046 騎士タルタルタン
魔の森の奥、まだ雪が残る切り立った山の上の魔王城の椅子には魔王が座っていた
「今日はなんだか騒がしいな」
城の2階の大広間の椅子に1人で座って女神ちゃんとデートする妄想に耽っていた魔王の下に久し振りに討伐隊が上がってきたらしい
「魔王!女神教の聖騎士が成敗してくれる!」
大きな扉がゆっくりと開かれると青白い金属で作られた全身鎧の偉丈夫が立っており、その後ろには骨の体の雑兵達が付き従うように並んでいた
「魔物を従える聖騎士とはな」
「我の部下を魔物…とな?馬鹿を言ってはならん、女神教の精鋭部隊だぞ!」
「全員骨だが?」
「女神の祝福を受けた袈裟を掛けている、魔物になどなっているわけなかろう!我を愚弄するのも大概にしろ!そしてお前は誰だ!?魔王はオーガ種の筈だ!」
「オーガ種の魔王は…2代前くらいか?
ちっーと兜とって顔を見せて貰えないか?」
「名乗りを上げろということか、良かろう!」
聖騎士はガチャガチャしながら兜を取った
「我こそは女神教の聖騎士タルタルタンだ」
「デスナイトじゃないかぁ!?」
「違うわ!」
兜を取ったタルタルタンの顔は赤い炎を目に宿した骨だった
「とりあえず申し訳ないんだがオーガ種の魔王はもう死んだよ、討伐されたんだ
ということで大変申し訳ないがお引き取り願っても良いかな?」
「そうはいかん、首級をあげねば帰られん!」
「タルタルタンが持っているではないか」
「これかかぶ…あれぇ?」
タルタルタンが小脇に抱えていたはずの兜が怖いオーガの頭になっていた
「いつの間に…」
「というわけでお引き取り願おうか」
「お、おう…者共、首は取った!あったと言うべきか?帰るぞー!」
「「「「オオオオオオオ」」」」
悍ましい野太い声を上げて骨軍団は城を出ていった
「女神教か、何百年前の戦士達なんだろうかな」
見上げた忠誠心だな〜と考えていたら、ふと気付いた
「女神ちゃんとこに行っちゃわないか?
のんびりしていられん!女神様にもダニエルにも連絡せねば!」
分身を使って女神ちゃんのところから言伝開始だ
「女神様!一大事です」
「おっ、魔王久しぶりじゃん?元気してた?」
「もう超元気でした、立ち冬眠してましたから」
「なるほど~バイコーンだもんね〜…馬って冬眠すんの?」
「正確には眠っては居なくて心拍数と呼吸数を目一杯抑えた状態でボーッとしたりちょっと動いたりボーッとしたりを繰り返す感じです」
「ふーん」
興味無いのに聞くんかい!?とキョンちゃんは思ったがツッコミはグッと我慢して堪え、話を進めることにした
「で?何が一大事なの?」
「あ、そうだ!女神教なる教団の何百年前だかの聖騎士の舞台が魔王城に来たんですけど」
「現在殺されそうとか?」
「いやいや、全くそんなんじゃなくて
数十人の部隊の全員が骨系アンデッドになっちゃっててリーダーの聖騎士はなんか聖騎士鎧着たままデスナイトになってたんですよ」
「それの何が大変なの?」
「自分が死んだことを全然分かってなくて、ちょっと騙して追い返したは良いけど女神教ってことはココに来るかなって思って」
「「「…」」」
全員が想像してしまった
「ヤバいね」
「街に入ったなんてなったら目も当てられないな」
「ゾンビとリッチのライオネルは大丈夫かな」
「ん?ゾンビとリッチって何者?」
「あ、ちょうど来たよ」
魔の森の奥から走ってきた2匹を魔王目がとらえた
「ゾンビが走ってる?リッチの闇の衣がダセえ」
「そこぉ?」
「早いな」
「ゾンビずっと走ってるからね、リッチのライオネルは元々ランナーでトレーナーだったのよ」
「へぇ〜」
ゾンビは疾風のごとく駆け抜けていきリッチは一歩ごとにハードルを飛ぶようなちょっと不格好に走って消えていった
「じゃ、ダニエルのところに言ってくる」
「ありがとう、多分だけど街の冒険者や兵士と総当たりというか攻城戦に近い感じになるんじゃないかな」
「そうはなってほしくないんだがなぁ」
魔王がダニエルに要件を伝えた2日後、骨の軍勢がゾンビとリッチの走るコースに入った
「なんだかガラの悪い身分が良さそうなスケルトン集団に会いましてこちらに向かってきているようです」
「ご報告ありがとうございます」
「行軍は遅いですが丸1日もあれば着きそうです」
「意外と早いですね」
「スケルトンですからね」
「なるほど」
女神ちゃんはなるほどと答えたものの、何がなるほどなのかは分かっていない
今では1日20数回回ってくるゾンビとリッチに何度となくタイミングを聞き、その都度キョンちゃんがダニエルに報告をあげた
朝露に石像が濡れる頃、ぞろぞろとスケルトン部隊がやってきた
「女神様!女神様だぞ!女神様の前に整列!」
後ろから声が掛かり女神ちゃん達、神殿の仲間等は気を引き締めた
総勢50人?の元人間達が女神ちゃんの前に頭を垂れて跪いた
「女神教、筆頭聖騎士タルタルタンと我が第3聖騎士団、オーガ種の魔王の首を取って参りました」
女神様の前で恭しく兜を差し出した
タルタルタンは自分の兜をオーガ種の魔王の首と思い込んで差し出している
「キョンちゃん、これ、アレよね、魔王がアレしたやつよね」
「そうね」
「アイツは鬼で悪魔だな」
「間違いない、鬼畜の所業だわ」
一頻り現魔王の悪口を言い終わった頃にタルタルタンは兜を手に持ち直し立ち上がった
「女神様への報告は終えた、国に戻るぞ
こんな国に要はない、女神様を祀る神聖国に戻るぞ!」
「「「オオオオオオオ」」」
部下達も立ち上がり一糸乱れぬ動きで胸に手を当て数秒黙祷した後に左足を引いて回れ右を決めた
「ん?何だ、我らを警戒している?
魔王の首を狙っているのか?この国の兵どもが考えそうなことだな」
街の方にはダニエルを中心にして冒険者達が集まっていた、いつぞや腹を下した娘も混ざっているようだ
「森側門衛長兼警備長ダニオゥだ!」
ネイティブな発音でダニエルは口上を述べ始めた




