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061 Can dolly


「女神様、男神様、皆々様ぁ〜

 悪い食い逃げ犯、というか金足りなかった犯人を探しています

 売上に響くので何卒何卒、捕まえさせて下さい〜お願いします〜」



 しゃがれた声のおっちゃんが手を合わせて高速スリスリして祈り拍手を2回鳴らして軽く頭を下げてガニ股走りで街に帰っていった


 開けた参道が街の壁にぶつかった曲がり角でせっかちなおっちゃんはフードを深く被ったガタイのいい人とすれ違った

 チラ見して数歩進んでからハッと何かが頭で結びついた



「門番さん!居ました!こっちに来て下さい!」



 門番はナンノコッチャ分からんけどと思いながら1人を残して走っておっちゃんの元へ



「アイツが、あの男が食い逃げ犯です」

「食い逃げ?」

「あぁ!もう話しにならねえ!上の人連れてきて!」

「あぁ」



 門番さんが走って上役を呼びにいっている間、おっちゃんは門とフードの男の後ろ姿をやきもきしながら交互に見ていた



「ダニエルさん!アイツが犯人です」

「なに?見つけたのか?」

「はい!すぐ追いかけましょう」



 光の如き速度でダニエルが現れたがせっかちなおっちゃんはダニエルが到着してすぐ自分訴えを発して走り始めフードの男の肩を掴んだ



「捕まえたぞ!食い逃げ野郎!フードを取りやがれ」



 おっちゃんがフードを引っ張って剥がすと金短髪で目は細いがちょっと優しげな顔が現れた



「あっ」

「なんだダニエルさん、知り合いか?」

「というより有名人だな、この人はおっちゃんの所には食べに行かないと思うぞ?」

「なんでそんなことがわかるんでい!?食い逃げした男はコイツだ!」

「いや、あ」



 フードの人の顔が引き攣りギリッと歯をならすと首と頭のスジが浮かび上がった



「アタシが男だって?どこ見てんだい!」

「どこからどう見たって男じゃねえか!」

「かぁ〜人を見る目がないね!触ってみなよ」



 金短髪の人はおっちゃんの手を掴んで股間を触らせた



「けっ、こんなちィ…え、えええええ?」

「分かったか!?私は女なんだよ!」

「女だろうが男だろうが食い逃げは食い逃げだろう?足りない分しっかり払いやがれ!」

「食い逃げなんかしてねえ!アタシはちゃんと自炊しているからね」

「嘘こけー!」

「煮込屋のおっちゃん、本当だ

 とりあえず手を話して落ち着いて話をしよう」



 ダニエルが無理矢理おっちゃんの手を引き剥がし地面に座らせた



「まずはドリーさん、大変申し訳ありませんでした」

「おう、いいよ

 勘違いはよくあることだ、だが詳しい話は聞かせてもらうよ」

「もちろんさ、で煮込屋のおっちゃんよ

 もう一度詳しく食い逃げにあった時の話を聞かせてもらってもいいかな?」

「そしたら先にこのドリー?さんが犯人じゃねえ理由を教えてもらおうか?」

「そうだな、えーっとドリーさんはな…」



 ダニエルの説明ではドリーさんは代官屋敷の衛兵長でこの街に住む全ての兵士の中で個人で最強、小集団戦でも最強、団体戦でも最強クラスの指揮官らしい

 そしてかなりの心配性…慎重派で代官屋敷で作られたもの以外は口にしない、唯一の外食先も実家で母親の手料理のみという徹底ぶりで代官や賓客を護る最後の要というスタンスを崩さないという



「そんな人が魚の内臓の煮込みを食べるわけがなかろう?シガテラ毒にでも当たったら目も当てられんよ」

「かぁ〜女性で男だらけの中、腕っぷしでそこまで出世しても節度を持って仕事に勤め上げている

 そんな御人を食い逃げ犯に間違うなんてなぁ〜なんて悪いことをしちまったんだ俺ぁ

 ドリーさん大変に申し訳有りませんでした、この通りだ、許してくれとは言えねぇ、詫びの気持ちだけでも受け入れて頂ければ打ち首獄門なんでも受けいれやす」



 煮込屋のおっちゃんは五体投地の姿勢で完全降伏を決めた



「おっちゃん、そこまでしなくても大丈夫よ

 むしろこちらが早く見つけないことが悪い、こちらこそ謝らねばならない、申し訳ない」



 ドリーさんも頭を下げた



「そんな!俺があの時ちゃんとお代を告げて受け取らなかったのが悪かったんだ」

「どういうことか詳しく話してくれるかな?」

「はい、あの〜ですね…」



 珍しく人の少ない日に常連客1人と老けたカップル、そのカップルをチラチラ見ているフードを被った2人組の男が来た

 常連客が帰る際はいつも支払いよりチップ代金増しで少し多めに置いていった、それをみてフードの客も金を置いて行ったが色は同じでもそもそも大きさの違う貨幣だったらしい



「それで食い逃げか」

「そうなんです」

「なるほどぉ〜」



 ドリーとおっちゃん会話を聞いていたダニエルが眉間にシワを寄せて苦い顔をした



「ダニオゥ何か知っているのか?」

「すみません、その2人組子供っぽい喋りではなかったですか?」

「あ、そういえばそうだったなぁ」

「煮込屋のおっちゃん、大変ご迷惑をお掛けしました!」



 一瞬消えたかと思うほどの速度でダニエルが土下座を決めた



「どういうことだ?ダニオゥ説明しろ」

「はい!えーっとですね、そのフードの2人組はとある重犯罪人を追わせていた私の子飼いのシーカーでして…決定的な証拠を掴んで情報を伝えに来てくれた日のことだと思います

 もし宜しければ足りない分、私が払わせて頂けないでしょうか?」

「いや、えーっとまぁそれでもいいんだけども」

「2人にはキツくキツーく伝えておきます

 技術は秀でたところがあるのですが何せまだ子供なものでして貨幣価値をしっかり理解していませんもので」

「なんだ、そうだったのかい?それじゃ仕方ねえ、と言いたいところだがせめて謝りに寄越してくれよな?」

「はい!と言いたいところですが…」



 ダニエルは土下座姿勢のまま目線を神殿に向けた



「ねぇ、もしかして、もしかしなくてもイーちゃんとプンちゃんのことよね?」

「我もそう思う」

「私も〜」

「えっ?」「え?」

「謝ってきた方が良いと思うぞ、今すぐ」

「え?モーちゃんが言うなら、うん」「ん〜」



 2人は一度透明化して森の中から出てきてダニエルの後ろで同じく土下座した



「すみませんでしたー」「でしたー」

「余りに美味しそうで」「んまかった」

「手持ちのお金全部置いておけば足りるかと思ったんですけど」「アレ美味しかったわぁ」

「足りなかったようですみませんでした」「モツのドゥル、コリッ、サイコー」



 プンちゃんは頭れていないけど仕方なしだ



「以降気をつけるように!」

「すみませんでした」「ごちそうさまでしたー」

「うむ!急いでいる時は後払いでもヨシ!確りと支払うことが飯を作っている人への感謝の報酬であることを忘れずにな!」

「はい」「あいー」



 おっちゃんは優しかった



「一件落着か、こんな細い優男共と間違われるとはねぇ、まだまだ私も鍛え足りないね」

「十分に強いかと」

「ダニオゥ、私なんてまだまださ

 そろそろ立っておっちゃんを街まで送ってきな、お客さん方が狙ってるぞ」

「狙うとは?」



 モーちゃんは気付いていたらしい

 ダニエルは顔を上げて見回して気付きすぐに立ち上がっておっちゃんを抱えて街へ戻ることにした



「魔物です、ダッシュで帰りますよ」

「だって姉ちゃん1人残していいのかよ!」

「大丈夫、最強なんで」

「大の男が情けねえなぁ〜さっさと帰ろうぜおっかなくてしょうがねえや」

「ではドリーさん、すみません」

「いいよ、行きな」



 ダニエルは土煙を残して消えた、ついでにイーちゃんとプンちゃんも消えた



「消えるの一瞬だな〜、さぁて私も体を動かして帰ろう」



 パーカーとズボンを脱いでピッタリめのノースリーブと短パンになり両頬を叩いて借り揃えた髪を両手で撫でつけ気合いをいれると少し腰を落としてタックルの体勢になった



「I CAN DOLLY!」



 1人の無防備な人間を狩ろうと20匹のゴブリンが集まってきた


 突出してきたゴブリンに半歩程度の動きで肉薄、足を掴んで肩まで持ち上げて担ぎハイアングルからのぉ〜



「パワーボム!」



 地面に背中から叩きつけられたゴブリンは地面もろとも大爆発、骨や石を撒き散らした



「ゴブリン程度の強度じゃこんな威力しか出んか、たまには叩きつけがいのある敵がこんかな〜」



 ゴブリンの叩きつけられたドリーの足の数センチ先には深さ1メートル、直径5メートル程の楕円形のクレーターが出来ており近くに居たゴブリンは挽き肉、数メートル離れていたゴブリンは手足が千切れていたり身体中穴だらけだったりと凄惨な状態だった



「あ〜女神様達が汚れちゃったよ

 清掃業者頼んでいかなきゃね、大変すみませんでした」



 ドリーは軽く頭を下げて服を持って帰っていった



「コッワ」

「あの言い方だと硬い重い相手ほど威力が上がるってことよね?」

「そうだろうな」

「女神ちゃんがやられたら大地が割れるかもね」

「街ごと滅びるわ」

「いとをかし」「おかし!」



 絶対に敵対しないようにしようと心に決めた女神ちゃんだった




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