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058 剣は抜けてる


 いつぞや魔王が魔力の回しを変えてから神殿近くにもそこそこ強い魔物が出現するようになり、人が魔物と戦っている場面を見るようになった


 そんな中でモーちゃんがナニカを見つけたようだ



「ん?魔剣の気配だ」

「どれどれ?」

「あの猪オークと戦っている鎧の男から感じる」



 女神ちゃんが周囲に気を配るが女神たるもの決して目を動かしてはイケない



「アレだ!あの森迷彩柄の革鎧を着たソロ冒険者のサーペンティンソード、奴が魔剣のそれも念話ができるタイプだ」

「サーペンティンソードってどれ?」

「あのヘビがウネウネしたような形の剣さ」

「あ〜、アレ、変な形だと思ってたけど魔剣だったんだね」

「さすがキョンちゃん、よく見てるね」

「持ち主を看破しても毒系のスキルは持ってないのに毒っぽいのでゴブリンが殺られるから変だなって思ってたんだぁ

 あ!古代の蛇行剣ってなってる、インテリジェントソード、死毒付与だってさ」

「ほぉ珍しい付与がされているな」



 森迷彩柄の剣士はゴブリンだろうが狼だろうが上半身だけの小泥人形だろうが刃を少し当てただけで倒して回っていた



「キャー!土兄弟がやられたわ!」

「流石に堪えるのぉ」

「まぁ、俺だったかもしれない土が混ざってるかもだけど兄弟とは言えないかな」

「じゃ子供」

「眷属ですらないね」

「ダメだ、コイツつまらない奴に成り下がったらしい」

「そうね」



 真面目に生きることにしたでんちゃんがディスられているが今のところ動じていない



「泥人形を一撃ってどういうこと?」

「女神ちゃん、儂らは土と水の泥でしかない

 撥水性の高い油が入ったり水分が取られるようなものが混ざれば終わりさ」

「なるほど〜」



 魔剣持ちの男は次々と魔物を屠り、ついには神殿の真横まで来た



「いよー!台座に刺さった大剣さんよー!

 オレっちはよ、お前みたいにそんなとこ刺さってねえでドンドン狩りまくってるからよ、ママのアレでもしゃぶって見てな?いやぁ?鍛冶師はオッサンだったか?じゃあパパの汚ねえのだな?ひゃーっハッハッハ

 …おい!ちょっとご主人待てぇい!マジでマジで待ってってってぇ」



 迷彩柄の革鎧のお兄さんには魔剣の声が届かないらしい、歩く速度を落とすことも止まることもなく森の奥へ行ってしまった



「アレではいくら魔剣としての価値が高くともダメだな」

「だねぇ、念話が出来るのに意思疎通出来ないんじゃねぇ」

「アレはご主人聞こえてる筈だ、無視してるのさ」

「そうなの?」

「かなりイライラしているように見えたな

 真剣に戦っている時にあんなチャチャ入れられたらどう思う?折りたくなるだろう?」

「私なら投げるわ」

「私は鋳潰すかな」

「キョンちゃんも女神ちゃんも辛辣だな」

「仕方ないわよ」



 それから数日経ったが迷彩柄の剣士を見ることは無かった



「あの魔剣の剣士来ないね」

「大分奥まで行ったみたいだ、ライオネルが魔王城のある山の麓で見かけたようだぞ」

「ほぉ〜そんなところまで」

「魔剣があれば罠と奇襲に気を配れば平地は問題ないだろう、ダンジョンと山登りは無理だろうがな」

「山登りは無理だ、糸になって登っていってもダツツキのソニックブームは避けられないから」

「でんちゃん、そんなのが居るの?」

「そう、それは空から突然来るんだ、崖に突き刺さって死ぬのも厭わずね

 音が聞こえた時には崖が爆発してるのさ、思い出すだけでゾッとする」

「へ〜」



 でんちゃんの冒険譚に女神ちゃんは興味を示さない、よく分かっていないからということと魔王に対しての興味が薄いということも原因だったりする



「あの魔剣がダンジョンで通用するかな?魔王にもだがな」




 更に数日後、モーちゃんの心配は的中した




「こんばんは〜」

「魔王か、久しいな」

「グラウゼン・モー、相変わらずの良い光を放つな」

「いつかお前を斬るために研いでいるのさ」

「やれるものならやってみよ…と言いたいところだが今日はちょっと諸用でな」

「我にか?」

「ああ」



 魔王は黒いマントの下から一本の剣を取り出して見せた



「この魔剣なんだがな」

「あっ、それこの前の魔剣」

「女神様もご存知で?キャンキャンうるさい魔剣でね、どうしたものかと思案してここに来たんです」

「どうやって手に入れたの?」

「ダンジョンに入った探索者をダンジョンに住むヴァンパイアが噛んで眷属にしたんだ、そしたらその新入りがコレが面倒くさいからと献上してくれたのだ

 珍しい見た目の剣だったものでね、喜んで貰って見たのは良いが煩くてかなわん」

「じゃ、鋳潰せば?」

「溶けんのだ」



 相当色々試してみたらしく魔王は少し項垂れた



「では折るしかなかろう、我に任せよ」

「流石は奉剣、やってくれるか?」

「ああ、今もそいつから『やめろ』『ダメだ』『お願いします』と煩く声が響くのだ、さっさと折って終わりにしよう、地面に置いてくれ」

「分かった、お願いしよう」



 魔王は魔法で石の台を作り魔剣を置いた



「ではやろうか」



 モーちゃんはスルッと台座から抜けて魔剣の横っ面に突きを食らわせた、その瞬間に魔剣は消えてなくなってしまった



「魔王よ、弾け飛んでしまった」

「それはまたそれでいい、手間を掛けた」

「いや、いいんだ」



 魔王は女神ちゃんにを上目遣いでチラ見して赤らんでから名残惜しそうに消えていなくなった



「モーちゃん、魔剣どうなったの?」

「女神ちゃん、本当のことをいうとあれは我が創り出した眷属だったらしい、全く気づかず吸収してしまったよ」

「へぇ〜眷属召喚のアレね、取り込んで強くなるもんなの?」

「経験が手に入るくらいだ」

「十分だね」

「そうとも言える」



 モーちゃんはあんな眷属作ったことあったかな〜?と剣の記憶を辿るが思い出せず無い首を傾けた




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