005 狙われてる?
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、キャッ!」
「さっきから女神ちゃんがうるさいんですけど」
「狼の魔物から逃げてた女の子の真似っ子してみました」
「何が楽しいのよ」
「なんとなくよ、あっまた来た!」
緑と茶色に色付けされたローブを羽織りLに曲がった杖を持って走って逃げている女の子だ
「ハァハァハァハァ、もうダメ!女神様助けて!」
女の子は女神ちゃんのお尻にしがみついた
「お尻はダメ!臭うかもしれないから!」
「石像のお尻が毛モジャラさんみたいに臭いわけ無いじゃない」
「アレは臭かった〜」「ババチ!」
「女神様!狼に囲まれました」
「どうかお助け下されぇ」
「乙女の血を浴びたら若返ってしまうかも」
…
「ちょっと!でんちゃん早い!」
「急いでしまった、しーちゃんゴメン」
「若返ってしまうかも〜、の後で『女神様!その小娘ヤっちゃって下さい!』でしょーが!」
「狼より先にか、それは考えつかなかったな」
「どっちでも良いんだけどさぁ、この状況どうしたら良いと思う?」
女神像の左右に2匹、キョンちゃんの左右に2匹、後ろの柱の間に1匹腹をすかせた狼が嬲るようにジリジリと距離を詰めてきた
「どうするったって狼か小娘かもしくは両方ヤッちまうしかないよね?」
「キョンちゃんの意見は分かるけどこの娘っ子を助けたら参拝者増えないかな?」
「無い無い〜、解体撤去がオチよ」
「やっぱり?でも血塗れも嫌よ?」
「じゃあそのまま動かず狼をやっつけるしか無いんじゃない?」
「動かずにって、どうやんの?」
「魔法よ!目でも鼻でも口でも尻からでもなんなら乳首からでも何か出せば良いじゃない!?」
「なるほどぉ、キョンちゃん私の看破ってしたことあったよね?」
「あるよ」
「私の魔法って『強化』以外は『神々しく光る』しかないんだよ」
「そうだったぁ〜」
「それなら我がやってしまおうか、全力で光って目眩まし程度は可能だろう?」
「モーちゃんナイスアイデア!じゃあ頼むよ
ん、ヌヌニヌヌヌ、ッパァーーーー!」
女神様の頭とお尻、目と鼻と口から一気に青白い光が拡散した
「目があああああ!」
「私は最初から隠れていたわ」
「土下座をしてれば大、丈、夫!」
「目がああああ」「マブチ!」
突然の光で女の子も狼も目が眩み何も見えなくなった
「ズバッ、ザッ、シュ、スパッ、グチャア」
「女神ちゃんウルサイ、モーちゃん切れ味良いからグチャアなんて音しないからね」
「それは内臓がこぼれた音だから」
「グロいわ!」
魔物は体の一部を残すことはあるが殆どの場合は魔力の塊が1つの石『魔石』となってしまい跡を残さない
「私…生きてる、迎えが来た光かと思った」
女神ちゃんの尻に隠れて顔を埋めていた娘っ子が尻から顔を離して自分と周囲の状況を見て呟いた
「狼が消えてる?…魔石になってる!」
狼は全てモーちゃんに音もなく切られ物言わぬ石に変わっていた
娘っ子は5つの魔石を拾ってキョンちゃんの前で跪いた
「女神様、命を助けて頂いてありがとうございます
お陰で街に帰れます、本当にありがとうございました」
娘っ子は走って街に向かっていった
「ねぇ、女神ちゃん、あの子あんな鈍臭い走りなのにどうして狼に襲われなかったと思う?」
「なんでかな?看破した?」
「うん、最後にようやくね
あの子『暗殺者』のスキル持ちだった、実は狼くらい楽に殺せてたんじゃないかな」
…
「ということは?」
「ということは?」
「分からない」
「私達、疑われてるんじゃない?」
「誰に?」
「分からない」
「結果として?」
「分からない」
冷たい空気が神殿に流れ誰も何も喋らなくなった