069 対ドラゴン戦でさえノープラン
「1日経った、これから殲滅作業に入る」
天高く日が昇った頃、上空に浮いていた巨大なドラゴンが大きく息を吸い始めた
「始まったねぇ」
「そうだね〜」
「とりあえず刺さりに行ってみようか」
「俺が投げよう」
「いってらー」
「てらー」
「らー」
魔王は神殿に居た、最初にダンジョンと居城がやられると判断して真っ先に逃げてきたのだ
魔王がモーちゃんを台座から引き抜き、ジャイアントスイングからのぶん投げた
「うぉおおおおおおおおおお!」
「魔王うるさい」
「投げたあとで吠えても変わらん」
「すまん」
魔王の気合は女神ちゃんとキョンちゃんの一言でかき消された
上空を飛ぶモーちゃんはドラゴンの鱗の隙間を探すがビッチリ生えていて見つからず、羽の付け根に狙いを定めて刺さってみた
「結構刺さったけど血管に届かない、っていうか血管ないかも」
「マジで!?」
「うぅむ!」
「帰ってこれる?」
「刺さったまま抜けん」
「ドンマーイ」
「ドンマーイ」
「たすけて」
「これから考えまーす」
「待っててー」
前日逃げる気満々でいた神殿メンバーだったが祈る人々によって動けず、逃げ出せなかった
そこへ魔王が来たものだから英雄の帰還だと讃えられてあとに引けなくなったのだ
「どうする?」
「女神ちゃんあそこまで飛ぶ?」
「本気で言ってる?」
「本気と書いてマジと読む」
「真島と書いてマジーと呼ぶみたいなもんか」
どろちゃんの例えで神殿内部は銀世界に変わったかのようだ
「どろちゃんが行けばドラゴン凍るんじゃない?」
「それ良いね、先発隊で行ってきなよ」
「じゃあ投げまーす」
「ええええーーーー、きゃあああああああ」
どろちゃんが上空に飛ばされた
羽の付け根に刺さったモーちゃんを掴んで…掴みきれずに遥か彼方へさようなら
「ミスったな」
「ドンマーイ」
「ドンマーイ」
「じゃあ次はでんちゃんいく?しーちゃん?」
「いやいやワシはそんなそんな」
「私も役には立てないわ」
「女神ちゃんだな」「だな」
「え!?あちき?」
「あちきーーーーー」「あチキン」
そんな話をしている最中にドラゴンの吸気が完了したようだ
『ゴアアアアアアアアアアアアア』
ドラゴンの口から火が…と思ってみんな見ていたが圧縮空気と声の振動が爆発的な威力を持って崖を吹き飛ばし土は捲れ上がり岩さえ砂粒に変えてしまった
「あんなんどうせぃーと?」
「女神ちゃん塵になるね」
「キョンちゃんもじゃない?」
「イーちゃんとプンちゃん消えたし」
「逃げたな!」
天使の抜け殻を残して中身は透明化して消えていた
「背に乗ったらなんとか消されずにすむかな?」
「かもね」
「行くか?」
「モーちゃんにドストライクで頼むよ?」
「任せとけ」
魔王は女神ちゃんにキョンちゃんを持たせて後ろに回り、お尻に頬擦りしてから膝下辺りを掴んで背筋をフル活用して投げっぱなしジャーマンを決めた
「ウオオオオオオオオオオオオオ」
魔王の全力の投げの勢いは凄まじくロケットの如くモーちゃんに向かって飛んでいたが、残念なことに魔王の居城の山と森が消滅したことで攻撃対象が街になったようでゆっくりと振り向こうとしていた
「ゾンビとライオネルは!?」
「何食わぬ顔で荒野を走ってるよ」
「スゲ」
「女神ちゃん、ちょっと私を左斜め前に傾けて」
「うん」
キョンちゃんを斜めに向けると空気抵抗が生まれドラゴンの回転方向に合わせて背に回り込むように空中で動いた
「モーちゃん掴める!?」
「無理そう、でも羽は掴めそう」
「どろちゃんの二の舞いは嫌だから何でも良いから掴んでね」
「頑張るウウウウウウウウ!」
女神ちゃんは手を伸ばしてドラゴンの翼膜を掴むとあっさりと破れて千切れた
「残念なお知らせ」
「このまま逃げるか」
そう思ったとき、キョンちゃんに大きな衝撃を受けて天に向かうベクトルが止まりモーちゃんに向かって落下する力に変わった
「ドンマーイ」
「どろちゃん!」
「ブーメランしてきた!?」
「当たり、逃げられなくて残念だったね」
「チッ」
「ホントだよぉ」
「そんなぁ〜鳥に変化してまで戻ってきたのに」
「何でモーちゃんにダイレクトアタックしなかったのよ」
「立ち塞がったのは誰だよ」
「私だよ!」
「まぁ良いからモーちゃんに掴まりな」
掴まろうとした瞬間、ドラゴンの羽ばたきで角度が変わった
「ヤバい!」
「女神ちゃんいけえええええええ」
「いけえええええええええ」
『ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ』
「し、し、しじゃかぶがああああああ」
「尻が掘られるうううう、ああああああ」
モーちゃんの柄尻に錐揉み回転しながら女神ちゃんの膝がクリティカルヒットした
刀身の半分程度まで刺さっていたモーちゃんが鍔まで刺さり女神ちゃんの膝にも柄が全部刺さり女神ちゃんが膝蹴りしたままくっついたみたいな格好になった
「痛いよおおお」
「痛いよおおお」
「ガンバー」
「力を貸そうぞ!」
「ドサクサに紛れて尻触ってきた変態がやってきた」
「アレは偶然だ!」
変態な魔王が紫のねじれた2本角を生やした濃い藍色に銀色の銭紋様の入った本来の巨躯のバイコーンの姿で宙を駆けてきた
「巨大怪獣大決戦だな」
「魔王あんなにデカかったんだね」
「普通に戦っても勝てるんじゃない?」
「馬対竜って字面だけだと相手にならない感じだよね」
「酷くないか!?」
ドラゴンの視線も巨躯のバイコーンに向けられ圧縮空気のブレスを放たれるも何の影響も受けずに近付いてくるのが不思議だった
「魔王スゲ」
「魔王?どれが?」
「キョンちゃん見えない?上空から魔王来てるよ」
「あれ、虚像でしょ?」
「え?」
「反対見てみな、もう到着してっから」
「うわぁ!」
魔王はバイコーンの姿ですでにそこにいた
「じゃあちょっとどいてくれるかな?」
「膝にモーちゃん刺さってるんだけど」
「え?」
魔王の2本角をバールのようにして差し込んで鍛えられた背筋でモーちゃんの柄を女神ちゃんの膝から抜いた
「イッテぇ〜」
「石像でも痛みはあるんだな」
「しじゃかぶだよ!?痛いに決まってんじゃん」
「もう治ってるけど?」
「あ、ホントだ」
雑なやり取りをしているウチに虚像だと見破られたらしく目線が街に降りて再び大きく息を吸い始めた
「奉剣クラウゼン・モーよ、その力発揮できるか!?」
「無論だ」
「行くぞおおおおおおおお!」
魔王は後ろ足で立ち上がり前足でモーちゃんの柄を何度も何度も叩き込んだが鍔がひっかかり入っていかない
「入っていかない」
「全然ビクともしないんだ」
「女神ちゃん、やれるか?」
「えーわたしー!?」
ドラゴンの羽の付け根から少し上の背部で昼寝していた女神ちゃんが渋々起き上がって鏡面仕上げなドラゴンの背をゆっくり降りようとして滑って滑り台の状態でモーちゃんの柄を足の裏で押した
刀身がドラゴンの背の上へ切り上がり更に足が滑った女神ちゃんがひざ掛け回りの状態で一回転して止まった
「あっぶなー、死ぬとこだったわ」
「だが大分切れたみたいだぞ」
魔王が指差すモーちゃんの刺入部からは赤だけではなく白と銀と金の液体も溢れ出てきていた
「あとは全て吸い上げてやろう、吸引」
刀身の樋を伝って色々な液体が溢れ出て超大型の噴水のように吹き出して滝のように地面に落ちていく
「物足りぬな」
『ゴアア、ア、あ?』
ドラゴンの吸気が終わり開口して圧縮空気のブレスを出そうとしたところに下半身無双のおじいさんが顎を弄って亜脱臼させ開きっぱなしにさせたため力が入らなくなった口からは吐息しかでなくなっていた
「さっき来るとき一緒に連れてきたんだ、顎対策だってダニオゥが」
「なるほど〜」
「人間もドラゴンも一緒だな、わしゃ帰るからの!」
一言言い残しておじいさんは自由落下していった
「じいさんすげえわ」
「やるな〜」
そんなこんなしているウチにモーちゃんの入っていた穴は少しずつ広がってきていた
「モーちゃん、もう少し刺される?」
「イケるな」
「押すよーせーの『ゴン!』」
女神ちゃんの踵で押し込んだ蹴りが致命的になった
深々と刺さったモーちゃんは体内の柔らかい部分を切りまくり血管、心臓に至るまで内臓をギッタンギッタンに切り裂いて口角の端から出てきた
「クッサ」
「一回洗ったほうが良いかもよ」
「頑張ってきたのに酷い言い様だな、まだ出るぞ」
羽に掴まって落ちないようにしている女神ちゃんのところまで匂いが漂ってきていた
モーちゃんは唾液腺の辺りに刀身を刺したまま体液を絞り尽くすように白濁液や赤、茶色の液体を噴出し続けている
「おはーら、ほのおふぇおはふぁにしてんのふぁ」
ドラゴンは顎が外れていて何を言っているのかよくわからない
「はほーはてたえないほてほほほっはは!」
鉤爪の両手を街に向けてハホハホいいながら魔法を唱え始めた
「おい!魔法ぶっ放す気だぞ、早くなんとかできないのか!?」
「今、全力で絞り出してる」
「今のところこの体の大きさならオシッコ1回分?くらいかな」
慌て始めた魔王がモーちゃんを急かすがキョンちゃんの一言で全員が絶望を感じ始めた
「なーに現場でしんみりしてるんだね」
「あばばばばのおばあちゃん!」
「誰がおばあちゃんだって?手伝いにきてやったのにさ」
「いでっ」
おばあちゃんのウィスパーを合図に女神ちゃんがデコピンを食らったような感じがした
「もしかして?」
「あんたの顔を吹っ飛ばそうとしてたスナイパーとスポッター、耳の良い女の子も連れてきたさね」
「すごーい」
「で、どこ狙えばいいんだい?血飛沫の爪楊枝」
「爪楊枝て…まぁ良い、まず狙うは詠唱の中断だ」
「何の詠唱だい?」
エルフの婆さんが女の子に聞いた
「広範囲殲滅の重力か空間系の魔法」
「だとよ」
「であればそろそろ詠唱が終わる筈だ」
「鼻の穴、出来れば鼻の奥をくすぐるような奴を何発かやってみれ」
「了解しました」
スポッター君が指示を出しながらスナイパーが調整しドラゴンの鼻の奥を刺激する
「やあああああえええええおおおおおおお、ファファっファッバッシュうううううん」
ドラゴンのくしゃみでモーちゃんは飛んでいった
「顎が入ったぞおおおおおおお」
くしゃみは逆効果だったらしい
「撤退する、じゃあ頑張んなぁ〜」
「ばバアアアア」
「存在抹消されたくなきゃお姉さんと呼びな!」
「お姉さん」
「宜しい、こちらは撤収する」
大規模魔法は止まったがまたブレスが…
「息が続かない」
ドラゴンが凹んだ
「モーちゃんだ!」
「いい仕事したな」
「で、これからどうすんの?」
ノープランな3人がドラゴンの背に残ってしまった




