053 授業参観
「さぁて若者達、今日は外で演習だ
探知系と攻撃系、補助系を入れて5人1組を作りな、治療系は攻撃系が少ないところに入るようにしなよ」
エルフのお婆ちゃんが12・3歳くらいの学生を20人程連れてやってきた
「物理がイケるタンク、アタッカーも散らばりな!ちゃんと4組できたら1組ずつ女神像前で魔物と戦うよ
もし危ない時はあたしが奉剣を操って助けるけども、全力で対処しな
探知系の学生はナイフを貸し出すから手に持っても良いし腰にさしても良いから持っていくこと、あたしが探知するためのだからね」
「「「はい!」」」
「じゃあ最初は左の5人組前に来て、斥候はナイフだよ」
今回の授業はエルフのお婆ちゃんがキョンちゃんに『看破』を使わせモーちゃんの知識を借りて成長させる方向性、可能性を増やすために仕組まれたものだった
生徒に持たせたナイフはモーちゃんの眷属、神殿の前で戦わせるのは『看破』をさせやすく且つモーちゃんの護衛力を使うために企画されている(恐喝されたと神殿メンバーは思っている)
斥候として出た男の子はハーフリング(ホビットとも言われる)で小学校高学年くらいな見た目で成人とされる長命種の子供、風の魔法を巧みに使い音を遮断して普通に森に歩いて入っていく
数分後、かなりの速度で走って戻ってくると森狼3匹を引き連れてきた
「ええぞ!迎撃せぇ!」
デバッファー付きのパーティだったようで森狼は視界を遮られたような動きを見せ透明な蜘蛛の巣に掛かったように空中に縫い付けられてあっさりと仕留められてしまった
「次の班、斥候はナイフ渡せやぃ」
今度の斥候は長身のダークエルフ、ナイフを受け取ると影薄れて目でとらえるのは難しいくらいに気配が薄まって森に消えていく
十数分後、猪頭のオークと牛頭のミノタウロス、ゲギャゲギャ煩い口の裂けた10匹のゴブリンを引っ張ってきた
今度は物理攻撃の出来るのが1人、治療師もいる班だ
「イイねえ、どんな声で泣くか楽しみね、ンフフ」
ムチムチの小さい女の子、ポパ◯みたいに腕がぶっとく手には鱗付きのムチ持っていて顔は殺し屋のようにキリッとした目を魔物に向けている
距離にして20メートル、ムチを軽く振ると先端は目で追えない速度に達している
こちらバッファーがいてムチを自然と同化するように迷彩柄を付与したようでムチ自体が見えなくなった
「ボオオオオオオオオオオ」
断末魔の叫びをあげたミノタウロスの首が半分吹っ飛んでいて血を吹き出して倒れた
「ギィアアアアアア」
次はゴブリンだが明らかにミノタウロスより顔が柔らかく一匹の右から横っ面を引っ叩かれるようにムチの先端が当たると顔の下半分が崩壊、歯と下顎の骨が飛び散り左側を走るゴブリンに突き刺さる2次被害を出しかなりのモチベーション下げに繋がった
「ブゴオオオオオオ!」
足の止まったゴブリンにオークが吠えるがゴブリンは前後を見比べて9匹が左右散り散りに走り出した、しかしムチの速度はそれを逃さない
頭や首だけでなく足首や膝、腹、尻、背中など容赦なくめった打ち、ヒットした部分は挽き肉になり飛び散り息絶えていった
「あんた、もう死んでるよ?」
「ブギョオオオオオ」
オークは何の話だ?と言わんばかりにゴブリンの遺体を踏みつけて迫った
「ギュオオォォォ…」
オークは胸を抑え白目を剥いて痙攣して倒れた
「一雫の毒」
厨二病全開のローブのお兄ちゃんが顔を手でそれっぽく隠してニヒルな笑顔を見せた
「はい!斥候交代して行ってきな!」
残り2組も十分に強く流石は婆さんの弟子達だとキョンちゃんは思ったがモーちゃんはそうでも無いらしい
「魔法の重要性、使い方、パーティ単位での戦いかたの基本がなっていない」
「どういうこと?」
「女神ちゃんに分かるように説明してあげて」
「うむ、まず今回討ち漏らしがなく後衛に攻撃が及ばなかったことを及第点としたうえで説明をする」
「うん」
「まずは斥候、事前に方向と敵の数、迎撃位置の確認が不足している
来たものに対して対抗するという姿勢は対等な立場での練習試合と変わらない」
「それは何でダメ?」
「相手の方が強かったら終わりなのだよ
斥候を放ち誘き寄せて撃破するのであれば事前に罠を張る、全部仕留めるなら逃さないような工夫が必要、後衛者に攻撃が届かないように壁を作るなり中衛ガードを置くなりして生き残る手段を残す、最悪逃げる選択を迫られた時に退路の確保をしておくことが基本だ
その基本に視認できない魔法で補助を入れておけてようやくスタートラインだ
今回は罠を攻撃的に張ったことは評価したとしてもそれ以外は0点と言って良いだろう」
「ほぇぇ〜」
「女神ちゃんのアッパラパー加減が出たね」
「えー!」
「やっぱりここに来て正解だったね、キーヒッヒッヒ」
グループ念話を聞いていたエルフのお婆さんが女神ちゃん達を見てエロ目の笑顔を見せた、キョンちゃんを筆頭に全員が背中の泡立つ感じを覚えたのは言うまでも無い
エルフのお婆さんはモーちゃんの意見をさも自分が考えたかの如く子供たちに伝えた
「分かりやすい説明だ」
「ただの魔法マニアのお婆ちゃんかと思ってた」
「ボケてなかったんだ」
「Oh〜愛しい愛しいマイハニーGREAT!」
かなり失礼な反応もあればひとり婆専が混じっていたことに女神ちゃんはドン引きしたが肝心のご本尊…ゲフンゲフン…ご本人はちょっと頬を赤らめて満更でも無いらしい
「誰が良かったかね?5人絞ってパーティを組ませて最後の演習にしようと思うんだけどね?」
「斥候はダークエルフの子、前衛は大盾の女の子と槍で攻撃用の魔法を使える男、クモ糸の罠師、回復役を1人でどうだろうか?」
「イイねぇ、イイねぇ、ゾクゾクするよ」
神殿の皆も背中がゾクゾクしている
「じゃあもう一回やるよ、5人代表を呼ぶから反省を踏まえてちょっと作戦を練りな、全員で練って狼ゴブリン混成軍20匹程度を瞬殺する陣を考えな!」
名前が呼ばれて焦る面々、クモ糸の罠師以外はどちらかと言うとパッとしなかった方からモーちゃんが選んでいた
「作戦は決まったね?じゃ頑張って掻き集めてきな!」
ダークエルフの斥候が出ると待ち受ける陣を構築し始める
基本はクモ糸を使うらしい、森を出たところから逆ハの字型に段々すぼめていくようにして大盾の女の子を囮兼ストッパーに据えるようだ
女の子からちょっと離れて後ろに回復役を置き被弾をした場合に備える槍の男の子は数を減らすように大盾の女の子の横に布陣、罠師は地面にも色々仕掛けておくようだ
森の奥から音が聞こえる、足音が小刻みなリズムを奏でているようだ
「ゴブリン12、狼10、オーガ?オーガ!1」
「クモ罠でオーガは止まらねえ」
「大丈夫!私が押さえる」
「頼むぜ」
魔物が森から出てくるとダークエルフの男の子は大盾の女の子の後ろに回り込み魔法の準備を開始した
大盾の女の子の殺到しようとした狼とゴブリンがクモ罠に捕まり数匹だけが大盾に触れられた
「グラスソーン、タングルタングル」
草が伸び針のように固くなってゴブリンと狼を串刺しにした後で一塊になるように弦のように巻き付いて縛り上げ肉壁にした
「ハオアアアアアアア!」
黒っぽい肌の腹筋の張り出したゴリマッチョでハゲた頭に短い角を生やした鬼が僧帽筋に力を込めてタックルをかましてきた
「キャアアアアア」
「うわあああ」
草の蔓を絡めた肉団子に突っ込まれて団子ごと大盾の女の子とダークエルフは吹き飛ばされた
「ハーハッハッハー」
オーガは無駄にダブルバイセップスを決めた
「アソー!」
槍の男の子はいつの間にかオーガの後ろに回り込んでおりお尻の穴から内臓を貫いた
オーガは白目を剥いて顔面から倒れ、もう動かなくなった
「ワス!やったな!」
「オーガやっちまったぜ!」
『ズルッ…ニュ』
ワスと呼ばれた男の子が槍を引き抜くとちょっと緩い系の汚物が付いてきた
「ヴウェ…槍、捨てるか」
「…(必死に頷くダークエルフ)」
「綺麗にしましょう」
今回出番のなかった回復役の娘が鼻を摘んだままオーガの血と汚物のこびりついた槍に触れるか触れないかくらいのところまで手を延ばすと紫がかった青白い光を放つ水が流れ出して槍を洗った
「綺麗になったかな」
「あとは拭いて研いで」
「サンキュ」
3人が3人共鼻を摘んで喋っているので聞き取りにくい
ワスは右手で槍の石突近くを持って槍先を下げて歩いた
「良くやったね、無傷のオーガなんて滅多に手に入らない上物さ!剥製にすれば何処かの金持ちが買ってくれるだろうさ
皆、今日はよくやった!今日の実習で学んだことをレポートに纏めて提出で単位を上げるよ
そうだねぇ、紙1枚くらいで納めるように!でも小さい文字は見えないからそこそこ大きい文字で書くんだよ」
「「「はい!」」」
「えーっ」と言う声も聞こえたがとりあえず「はい」と言うしかない学生の学生たるところだろう
モーちゃんもキョンちゃんも60点と辛口採点だったがそれでも高めに付けたらしい、お婆さんもそうしようかなとテッキトーな返事をしていた
最後は学生全員の前でエルフのお婆さんがキョンちゃん含め神殿全体をアババババババと綺麗にして終了となった
「世話になったね、あんた達がなかなかいい仕事するからさ、また来るさね、キーッヒッヒッヒッヒ」
しばらく御勘弁をと全員が思ったが誰も口には出さなかった
どっと疲れた一日だった…
「あい!今日も皆で演習です」
翌日もお婆さんはやってきて全員が精神的ダメージを蓄積させていた




