050 コント【面白くないやつ】
「ん?お前は女神様のところの?」
でんちゃんは玉座のある10段の石段に一歩足をかけたところで声をかけられた
「魔王さん居るのか?」
返答はない
ちょっと逡巡したがまた一段上に足を進めた
「神殿に帰るんだ」
「修行が終わるまで帰れないんだ」
また返事がない
また1段登る
「階段を登ることがどういうことか分かっているのか?」
「階段を登るということだ」
そう言ってまた階段を一歩上がる
「魔王になる気か?」
「とりあえず座ろうかなって」
また1段登ろうとしてフェイントをかけて1段下がるが声は掛からない、ちょっと待ってから1段上がる
「それ以上はやめておけ」
「魔王さん、これオートマチックに声がかかるパターンのやつだろ?」
返答はない
2歩下がって同じ段に足をかける
「それ以上はやめておけ」
「やっぱりね」
1段飛ばして上がってみる
「1段ずつ上がれ、足が滑るぞ」
「どっかで見てるのか?」
1段戻るが反応がないため次の段に足をかける
「それ以上昇るな、魔王の重圧たるや小さき肝っ玉には辛いぞ」
「心が痛いな」
9段目に足を上げる、この次を登れば玉座だ
「後悔するぞ」
「そんなにしなさそうだけど」
最後の1段に足をかけ登りきった、2メートル先に豪奢な玉座がある
「残念だな」
「そうなの?」
突然足元の床が消え、落とし穴の先は滑り台になっていて階段の下の端っこまで戻された
「本当に後悔したわ、でもまた登ってやろうともさ!」
でんちゃんは再び階段を登っていく
「泥人形が何のようだ」
「神殿に帰るんだ」
「階段を登ると言うことはどういうことか分かっているのか」
「魔王になる気か?」
「それ以上は登るな」
「さっき飛ばしやがったな」
「それ以上登るな、魔王の重圧たるや小さき肝っ玉には辛いぞ」
「返答が面白くなかったぞ」
「後悔するぞ」
最後の1段は玉座まで腕を伸ばしておいて質量をゆっくり移動させて玉座の前に立った
「残念だな」
「そうかな?」
床が消えても玉座に掴まっていたら大丈夫だと思っていたが玉座の床も抜けて玉座も前回りに90度勢いよく傾いて振り落とされた
「クソお!どうしたら座れんだよ!」
でんちゃんは三度階段を登り始めた
「さっきのはツッコミじゃなかったぞ」
「もう神殿に帰るんだ」
「階段を登ると言うことは階段を登ると言うことだぞ」
「魔王になる気か?」
「それ以上は登るな」
「バナナの皮があるかもしれんぞ」
「それ以上登るな、滑るぞ」
「返答が滑ってたぞ」
「後悔するぞ」
「残念だ」
一呼吸置いて10段目に足をかけてすぐに1段下がった
目の前の床が突然消えるのを確認してでんちゃんはほくそ笑んだ
「クックック、何度も引っかたかっあっ『ベヂィ』グェ」
立っていた1段だけが斜めに傾き穴に落とされた
「クソぉ!何なんだよ全く!」
でんちゃんは四度登った
「さっきのもツッコミじゃなかったぞ」
「もう神殿に帰ったらどうだ?」
「階段を登ると言うことはまた落ちるのだぞ」
「魔王になる器じゃないよ」
「それ以上は登るな」
「バナナの皮は意外と滑らないぞ」
「それ以上登るな、今後こそ滑るぞ」
「コメントが滑り続けているぞ」
「後悔するぞ」
「残念だ」
今度は一番上に足を掛けてから2段下がって手を着いた
目の前の段が前に傾くカラクリを見て片方だけ口角を上げた
「で、本当の玉座はどこ?」
『バタン』
「あああぁぁぁぁぁ〜〜」
階段が滑り台に変化し滑落、その後は大量のブロッブやスライムが登場し斜面をトゥルットゥルにした
「ここじゃ無いとでも言うのか…」
「いや、玉座はココだよ」
「魔王さん!」
あれだけ滑って傾いて座れなかった玉座にいつの間にか魔王が座っていた
「その諦めない心は素晴らしい、素晴らしいがツッコミもボケも滑って落ちる時の格好も普通!というかあんまり面白くない!」
「グハァ!心が痛い…」
「グハァとか…とか要らない、求めてない」
「じゃあどうしたらいいというのだ!?」
「別に何もしなくても良いんじゃない?なんなら真面目キャラでも良いんじゃない?何と言うか冷静だしさ、感情の抑揚があまりないじゃない、だったらそのままのキャラでボソッとコメントする程度で良いんじゃない?」
「そんなんで良いんですか?」
「良いと思うけど、面白さを求めるのにから回っているというか、無駄足踏んでるというか、邪魔しているというかね」
「存在否定されてるんですけど?」
「そうね、今のキャラデザが不要だわ」
「素で生きろというので?」
「そうね、そうしな、そして情報提供をせい!」
「分かりました、やってみます」
「うん、頑張って」
「はい、お邪魔しました」
トボトボと歩くでんちゃんの背中は寂しく小さく頼りない感じがした
「仕方ない、一緒に帰ってやるよ」
「結構です、なんというか石像ラヴの変態と一緒に居たくないんで」
「痛いところを刺してくるね、気を付けて帰るんだよ」
「帰られるかどうかも分からないんですけどね」
でんちゃんは魔王城の正面扉から出た、重い頭を下げて力無く地面を見ながら
『ドン!』
「あっ!ごめーん!」
6本足の牛の全力タックルを左後ろから頂き崖から突き落とされたでんちゃんはグライダーに変形し空を飛んで帰っていった
「俺って結構器用だな」
気を持ち直したでんちゃんはそのあとでダツツキに上空から撃ち抜かれソニックブームで爆散した




