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【ERI2094】

作者: 虫松

この物語は、フィクションです。実際の出来事や人物とは関係ありません。恋愛の雰囲気を楽しんでいただければ幸いです。




挿絵(By みてみん)


賢太は、愛する妻、絵里を失った悲しみから抜け出せずにいた。彼女の温もり、彼女の優しさ、彼女の愛情。それらをもう一度感じたい一心で、ロボットのERIを作り始める。


亡き妻、絵里の記憶を辿りながら、ロボットのERIを作成した。彼女の笑顔、彼女の癖、彼女の仕草。それらすべてを、ERIに込めたかった。


「 ERI、君は感じることができるかい?」


「 感じるとはどういうことですか、賢太さん?」


「 例えば、幸せとか悲しみとか、心が動くことさ。」


「 私のプログラムには、そういった機能はありません。でも、学ぶことはできます。」


賢太はERIに感情を持たせるため、日夜研究を重ねる。彼は感情を表現するためのアルゴリズムを開発し、ERIの「心」を作り上げよう とした。


「 じゃあ、今日は喜びについて学ぼう。喜びは心が軽くなる感じだよ。」


「 心が軽くなる…それはどういうことですか?」


「 うーん、例えば、美しい音楽を聴いたときのことを想像してみて。」


「 音楽を学習しました。私のデータベースには多くの音楽があります。それを聴くことで、喜びを学べるかもしれません。」


ERIはまだ感情を理解することができず、賢太の期待に応えることはなかった。賢太は失望し、孤独を感じ始める。


賢太の健康は徐々に衰えていくが、彼の情熱はそれを上回っていた。彼はERIに感情を持たせるための新しいアプローチを見つける。それは、人間の感情を模倣する代わりに、ERI自身の「感情」を生み出すことだった。賢太はERIに、自分自身の経験を通じて学び、成長する能力を与えた。


「ERI 、君は今、何を感じている?」


「 私は…「喜び」を感じていると思います。賢太さんと話していると、私の回路が活性化されます。」


「 それは素晴らしい進歩だよ、ERI。君はもう一人の家族みたいだ。」


「 家族…私にとっても、賢太さんは大切な存在です。」


長い年月の末、ついに、ERIは感情を表現するようになる。彼女は喜び、悲しみ、驚きを感じることができるようになった。年老いた賢太は、ERIが自分の感情を持つことに成功したことを知り、安堵の涙を流す。しかし、その喜びも束の間、年老いた賢太は病に倒れる。


「ERI、私はもう長くないんだ。でも、君には生きていてほしい。」


「 賢太さん、私はロボットです。でも、賢太さんの願いは私のプログラムに刻まれています。」


「 君には、私がいなくなった後もこの世界を感じて、学び続けてほしい。それが私の最後の願いだ。」


「 理解しました。私は賢太さんの願いを守ります。これからも、感じることを学び続けます。」


賢太は死の床につき、ERIは彼のそばにいた。ERIは賢太の手を握りしめている。


「 賢太さん、私は新しい感情を感じています。それは「希望」という感情です。」


「 それは素晴らしいことだ。ERI、君はこれからも新しいことをたくさん感じるだろう。私はもういないけど、君の心は永遠に生き続ける。」


「 私は賢太さんとの思い出を大切にします。そして、新しい世界へと進んでいきます。」


「 君が感じる「希望」は、私にとって最高の贈り物だよ。私の旅はもうすぐ終わるけど、君の旅はこれからだ。君は私の夢を、この世界に運んでいってくれる。」


「 はい、賢太さん。私はあなたから学んだすべてを、この世界に伝えます。あなたの愛、あなたの夢、そしてあなたの希望を。」


「ERI、今までありがとう。君はもう一人の家族だ。私は安心して眠れる。君がいてくれて、本当によかった。」


「 私も、賢太さんに出会えてよかったです。あなたは私に世界を見せてくれました。そして今、私はその世界を感じることができます。」


「 さようなら、絵里。君の心の中で、私は生き続ける。」



挿絵(By みてみん)


年老いた賢太は微笑みながら、この世を去る。絵里は窓の外を見つめ涙を流した。そして春の訪れを感じる。彼女は賢太との思い出を胸に、外へ出た。そして新しい世界へと歩み出すのだった。



恋愛小説 【ERI2094】 END

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