006 見られてる
「ずっと見られてるね」
「誰に?」
「知らない人」
「見られてることも分からないんだけど?」
「女神ちゃんは幸せだぁ
看破すると『同化』のスキル持ちみたいだよ」
「どこに居るの?」
「顔動かさずにね」
「うん」
女神の白い目がグリグリ動くが白い目が動いていも誰も気付かない
「右前の木の…」
目が右前の木に焦点合わせた
「3本後ろの木の中」
「そんなん分からん!」
女神ちゃんは一気にヤル気を失った
「偵察に飛んでっていい?」「良い?」
「イーちゃん、プンちゃん、ダメよ」
「キョンちゃんケチ!」「テチ!」
「ケチとかじゃないわぁ!殺されかもだよ!?」
「Oh〜」「ババチ!」
さて、どうするかとキョンちゃんは考える
気付いたのが数日前、恐らくもっと前から居たと考えるべきだ
「モーちゃんあそこまで行って切るのも大変だよね」
「うむ、一人で動いたら逃げられるだろうな
屈強な誰かに投げて貰えば良いけど」
「女神ちゃんに投げて貰うっても女神ちゃんが動いたらどっか言っちゃうだろうし、うーん」
悩みどころだ
「自称魔王は?」「魔王は?」
「そんなの近くに居ないでしょ?」
「居るよ」「居るよ〜」
「え?どこに?」
「後ろの木の下ぁ」「木下ぁ」
「呼べたりする?」
「呼べるよ〜」「マオー」
一瞬の突風で木がざわめくと大人の方の魔王が女神を見上げるように奉剣のモーちゃんの横に立っていた
「いつ見ても美しい」
「ポッ」
「『ポッ』じゃねぇわ女神よぃ!今は潜んだ敵の方が問題でしょう!?」
「だって嬉しかったんだもの」
「女神様も女の子だったんですね〜」
「歳は大分逝っちゃったわよ」
「ババ恋じゃぁ〜」
「ババア言うな!まだ万年生きるんだから赤ちゃんみたいなもんよ」
「ウルサイ!」
「「「ごめんなさい」」」
鏡の盾のキョンちゃんも女神も魔王と念話はできず、出来たのはイーちゃんとプンちゃんだけだった
「モーちゃんを掴んで同化してる人に投げるとかしてもらえるかな」
「良いってさー」「サァ!」
「じゃあモーちゃん宜しく〜」
「我は聖属性だから魔王は掴めないんじゃないか?」
言ったそばから掴もうとした静電気のような感じでバチッと手を弾かれた魔王は驚きとショックで顔に青縦線が入ってガビーンな状態になった
「あらま」
「魔王がさ、地面叩くフリして魔法でドーンって出来たりしないのかな?」
「出来るって!」「イェーァ」
魔王は四つ這いで地面を叩くと何箇所かランダムに且つ同時に地面が弾けた
「ぐぁ!」『ポキ』
木に潜んで居た人がドンと落ちてきた
くすんだ緑の服に木の葉っぱを貼り付けた服を着ている細身の男だった
尻から落ちたらしく、尾骨をやった少し高い音がうっすら聞こえてきた
「何者だ!?」
「ひぃ!」
魔王は瞬時に木から落ちた男の眼前に迫った
「何をしていた!?言え!」
「ま、魔王の魔力を感じたと通報があったところで見張っていた
特徴は長身、黒い服、赤い顔、イケメンオヤジ、髪の毛のような2本の角…全部当たってる、魔王!?」
「如何にも、私が魔王である
たまに女神様を愛でに来ているだけだ、そなたも美しいと思うだろう?」
偵察犯は繰り返し頷いた
「私はここでの戦闘は好まぬ、女神様に迷惑を掛けたくないのだ
我と戦いたくば城に来い、歓迎すると雇い主に伝えるが良い
ここで戦うというのであれば女神の怒りを買うかもしれぬ、それだけは避けねばならぬ」
「なな、なぜ?」
「女神様があの剣と盾を持って戦いに参加することを頭の中で考えてみろ、無理だろう?」
「勝てる気がしない」
「分かる人間には分かるものだな、伝えよ」
「はい、はい!」
人間は歩いては休み歩いては休みしながら(間欠性跛行)街に戻っていった
「女神様、私のせいで安らぎの時間を邪魔してしまいまして大変に申し訳御座いません
そろそろ山の上の城に戻ろうかと思います
もし来ていただくことが有りましたら盛大なオモテナシ、いやライフパートナーとしてお傍にお仕えさせていただきたい、なんなら王座にお座り頂いても構いません
いつか貴方と共にこの庭でピクニックでもしたいですね
それではまた会う日まで」
魔王はシュンッと瞬間移動(っぽい速度で移動)していった
「ポッ」
「『ポッ』じゃないわよ、満更でもないリアクションして」
「だって、魔王をお側使えにして女王になっても良いって言ってたよ?下剋上どころかタマタマのお越しじゃない?」
「玉の輿ね」
「神殿ほっぽり出して行ったって良くなくない?」
「我は訪ねたことがあるが魔王城に人は来ない
魔王とその側近数人しかいないし石造りで寒いだけ、天井は高くて広いけど平屋でなんにもなかったな」
モーちゃんは思い出しながら話した
実際に奥に行けば行くほど賢く力のある魔物が増える魔の森を抜けて山を登り魔王城に到達できるツワモノは極少数、モーちゃんの仕えていた騎士団長もその1人だったが魔王に近付くことすら出来ず敗走した苦い思い出である
「じゃパス、ここで良いや」
「ここ『で』なんだね?」
「だってもっと街に近い方がいいもーん」
「それはそうだわ」
「じゃあ移転しよー!」
「怪しまれるって」
「えー!だれか私を抱えてくれる屈強なメンズは居ないかな〜」
「それはもはや人間ではないのでは!?」
「女神だけずっとここに…おいたわしや」
「では私達だけでぇ〜」
見下ろす女神の目が片目だけ釣り上がった
「なんかむかつく、踏み潰すわ」
「女神様が御乱心じゃー」
「嫉妬って醜いわ」
「殿中でござる〜」
「粘土に戻らっしゃい」
「「「いやああああああああ」」」
魔の森の一部を震源地に震度3〜5程の地震が発生、津波の心配はありません