057 キャンマン、チョスナー
「モーちゃんはここ最近魂吸ってなくない?ソウルイーターとしての力を発揮してないよね?」
「女神ちゃん、よく気づいたな
剣術のみを極めんとする時に魂を吸うなど邪魔でしかないのだよ」
自分で自分を否定しているぞ?というツッコミをキョンちゃんがグッと堪えた
「しかし吸わないと動けなくなるのも確かであって、夜にチョスナーが来た時に狼とゴブリンの魂の半分は吸い取っている
魔王に初めて切りかかった時に吸えなかったあの記憶が離れなくてね、敢えて吸わないという選択肢を作ったのだ」
「へぇ〜、で吸う時吸わない時で違うの?」
女神ちゃんにしては突っ込んで聞いたね?とキョンちゃんは感心した
「明確に違った
魂を吸う時は相手の体が柔らかいというか切りながら勝手に裂けていく感じだったが、魂を吸わないときは締まっていて刃の側面に貼り付く摩擦感を感じたのだ
その摩擦感を極限に減らすようにしていくと矢筈切りになり切り戻しに至ったのだ」
「じゃあ魂を吸う時は矢筈切りにならないの?」
「そうだな、即死だ」
「そっちの方が良いんじゃない?」
「命を奪う、刃を保護するという点ではそうだな
だが剣で切るという技術は身に付きにくい」
「なるほど〜楽できないってことね」
「そうだ!基本からしっかり叩き直した感じだった」
「自ら面倒な方に進むって中々の勇気と根気よね、私は無理だわ」
「だから分身も分裂も眷属召喚も出来ないのかもしれないな」
「あちゃー、そーかもねー」
モーちゃんは痛いところをザクッと刺すよね〜、ゴブリンの血が吹き出すパターンみたいだわとキョンちゃんはニヤッとした
「おっと、チョスナーだ
もうそんな時間か…今日も穴を穿つ練習だな」
チョスナーはあくびをしながら神殿に来てキョンちゃんの裏に断熱シートを敷いて毛皮を被って丸くなった
「もう寝たか、相変わらず早いな
まぁその無防備さのお陰で修練の回数に困らないから有り難い限りだがね」
「チョスナー頑張りすぎて昇進したらこれなくなっちゃうね」
「それは困るが仕方なくもあるか…さっそく来たな」
ハッハッハッと息を漏らしながら森狼が5匹やってきた
「チョスナーはいい餌に見えるんだね」
「恐らく臭いも美味そうなのだろう」
「筋肉は少なく、程よく脂肪がついてて軟らかそうだし朝までグッスリ無防備って素敵だね」
「そうだな」
狼が迫りチョスナーまで残り3メートルというところでモーちゃんは台座から音を立てずに抜けて狼に襲いかかった
ほんの少しの風切音も出さないほどゆっくりとした動きで狼達は表面を撫でられて倒れた
「女神ちゃん、これがソウルイーターとしての能力だよ」
「うわぁ、いつ見てもえげつないね」
「まぁそうだな…次が来たぞ」
今度はゴブリンが3匹だ
狼の肉を食べたいがためか手に持っていた棒切を投げて走って来るのが見えた
狼とゴブリンの距離5メートル程でモーちゃんは勢いよく飛び出し風ごとゴブリンの首の太い血管だけを切り地面を薄く汚した
「これが剣としての討伐だな」
「なるほど、しっかりと切る必要があるんだね」
「そうなんだ、キレというか精密さが要求されるのだ」
「なるほど〜」
「また来た…がちょっと多いな、問題はないが」
ゴブリンの血の臭いからか森狼の進化個体のようなライカンスロープ(狼人)が20匹、良い刃こぼれ少ない剣や上等な弓矢等の武器を持って森から出てきた
「少し早めにやろうか」
「チョスナーが来ると神聖な力の魔物避けって本当に効いてるのか不思議に感じるよね」
「チョスナーのエサ感が勝っているだけだろう」
「あぁ〜それに勝てる気はしないわ」
「では行ってくる」
ライカンスロープの群れにモーちゃんは音速を超えた速度で空気の壁を貫いて突撃した
一番手前に並んでいた5匹はソニックブームで木っ端微塵に吹き飛び、その後ろの5匹には直前で縦スライダーのような急落を見せ地面に刺さった時の土や石の礫を撒き散らして亡きものとした
中後衛を努めていたライカンスロープ達は散り一斉にモーちゃんを攻撃し始める
しかし曲芸師のように剣の峰を使って矢の軌道を変えたり、切り落とした矢を剣の柄で叩き離れたライカンスロープを当てたり槍などは突き出された勢いを方向を変えるだけで同士討ちさせる等して殲滅して見せた
「チョスナーが危ない!」
女神ちゃんの眼前に黒い羽の生えた大きいトカゲが舞い降りてきた、ワイバーンだ
「女神ちゃん!」
柄の方から女神ちゃんに向かって鉄砲玉のように飛ぶと女神ちゃんはタイミングよく柄を握って降りてきたワイバーンを切り上げて斜めに両断した
「モーちゃん、おっとっ刀だったね」
「おっとっと~じゃなくておっとり刀だな」
「おっとりまったりじゃなかったよ?」
「押っ取り刀ってな、腰に差す剣を手に持って行くほどに凄く急いでいることを言うんだよ、簡単に言えば緊急出動!って意味だ」
「へぇ〜物知り〜」
「女神ちゃんが知らなすぎなのでは?」
「ふーん」
ワイバーンの襲撃以降は翌朝まで魔物は来なかった
「ん?あれ、こんな外套持ってたっけかな」
チョスナーは体に掛けられるように落ちていたワイバーンの翼膜を持ち上げてシゲシゲと見てようやく気付いたらしい
「うわぁ!ワイバーンの翼膜!それも黒!
いやぁ〜やっちまったな〜」
チョスナーは飛び起きて一刀のもとに断ち切られたワイバーンを見て頭を抱え女神ちゃんを見て顔を青ざめさせた
「女神様、すみません、またもやらかしてしまったようです
血飛沫を女神様にかけてしまいましたことお詫びします、あとでキレイにしてもらいましょうね」
女神ちゃんはドッサリビッチャリ返り血を浴びていた
「それにしてもワイバーンかぁ〜重たいな〜
これじゃぁ夢遊病を超えて夢闘病だよ、起きてるときより絶対に強い、第2人格になるのかな
給料が上がるのはいいけど、管理職には向かないんだよ、できる気がしない
あぁ〜才能が恨めしいな〜」
そうつぶやきながらチョスナーはワイバーンを縄で巻いて掛けものにしていた毛皮に乗せて引き摺りながら帰っていった
「チョスナーは大丈夫!
管理職になったとしても降格するから」
「女神ちゃん酷い!」
「あら、そう?」
「まぁ我もそう思うがな」
「でしょー!」
2時間後清掃業者さんがブラシで女神ちゃんと神殿を磨いてキレイにしてくれた
「さすがチョスナー」
「あれだけ気が回せるのに独身とはな」
「ほんとね〜」
実のところ、チョスナーの私生活はどうなのか、誰も興味はないようだ




