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039 雪解け、そして春


 その冬は纏まって雪が降ったのは1ヶ月だけでそのあとは降っても続かず2ヶ月ほど2メートルそこそこを保ち季節は春に傾き始めた



「モーちゃん見えてきた、おっはー」

「女神ちゃん、おはよう」



 モーちゃんこと、奉剣クライゼン・モーの柄が雪から顔を出した



「そろそろ冬が終わるよ」

「そうだな、今年は女神ちゃんは埋まらなかったのかい?」

「うん、胸までくらいだった」

「そうか、狼に頭を踏まれずに済んで良かったな」

「そうだね、そんなことあったねえ」

「ここ数十年そこまで積もっていないな、環境が変化してきたのか」

「そうね、200年前と同じくらいに戻ったんじゃない?」

「そうかもしれんな」



 長生きもとい寿命の無い無生物には周期として認識するらしい



「ゾンビはねしっかり通り道を作ってせっせと歩いているよ、なんなら最近小走りしてるくらい」

「ほぉ、そうか元気で何よりだ」



 ちょうどいいタイミングでゾンビが槍を掲げるのが見えた

 動きが少し機敏になっていてキレが出てきた



「あのゾンビは何がしたいのだろうかね」

「ずっと同じところを回ってるよ」

「走りたいのだろうか」

「そうかもね」



 ゾンビが通り道を作ったことで通路に侵入しゾンビと一対一での戦闘をする場面もあり、女神ちゃんも何度となくヒヤヒヤしながら見てはホッと胸を撫で下ろしたものだ



「一日に何回くらい前を通るようになった?」

「えーっとね、7・8回くらいかな」

「大分早くなったな」

「そうね、槍さばきも上手になってるみたいだよ」

「ほう」



 モーちゃんはそれから数時間黙ったままだった



「なるほど、足の捌きが良くなったんだな」

「へぇ〜」

「もう少し経てばあのゾンビは…走る」

「え!?」

「見てみたくないか?疲れを知らないゾンビが逃げても簡単に追いつかれそうな程の全力疾走で人の脇をただただ通過していくのを」

「超面白そうなんですけど!」

「だろう?このまま成長すればそれが見られるかもしれんな」

「キョンちゃんが起きたらダニオゥに伝えてもらわないとね」

「そうだな、雪が消えたら立て看板でも仕立ててもらわないとな」



 ゾンビは早歩き程度から雪が溶けるに従いジョギング、ランニングと速度が変わってきた



「そうだ!今度は前足部でグッと強く地面を踏みつつ反対側の腿を地面と平行にまで上げるんだ」


「腕は上に振るのも勿論だが接地のタイミングの時にはしっかり振り下ろせ」


「なるべく前足部で接地して足の裏のアーチのテンションを感じて!下腿三頭筋をギュッと収縮させておいてバンッと弓が反りを戻すように、そうだ!良いぞ、地面を踏み付ける床反力を得るんだ!」



 何故か人間の熱血漢が増えた



 寒い湿った風が吹きすさぶ中、スポーツ刈りでタンクトップに短パンとスニーカーという超スポーティな格好でゾンビにアドバイスを贈り褒めちぎるオジサンが1人、何処かから現れた



「誰!?」

「分からん、分からんがゾンビも抵抗しないし良い人なんじゃないか?」

「それで良いなら良いけども」



 森の奥から現れて森の奥に一緒に消え、また奥から賑やかに現れる



「オジサン、髭伸びるの早いね」

「大分青いな」

「よくよく見たらてっぺんちょっとキテるね」

「それは男としての体の内分泌系が滾ってから仕方ないんだ

 アレをセクシーと思う女子も多いぞ」

「モーちゃんの元の主人の近くにも居たの?」

「そうだな、頭のてっぺんに髪がなく男臭い感じでゴツゴツした顔の男が何故か美人でグラマーな女子にモテていた」

「へぇ〜」



 世の中分からないものである



「今日のレッスンはここまでだ!また明日一緒に走ろう」



 勝手にゾンビに絡んで勝手にレッスンを始めたタンクトップ短パンオジサンは顎の色が青から黒に変わった頃にシュタタタタとスプリントな走り方で帰っていった


 ゾンビは気にせず後ろ足は爪先立ちでビシッ、ビシッと腿を上げてちょっと走るような格好になってきた



「ほら、女神ちゃん、ゾンビが走ってるよ」

「そうだね!」



 ゾンビを発見してから2ヶ月と8日が経っていた




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