038 凍てつく冬
「あっ、凍てついたな」
「モーちゃん何が?」
「皆大好きゾンビさ、雪にまみれて完全に凍結したよ」
「あらまー、これだけ降れば仕方ないか〜泥人形3人衆はもちろんだけぢキョンちゃんも埋まったしね」
「もう我も柄しか出ていないからな」
積雪は150センチを超え女神ちゃんは半分程度埋まりモーちゃんは柄だけ出ている程度で他は雪の下に埋もれてしまった
「ゾンビも凍って来ないしチョスナーも来ないだろうしな〜」
「暇になるな」
「私はゾンビが来てもチョスナーが来てもなんにも見えないんだけどね」
「ワシも」
「私も」
「僕は手だけ出てる」
よく見ればどろちゃんの指先だけがほんの少し見えていた
「でも見えないよね?」
「意外と見えてるよ、雪原がね」
「どうなってるの?」
「どうって…どうなんだろ?でも見えてるから大丈夫」
その数時間後、どろちゃんは埋もれた
「見えない」
「どんまい」
夕暮れ時、雪原の上を足跡をつけずに歩いてくる2人の若い男見えた
「凄いね〜どうやって歩いてるんだろう」
「女神ちゃん、誰か分からないかい?」
「え?」
どんどん近づいてくると似たような顔をしているなというくらいで女神ちゃんは特に誰と特定できなかった
「偵察行ってきたー!」「キター!」
「なんだイーちゃんプンちゃんか」
「豚汁サイコー」「トゥンジェリー※」
「豚汁ってどんなものなの?」
「オークの肉と甘い野菜の入ってる白濁した汁、脂が浮いてていつまでも温かいの」「あったかいんだから~」
「へ〜雪の日にちょうど良さそうね」
「じゃあまた偵察に行ってきまーす」「マースに〜※」
「いってらっしゃーい」
※トゥンジェリ=トルコの地名です
※マース煮=海塩と泡盛で魚を煮た料理、生の青のりを一緒に煮ると香りが良い
イーちゃんプンちゃんはまた雪の上に足跡を付けないように歩いて街へ戻っていった
「いや〜暇だね〜」
「確かに暇だ、だがそれもまた美し
雪が一片落ちては我を埋めていく、悠久の時を生きる我等には四季の移り変わりはいつも通りで新鮮だ
さすれば我も一眠りだ、年に数日だけ何も考えず、閑に自分と語り合う貴重な時間を堪能しよう」
「モーちゃんって詩人よねぇ〜、時折抜けてるのが股に傷だけどさ」
「大丈夫、女神ちゃんには負ける
玉に瑕の間違えだ、股に傷は良い意味では使わないよ」
「あら、そうなの?まぁいいわ
モーちゃんが埋まったらぼーっと街を眺めてるわ」
数週間後、モーちゃんも埋まってしまい女神ちゃんも胸まで埋まって頭にも雪が積もった
「だーれも来ない
1ヶ月も降ると流石に積もるけど街の周辺は流石に雪かきされてるな〜」
女神ちゃんの独り言だけが流れていく
「お?あれ?チョスナー?」
短い日が落ちた頃にチョスナーが足に板を括り付け6本足の初めて見る狼系の魔物に引っ張られて巡回するのが見えた
時速50キロ近い速度でフカフカの雪原を突っ走る姿は異様だ
「モーちゃんに見せたかったな〜
あれでチョスナーが出世したら最高に面白いんだけどな」
1時間程で街の壁を1周してくるらしく2周目に入り腰を下げつつバランスを取りつつもそろそろ眠たい顔になっていた
「いつも寝てるからだよ〜頑張れチョスナー!」
3周目、手綱を持っていられなくなったのらしく腕に絡めてなんとか引っ張られていた
「腕に気をつけろ!持っていかれるぞ!」
4周目、チョスナーに限界が来たらしく板に足を固定している部分に紐を絡めてしゃがんで項垂れていた
「寝るな!寝たら負けだ!死ぬぞ!」
女神ちゃんのエールは届かない
5周目、チョスナーは板の上で寝ころんでいた
「うわぁーアイツやったわ」
6周目、7周目、同じ姿勢で寝ながら見廻りを続けて8週目に起き出して1周目と同様の姿勢で目の前を通り過ぎると雪を降らせる分厚い雲が晴れて青い空が見えた
「チョスナー凄いわぁ、あいつ天才かも」
女神ちゃんは皆に見せられなくて残念だなと思ったが思い出す姿が寝ている姿だったこともありやっぱりいいやと思い直した
「1人は寂しいなぁ〜雪が消えてくれないかな」
久しぶりに陽が差した街からは賑やかな音が漏れてきている
「まだまだ冬は続くけど街の中は人が沢山で良いね」
微笑ましく街の方を眺めている女神ちゃんは人恋しいらしい
「ん?ゾンビが動き出した」
「え?嘘!?」
「本当だ、こっちに向かってくる
来た時にまた気にしてやってくれ、瞑想に戻る」
「うん、分かった」
モーちゃんは一度起きたがまた自信との語り合いを続けるらしい
日が頂点に達する頃、ようやくゾンビが姿を見せた
頭の一部はまだ凍っていて雪がくっつき重そうだが雪を掻き分け通り道を作りながらゆっくりと進んでいた
律儀に槍を掲げて見せたが姿は埋まっていて上から見下ろす女神ちゃんでもほぼ見えずだった
「生きてて?死んでるけど動けて良かった、ゾンビ頑張れ!」
女神ちゃんは鼻から氷柱を垂らしているが少しほっこりした気持ちになった




