051 ババプレッシャー
女神像の前で両膝をつき胸の前に手を組んで祈るサラサラセンター分けの少年とイガグリ坊主の少年がいた
何も言わず、ただひたすらに祈ること数分
「なんか御告げきた?」
「なんにも」
「だよな〜あのエルフの婆ちゃんやっぱりボケてきてるんじゃないかな」
「俺もそう思う」
顔を見合わせながら怪訝な表情で話す2人を見てキョンちゃんが呟いた
「あ〜あのエルフのアババババする婆ちゃんの教え子さんか」
「そうらしい、我もたった今気が付いた」
「面倒事の予感だね」
…
「でも念話使えないっぽいからどうやってコミュニケーションすればいいんだろうか?」
「媒介が必要だな」
「そうなるとダニオゥか魔王だよね」
「そうねえ」
そんなに運良く居ないもので呼び出し
「ダニオゥ呼んでみた」
「なんて言ったの?」
「迷える子羊が暴走しないように見に来てって」
「そういえば前科ありの子供等が居たね、元気にしてるかな」
「そうねぇ〜元気にしてると思いたいね」
数分後、ダニオゥは壁を飛び越え土埃をあげて走ってきた
「迷って武装している子羊とは君達のことかな?」
「何のことですか?」
「武装してませんて!」
「そのようだな、今回は女神様の御告げがあってね、以前に女神像を的に遠当てする事件があってから厳重警戒中なのだよ」
「そうなんですね」
「今、御告げって?」
「あぁ、私ともう一人御告げを聞ける者が居るのだよ
選ばれたのかどうかは分からないけどね」
ダニエルは女神様にニヒルな笑みを浮かべてウィンクをした
「やべぇ、ダニオゥイケてるわ」
「籠絡されるの早いな」
ダニエルにも聞こえていたが無視して話を続けた
「で、何を女神様に何の用だったかな?良かったら教えてくれないか?」
「えーっと、今度魔法学の試験があって良い点取ったり有能者の判定を貰うと良い所に斡旋して貰えるんだけどどう使ったらいいのかの知恵を絞るにも個人じゃ難しくて」
「そこでエルフの婆ちゃん先生に相談したらここに行ってこいって、ね?」
男の子等は顔を見て頷いた
「『看破』の結果発表ーーーーー!
まず1人目はドゥルドゥルドゥルドゥルデン!スキル『自我』、ぅわお!珍しい〜
続いて2人目はドゥルドゥルドゥルドゥルデン!スキル『ドレン』これまた珍しい」
「キョンちゃん、解説宜しく!」
「じゃあ博識な私がMCIの女神ちゃんに教えてあげましょう」
「おなしゃーす」
「スキル『自我』はどんなことがあろうとも自意識を維持できるスキルです、精神的な干渉を受けないというべきかな」
「呪いとか災いの武具を使いたい放題できるのだよ」
「なるほど、モーちゃんも博識さん側だね
ネークストゥ!」
「スキル『ドレン』は水抜きとか排水って意味だけどスキル使用的には何でも抜き出せちゃうんだわ、毒でも寄生虫でもウンコでもね」
「へ〜治し放題じゃない、病原体も全部出せちゃうね」
「そういう使い方も可能だが魂を抜き取る即死のスキルとしても使えるし洞窟の中の空気を抜き出すなんて使い方も出来てしまうのが凄いところだな」
「モーちゃん解説ナイスだねぇ〜」
ダニエルが女神ちゃんの目を見て微笑んだ
「君のスキルは『自我』だそうだね
自分の意思や精神に干渉をする呪いや災いの掛かった武具を使うと良い、例えば露店で投売りしている狂戦士の腕輪なんかがそうだね
火事場の馬鹿力をいつでも使えるようになるよ」
「え!マジで!それ凄くね?」
「あぁ!凄いさ、アイテムを選べばもっと色々出てくると思うよ」
「ありがとうございます!早速今日から探してみます」
「うむ!そうしなさい」
ダニエルはガシガシと男の子のサラサラヘアの撫で回した
「君は『ドレン』だそうだね」
「それも御告げ?」
「そうだ、こちらの女神様達からの御告げさ
ドレンは水を抜くだけの単純なスキルだと思ってないかい?」
「実際それくらいしかできませんから」
「何かから何かを抜き出すスキルだそうだよ」
「袋から中身をってこと?」
「そうだね、体調が悪い人から病気の元や毒素なんかを抜き出したり便秘の人のウンコを抜き出すこともできるんじゃないか?
攻撃として使って欲しくは無いが血を抜き出したりして拷問もできるし魂を抜けば即死だしな」
「うぇ、最後のはあんまりやりたくないかな」
「そうか?使いようだと思うがね」
「うーん、色々やってみようかな」
「そうだね、家族や親類、友達で調子の悪い人を探して試せば良いんじゃないかな」
「それならできるかも!やってみます」
「あぁ!ガンバれよ!未来は自分で決めるものだ」
「おぉ〜最後にプレッシャーきた〜」
ダニエルは頭をワシワシ撫で回そうとしたがイガグリ坊主の頭は滑らず繰り返し頭皮にシワが寄っただけだった
手にはしっとり汗と皮脂が付いたが一旦気付かなかったことにして後で洗おうと心に決めた
「これで良かったかな」
「はい!ありがとうございました」
「ありがとうございました」
未来の担い手は街に走って帰っていった
「これで良かったかな?」
「バッチリです」
「ダニオゥは話上手だね」
「お褒めに預かり光栄です
代わりと言ってはなんですがイーちゃんとプンちゃんをもう暫くお貸しいただきたく」
あぁ〜そういえば帰ってきてないな〜とキョンちゃんも女神ちゃんもぼんやり思っていた、モーちゃんは気付いていたし神殿内で屈指の魔法の使い手(屈すほど人数も居ないが…)なのであまり心配はしていなかった
「良いんじゃないかな、楽しくやってるうちは色々してくれると思うよ」
「串焼きにスイーツ等で支払わせて頂いています」
「良いね!楽しんできてねと伝えて下さい」
「ありがとうございます、ではまた何かあれば」
ダニエルはバッっと振り向きシャツの襟を正し逆三角形の背中を見せつけるようにして帰っていった
「ダニオゥかっこいいよね」
「うーん、人間のかっこいいはまだ良くわかんないかな〜」
「キョンちゃんてあんまりその辺に興味ないよね」
「そうねえ、『看破』スキルが生えてからそうかも」
「ということはほぼほぼ生まれながらにってところね」
「そうともユー」
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いつぞやの試験会場に2人がやってきた
「何か御告げは聞けたかい?」
「はい!」
「はい、主にダニエルさんからですけど」
「ヒッヒッヒ、そうかいそうかい、じゃあ先にジェントから披露してもらおうかね」
「はい!」
サラサラヘアのジェントが前に出た
生真面目そうな顔からは想像できないほどジャラジャラとアクセサリを付けてきていた
「何か力を試す物が欲しいです」
「あいよ、石の柱でいいかい?」
「はい!」
エルフのお婆さんが掌を地面にかざすとニョキニョキと石柱が生えてきた
「ありがとうございます、いきます!」
左を前に構えていたジェントが一瞬ブレた
『ビキィ』と石の割れる音とともに拳を突き立てるジェントが現れた
「見事だねえ、アクセサリの効果かい?」
「はい」
「全部で指輪に腕輪、アンクレットにネックレス、ピアスも開けたのかい
全部で20個ね、よく集めたものだよ」
「二束三文どころかオマケで貰ったものもあります」
「良いね、良いね〜、活用さえ出来るなら何でも良いのさ、良くやったよ
どこに勤めたいとか何をしたいとか希望はあるかい?」
ジェントは首を捻って考えた
「うーん、色んなアクセサリとか武具に出会えるところって何処でしょうか」
「そうさねぇ、ダンジョン巡りするかどっかの騎士団に入ってクズを漁るかってところだろうね」
「じゃあダンジョンに行ってみます」
「あいよ、じゃあ飛び級卒業でOKだ」
「いぃよっし!」
ジェントはガッツポーズを決めさっさと試験会場からいなくなってしまった
「じゃあ次、アルチン」
「はい」
イガグリ坊主のアルチンが前に出てきた
「では始めます」
アルチンは地面に手を置いて数秒後、手を振り上げるときれいな水がコップ一杯分ほどの量だけパシャッと飛沫が上がり地面を濡らした
「次はこれ借ります」
アルチンはヒビの入った石柱に右手を触れて数秒後、石柱は砂となって崩れ砂山になった
それを見ていた学生達はドヨドヨと話し始めた
「魔力を抜いたのかい」
「はい」
「中々考えたじゃないか」
「色々と抜けることが分かりまして」
「うんうん、さてアルチンはどこか士官したい先はあるかい?」
「救護部隊です」
「なるほど!毒なら抜けるし魔法効果での石化なんかにも対応出来るというわけか
分かった、王都にでも行ってきなぁ
そこで配属先を聞くことだ、ただアルチンは治療の魔法が使えないから救護と治療の単位を取ったら卒業を認めるよ」
「ありがとうございます」
アルチンは深々と頭を下げて会場を出ていった
「こりゃ本格的に考えを改めないと駄目だねぇ」
エルフのお婆ちゃんは何かを企む悪い顔をして生徒全員ドン引きさせていた
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「『ブルルッ』寒気が…」
「キョンちゃん大丈夫!?」
「悪寒がしたわ、何か不吉なことが起きる予兆かもしれない」
「風邪じゃない?」
「盾の悪魔が風邪なんて引かないわよ」
女神ちゃん等が風邪?なんていう平和ボケをかますほどのんびりとした時間が流れていた




