047 とばっちり
「森側門衛長兼警備長ダニオゥだ!
これからデスナイト、スケルトンを討伐する!
衛兵!冒険者達!討伐した相手の武器、防具はお小遣いにくれてやる!手柄を惜しまず己の命こそ惜しめ!数では有利、地の利もこちらにある!
街を守れ!敵を倒せ!奪え!殺っちまええええええええええ!」
ダニエルの名乗りは正義の味方ではなくただの盗賊だった
「ククク、笑える冗談だ
こっちは精鋭部隊だ、いつも通りだ!
前列盾を並べろ!勢いを止めたら槍で突け!」
「「「オオオオオオオ」」」
スケルトン達は大きな円形の盾をキレイに横に並べて腰を落とした
「「「「うおおおおおおおお!」」」」
『パッカーーーーーン!ゴロゴロゴロ』
先頭を行ったのは同じく盾を持った衛兵達と一部盾持ちの冒険者達、盾に体重を乗せて体当たりをすると弾け飛ぶスケルトン達の盾と腕の骨はまるでボーリングのようだ
「何故だ!?」
タルタルタンは精鋭部隊の強者達が数センチ地面に足の線を残して受け止め、槍で一歩ずつ推し進めていく絵を当たり前に想像していた
眼の前では部下が弾けてバラバラになって飛び散るなど嘘にしか思えなかった
「槍隊は突かず打ち落とせ!後方の剣部隊は槍隊を守れ!今、全員復活させてやるぞ!」
骨槍隊は槍の重さをもって向かってくる兵士達を打ち付け始めるとダニエルサイドの動きが鈍り何人かは骨剣部隊に刺されたり逃げようとしたところを追撃されたりと勢いを削ぎ落とされていった
「救護部隊は引き摺ってでも全員を生かせ!
ポーションや魔法で治療を急げ!
槍が脅威だ、魔法部隊準備できたか!?」
「「「はい!」」」
「放てええええええ!」
質量の大きい水と土の魔法が骨側に押し寄せる
タルタルタンは鼻で笑って詠唱を止めないで見ていたが思った以上に自軍の崩壊が痛々しいものだったことに苛立ちさえ覚えていた
「特と見よ!女神の加護を受けた我等が奇跡!
『慈愛の涙』」
聖騎士タルタルタンは神聖魔法が得意だった
とりわけ天の女神から慈愛の言葉を賜り、兵士を瞬時に癒やし闘争心を湧き立たせる奇跡のような魔法が大得意だった
「ふははははは!我が騎士団よ復活せよ!そして今一度戦えええええええぇぇぇぇ…」
虹を詰め込んだような暖かく輝く細かい水の粒が戦場に居る全ての兵に降り注いだ
スケルトンは水の粒が当たった者から生前の姿を薄っすらと浮かび上がらせ、温かい笑顔のまま大気に溶けていくように光の粒となって消えていった
衛兵と冒険者達は今の戦いで受けた傷だけでなく古傷や長患いの病気、円形脱毛症、靴の中でうずく痒みの水虫も含めて全てが治った
「そんな、馬鹿な、女神様は我等の味方ではなかったのかぁぁぁ…」
タルタルタンは顔の彫りが深く髭の濃いゴツゴツした感じの顔で頭は剃ったかのようにツルツルな男臭い漢だった
最後は女神様の方に顔を向け救いを求め、土下座をするような格好で消えていった
「えぇーーーーと、早い者勝ちぃぃぃ!」
ダニエルは宣言と同時にタルタルタンの装備一式を最速でゲット、空色に輝く銀色の鎧一式に柄尻にオパールのような多種の色の入った宝玉をあしらった仕込み杖(その中は長剣)と背中に背負える逆三角形型の盾を全部掻っ攫って大ヒンシュクを買った
他の武具も中々の名品も揃いだった
円形の大盾も特殊な軽銀で出来ており直径1.2メートルもあるが軽々と振るえるし槍は柔軟性があるのに突きを放つときには十分な強度を出す、剣は鋭く錆もなし、葉っぱのような形の小盾は守ることにも使えるし握って殴れば凶器としても使えるものだった
「えーっと、皆さん十分なおこぼれをゲットできたでしょうか?」
「お前は特になー!」「指揮官のくせにずりーぞ」「これだから役人は嫌いなんだよ」「換金して配れ、そしてくたばれ!」
「ヤジは結構、この一式は恐らく献上した後、どっかの国の神殿に戻されて『返却ありがとう』の手紙1枚で終わるパターンです、利益はほぼ0ですからあしからず
というわけで最後に詰め所に寄っていただいて今回の給金を支払いますので皆さんお疲れ様でしたー」
ダニエルはフライングゲットした一式を大袋に詰め込みつつ、ため息まじりにエクトプラズムを放出した
「なんの利益もねえ、最悪だ」
現魔王からの事前情報を代官に通達したところ聖騎士の装備品だけは回収するようにと言われ他はどうこうしようが構わないということで衛兵を焚き付け冒険者にやる気を出させて連れて来れた
でも全く自分の懐に入るものがないというのも悲しいもので…
「仕方ないな、上官てのはそんなもんだ」
キレイに汚れを落としていたこともあり既に夕暮れ時で周囲には既に誰も居なくなっていた
「衛兵も冒険者も全員帰ったか、綺麗さっぱり持ってったなぁ」
エクトプラズムを追加したあと女神様に頭を下げてから街に帰ろうとしたら少し離れた木に光るものが見えた
「女神様、私にもお恵みを残しておいてくれたのですね」
ダニエルは笑顔を輝かせて駆け寄って膝が抜けた
「カラスの巣ぅぅぅぅぅ、カラ巣ぅぅぅぅぅ」
泣き崩れたいところだったが緊張の切れていたダニエルは自分のオヤジギャグで泣き笑ってしまった
翌朝、自分が自分のオヤジギャグに赤面したのは本人しか知らない秘密である




