガルム含めた騎士団、魔術師団の強襲。私を殺すよう依頼した精霊…。森の中に裏切り者が…いえそれは無いわね。四大精霊がいる以上そんな存在放置するはずない。では森の外で生まれた精霊…。無いとは言い切れないけど存在を確立できるほど魔素が濃い場所と基になる伝承なんてそう簡単に見つかるものじゃない。」

「私が観測できたのは貴女が剣に刺されてからなのでなんとも言えませんがシルフィードの言っていたダンジョンが気になりますね。貴女の言っている洞窟がダンジョンであったなら内部で何かが起きその記憶だけ欠損している可能性があります。」

マーリンの推測に私も概ね同意ね。でもまだ何か見落としてる気がする。

ダンジョン…黒騎士…帝国軍の襲撃…。違うもっと別の…。

「もしかして…」

マーリンはなにか心当たりがあるみたい。

「なにかわかったの?」

「今回の出来事、恐らく●●に逃げ果せた三●の●●が関係しているかもしれません。」

「なんて言ったの?」

マーリンの言葉が認識できなくなっている。音としても唇の動きも何も分からない。

「恐らく私たちに手を出させない為の工作でしょう。そして貴女を真実から遠ざけるための。ですが裏を返せば私の推測は確信したということです。…ここを出て肉体に戻るためのルートが繋がりました。向こうに戻って貴女自身の目で世界を見てください。きっと痕跡が残っています。あの娘と一緒なら答えにたどり着けるはずです。貴女なら…あの娘が心を開いた貴女なら必ず。」

マーリンの言葉と同時に私の身体が引っ張られる。

「まだ話が残って…!」

「最後に一つ。あの娘を救ってくれてありがとう。」



───── ───── ─────


「本当にこれでよかったの?」

「あぁ、これから過酷な状況に身を置くことになるが私達が1400年前に仕込んだあれもあの娘ならきっと使えるはずだ。そしてこの危機的な状況をも乗り越えてくれる。貴女こそ●●●●…今はルナだったか。彼女のことを聞かなくて良かったのか?」

「あの娘が元気にしているのなら私はそれで…。それより結局彼女は一度も顔を出さなかったわね。」

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