004 沈黙は金なり ぷぷぷ
「モーちゃん、また影を落とす木を刈り込んでくれないかな?」
「任せておけ」
シャキーン!シャキシャキシャキーン!シャキーン!
「これで良いかな?」
「モーちゃんナイス!これで背中の苔が増えずに済むわ〜春の陽気は良いけどさぁ苔生すと痒いのよぉ」
イーちゃんとプンちゃんは知っている
「ププ」「プププ」
「何よ?何笑ってるの?」
女神ちゃんの首の後ろのシワに何かが居ることを
「別に」「別にぃ?」
「何か隠してるなー?」
「隠してない」「何もぉ」
「怪しいな」
イーちゃんとプンちゃんは毎年笑ってみているがそろそろ伝えようかな?どうしようかな?と思うだけでいつも伝えず、良いタイミングでとドキドキしながら過ごしていた
「偵察行ってくる〜」「行ってくる〜」
2人はインプの姿に戻り透明になって飛んでいった
「モーちゃん、今更なんだけど透明になる魔法って普通に使えるもんなの?」
「我の使えた騎士の仲間達には居なかった、精々が気配を薄くする程度で丸見えだった
魔物なら周囲の色に『同化』するとかはあったが『透明』は無いな」
「へ〜やっぱりそんなかぁ
キョンちゃんなんか知ってる?」
「私の『看破』の魔法でも透明化って見たことないかも、『同化』とか『迷彩』はあるけどね
もしかしたらあの2人しか使えない固有の魔法かも、喋ると半透明になるし他にも制限あるかもね」
「へぇ〜流石にキョンちゃんよく見てるね〜」
「私は視ると映す、震える以外はできないから」
「十分じゃなーい?」
「持って動いて貰えれば?もっと活躍出来そうだけどね」
「人が来るぞ〜」「人が〜」
噂をしていると2人が半透明になって戻ってきて柱の裏で変化し天使になって固まった
「インプのイタズラ小僧共!どこ行きやがった!」
草と枝を短い手に持った長い剣鉈で切り落としながらズングリムックリで毛だらけな人が現れた
「毛モジャラな魔物かと思って引っ張ったらお尻の毛だったみたいで臭かった〜」「臭かった〜」
「連れてきたようなもんじゃない!」
「そうとも言う」「そうとも言う、あっ毛が手に!ババチッ!」
プンちゃんが柱に手をぶつけてしまったらしく石がコツンと当たる音が女神の後ろから鳴ってしまった
「そこか!?」
毛モジャラは女神を睨みつけてからいつでも振り下ろせるように剣鉈を構えて正面から側面に回り込み始めた
「逃さねぇぞぉ〜、どこだぁ〜?」
毛モジャラはキョンちゃんの裏、モーちゃんの台座、女神の足元を厳しい目で確認して女神の横顔、後頭部と見て動きを止めた
「動くなよ、絶対動くなよ」
毛モジャラは顔を青くし腰を引きながら後退りをし始めた
「首の後ろ痒い、あ〜我慢、我慢〜、痒い〜」
女神ちゃんの顔は歪んでいるが毛モジャラは見えていない
「見るな!こっち見るな!あっひゃーーーーー」
毛モジャラが走り去る瞬間、女神ちゃんの肩から太く短めなムカデが飛びかかり毛の中に入り込んだ
それを見てしまった女神ちゃんは元々黒目は無いのだが眼球が上転し完全に白くなり一時失神した
「あーぁ、行っちゃったぁ」「飛んじゃったぁ」
「2人は知ってたの?」
「知ってたぁ!十年以上前からぁ」「百年以上前からぁ」
「女神ちゃんずっと苔だと思ってたのがムカデだったからショックでフリーズしちゃったよぉ」
「しょうがない」「ない」
女神ちゃんはケラケラと笑う2人への怒りもそこそこで、苔だと決めつけていた自分になんとも見えない憤りを感じた
「モーちゃん、あのムカデってどんな魔物か知ってる?」
「髄喰百足…かな、生き物の脊髄に入って体を乗っ取る系の」
「やっぱりぃ〜看破した時に『神経支配』ってあったらそうかなと思ったんだよね」
「女神ちゃんに入り込もうと頑張ったけど脊髄どころか表面の下にも入れなかったかもしれないというところか」
「あちゃー」
痒かったのは表面削ってたのか!防御力高くて良かったと違う方向で安心した女神ちゃんは毛モジャラさんが気になって呟いた
「あの毛モジャラさん大丈夫かなぁ?」
「毛で絡め取って大丈夫だかもね〜」
「なるほど、毛は元より備わっている防具というわけか、鞘みたいなものだな」
「モーちゃんを納めておける鞘なんて無いと思うけどねぇ〜」
「そうだな!ハッハッー!」
笑い合う3人の下で珍しく黙っている泥人形の3人は随分と昔からムカデに気付いていて黙っていた罪をアイコンタクトで共有し今日は黙っていようと心に決めたのだった
「今日は3人静かだね、何かあったのかな?ん?」
「…」「…」「…」
「お前等もイーちゃんプンちゃんと一緒かーーーーー!踏み潰してやるぅぅぅ!」
今日も廃神殿は平和です