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043 ちゃっちい呪いでも犯罪は犯罪


 時を遡ること数ヶ月、女神ちゃんの体の半分程が雪に埋もれた頃、街ではイーちゃんプンちゃんが買い食いをしていた



「肉串うめー」「ンメー」



 相変わらず串焼き三昧だ



「こんなところにいたか、神殿はいいのか?」

「ヤベ、ダニオゥだ」「ミチカッタ」

「そう嫌がるなよ、ネギマも食えよ」

「ダニオゥ分かるやつだな」「だな」



 ドゥルっとしたネギの食感に戸惑いながらも肉串をがっついた



「それ魚だからな」

「何!?」「マジカよ」

「マグロっていう赤身の魚だ」

「柔らかい肉だなって思ったよ」「やらかーい」

「さて、一つ仕事を頼まれて貰おうかな」

「肉串追加な」「ちーかま!」

「分かった、後払いでいいか?」

「仕方ねえな」「ちーかま!」



 2人はダニエルに連れられて魔の森側の詰め所に入った



「マリ、例の資料を」

「はい、ダニエル」



 マリは元怪盗ファイアスターで現在はダニエルの奴隷として働いている、ただし捕まえたのは下半身無双の爺さんだったりする



「今、この街に呪術士が来ているという噂がある

 領主の代官の側近が1人呪いに掛かったらしく足の中趾と薬趾の間に石が挟まった感じが抜けないらしい」

「ふぅん」「へーわ!」

「問題は呪いの強弱ではなく、いつ呪いが掛けられたのか分からないことであり人そのものに掛けられるスペシャリストという2点だ、グッ」



 ダニエルは机の角に内腿を押し付けてしまい苦々しい顔をしただけだがマリもイーちゃんプンちゃんも表情しか見ておらず大変な事態なんだと理解した



「人に呪いを掛けるのは難しいのか?」「か?」

「そうだ、普通なら物を媒介にして体に作用させるというのが一般的だ

 今回のケースで言えば靴に呪いを掛けてその靴を履いたときに小石を挟んだ感じを覚えるという方法を取る

 しかし人に直接という場合は靴など履かなくても小石を挟んだ感覚を植え付けられる、その呪いのタイミングが不明というのが恐ろしいんだ」

「へぇ〜」「へぇ〜」

「更にいうなら人に直接呪いを掛ける場合のエネルギーというか精神力は一般の人間が行う場合、自分の命を代償にする程に消耗するのが常だ

 例えば大きい商家の主が詐欺で金をだまし取られて、相手を死ぬ程憎く思って呪い吐いて首を吊る

 それでようやく憎い相手がタンスの角に親趾を激突させるくらいにしか呪えないんだ」

「それヤバいね」「ヤッベーゾ!」

「人に頼まれて人を呪える呪術士の危険性が分かったか?」

「分かった!」「わかった!」



 イーちゃんプンちゃんは余りの恐ろしさに趾をモゾモゾ動かしたが、マリは「それでも平和だな」くらいにしか考えていない



「でだ、その呪術士を探して出来れば生きたまま

捕まえたいというのが代官からの通達だ

 手駒にしたいというのが本音だろうがな」

「なんて危険な奴なんだ」「ダメ、絶対!」

「流石に分かるか、マリもともに捕縛の協力をむぞ」

「あ、うん」

「しっかりしろ!街の一大事だぞ!」

「はい」



 足の指に小石が挟まる、タンスの角に親趾をぶつける程度が街の一大事?というのがマリの本音だ



「じゃあ俺達は屋台で飯食いながらそれっぽいの探すね」「ニク!」

「はいはい、じゃあ私は雑貨屋さんでも巡ろうかな」

「では検討を祈る!」「ニク!」

「はーい」



 マリは金の長髪を纏めるためのクリップを買いに雑貨屋の集まる路地に出かけた

 ぺったんこボディに少しゆったりの服を着て胸とお尻の部分に武器を詰めてナイスバディを演出、メイクをバッチリ決めて目は大きく口鼻をクッキリさせ別人になっていた



「そこの姉さん、アクセサリーはどうかね?」

「鬱陶しい髪を纏めるのに良いものはあるかしら?」

「そうさな〜、家にはバレッタくらいしかないな」

「そう?じゃあ良いものが入ったら教えてくださる?」

「そりゃあもう!またお声がけさせて頂きます!」



 いい女ぶって髪をかき上げるマリは店の中の物品と人間の足跡、痕跡を探したが最初の店は外れだったらしい


 なんの代償も無しに呪いを掛けられるとは考えられない、触媒や媒介物、贄など何かが絶対に必要だろうと推測し動いていた




「ネギマうめえ」「ンメー」

「肉団子スープあったけ〜」「あったかいんだから〜」



 マリが仕方なく勤めているとき、イーちゃんプンちゃんは食べ物系屋台の端から端まで移動しながら買い食いをしていた



「屋台にはもうなさそうだね」「そだねー」

「じゃ次は店舗に行くか」「てーかうぇ」



 どうやらテイクアウトできそうな商品を探すらしい、お賽銭をそんな使い方されていると街の人等は思っても見ないだろう




「占い?」

「そうじゃ、例えば今は捜し物をしとるだろ?その場所の方向だったり物だったりの手掛かりが掴めるかもしれんぞ?」

「なぜ捜し物のことを?」

「ヒッヒッヒ、秘密じゃよ」



 キョロキョロしながら店舗前のセール品を一瞥して店舗内を覗いている人を見ればなんか目当てが有るんだな〜ってくらいすぐに分かる

 マリも勿論気付いていて話に乗っかっている



「じゃあ見てもらおうかな」

「銅貨で5枚で簡易、青銅貨1枚でちょっと詳しく、青銅貨2枚で頑張ろうかね」

「じゃあ青銅貨1枚から、続きがありそうならもう1枚追加でもできるかしら?」

「仕方ないね、いいとこ見せてあげるよ」



 声をかけてきたのはフードを深く被った小さいお爺さんっぽいオジサンだ、手は筋張っているが艶と張りがありシワが少ない

 胸郭と骨盤の形を見てマリは男性だと判断した、人を騙す時には見分ける力が必要だったこともあり職業病的なところでもある


 オジサンはブツブツ何かを唱えながら菜箸のような棒を束で持って手の中でジャラジャラ回して先端を覗き見た



「捜し物は人かい?」

「…」

「そうさな、人でもあり物でもあるようだ」

「…」



 マリはポーカーフェイスを崩さない、その表情を見たあとで手の中を除きこみ占い師は冷や汗を流した



「これは参った、これ以上は迂闊に話せん

 ワシがの…危ない危ない、喋っちゃうところじゃった

 あんたの捜してるアレもソレも近くにある、それだけじゃ、危なすぎてワシはパス」

「ありがとう」



 青銅貨1枚を手渡し立ち上がるマリは下で何度も目をパチクリする占い師には気づかなかった


 占い師は既に呪われてしまっており細かい作業をしようとすると目に息を吹きかけられたように感じる呪いをかけられてしまっていた



「クソ、めんどくさい、鬱陶しい」



 鞄にキレイに片付けようとちょっと目を凝らす度に『フッ』とやられる鬱陶しさにストレスフルな占い師は銀貨くらいふっかけなきゃ元が取れんわと憤りながら帰った



「近くに居るのか…」



 マリはダニエルや占い師の言う危険性を少し理解してきた



「戻るか?いや進むか」



 そう、このときマリは既に呪われていた

 先を見た時に陰に意識が向くだけの呪いだ、それだけで人間は怪しく感じその方にと意識を自分で植え付けてしまうのだ



「クックック、簡単にかかりよるわ」



 呪術士はマリや占い師の近くに居て何らかの手段で呪ったのだ、誰かに見られているとは気付かずに…



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