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034 不可視のスナイパー


『パコッ!』

「いったぁぁあ!誰だゴルァ」

「女神ちゃんどうしたのよ」

「おでこの左側になんか当たった」


『パコンッ!』

「ほらまた!」

「見えないから『エアバレット』かな?圧縮した空気を飛ばして当ててるんだ

 何処から飛んできているか分からないくらいから飛ばしてる、やるねぇ」


『パコンッ!』

「えでぇ!クソがぁぶっ殺す!」

「犯人が分からないのに?」

「確かに」



 静かだったモーちゃんが何かを捉えた



「街の壁の上、子供が2人」

「は?なんで分かるの?」

「気配かな」

「偵察行ってくる」「トゥゲザーしようぜ」

『パコンッ!』

「イェでッちぃぃ腹立つなぁもう!」



 イーちゃんとプンちゃんが透明になって偵察に向かっていった


 その後も何発か頭や顔面に圧縮空気が当たり女神ちゃんの苛立ちがアゲアゲになって頃に偵察部隊から連絡が来た



「壁の角に10歳くらいの子供が2人」「2人」

「やはりな」

「片方が筒型の長い杖を持っててもう一人が観測してる」「見てる」

「殺していいよ」

「やめておきますオーバー」「オーパー」

「クソがっ!痛いだけなんじゃい」

「自分で反撃してオーバー」「オーパー」

「睨んでみるか」



 女神ちゃんは一瞬だけ顔を動かし壁の角の方を睨んでみた



「驚いてますオーバー」「オーパン」

「やめる気配ある?」

「もう一発撃とうとしてます」「撃ちます」

『パコッ!パコッ!』

「いったーい!連発しやがったな!?」



 女神ちゃんはもう一度顔を向けて睨んだ



「かなり引いてますオーバー」「カンナ(厶)スタイ(ル)」

「なんか持ってこっち見てるの?」

「筒型の何かを持ってます」「ヨジャ」

「視覚共有できるかな」


 …


「無理だわ〜ムリムリ」

「じゃあちょっとこっちの映像送りまーす」「送りまーす」

「はっ?え?まじでこんな風に見えてんの?ほぼ小指じゃない」



 イーちゃんは自分の視点を女神ちゃんの眼に直接転送してみせた



「こんなとこからあんな棒っ切れみたいな杖で撃ってきてんの?凄くない?」

「凄いです」「でしゅ!」



 完全に子供をただ後ろから見ている人の感覚だった



「最後一発いけます」

「距離4.4 横風右3 吹き下ろし1」

「了解、魔力装填」

「風変化なし、いつでもイケル」

「バーン!」

『パコンッ!』

「いでぇえ!自分が狙われてるの忘れてた!」



 イーちゃん視点では子供2人がハイファイブ(ハイタッチ)していた



「誰か来る」「きっと来る」

「こらああああ!子供が登っちゃイカーん!」

「逃げろおおっ」



 どこか見覚えのある衛兵さんが上がってきて叱りつけたが身軽な子供達は壁の内側にジャンプして飛び降り市壁を蹴り建物の壁を蹴り地面に着地すると同時に前転して勢いを殺し走って逃げていってしまった



「あの子等ヤバイな」

「女神ちゃん何がヤバイの?」

「小指くらいの私の頭に細長い杖を構えて魔法を撃ってきたのよ、隣に居た子が筒みたいなのを覗き込んで距離と風向きを教えていたわ」

「観測手と狙撃手で分かれてるのか、凄いね」

「私見てたけどね、アレは凄いと思う」

「女神ちゃんにとっては迷惑だけどね」

「あぁ、まぁね」



 女神ちゃんは確かに痛かったしどこから狙われているか見えなかったからかなりムカついてはいたが子供の技術の凄さの驚きの方が勝った


 数日後、ダニエルがフラッと来たときにキョンちゃんが子供のイタズラを報告、その翌日には女神ちゃんの隣に木製で同心円の描かれた的が出来上がった



「ダニオゥが捕まえたって」

「で、なんで的が?」

「才能があるからって無罪放免にして的を射抜く威力を出せって命令したんだってさ」

「それで分厚い板を設置したってことね」

「流れ弾に当たらなきゃいいけどね」



 キョンちゃんの予感は外れた、いや当たったといえば当たったか…

 参拝者の居ない時間帯を狙って集中砲火、設置2日目には根元から折られターゲットは女神様に縋ろうとする若者の泥人形の手に変更された



『バヂンッ!』

「いってぇえええなぁ!」

「ドンタッチミー」



 女神ちゃんの一言にどろちゃんはワルノリした



「ねぇ、いーじゃないの〜、いーじゃないの〜」

『バツンッ!』

「指先痛えってぇ」

「気持ち悪いから丁度いいわ」



 女神ちゃんは高らかに笑った



『バンッ!』

「いったぁー!あのクソガキぶっ殺す!」

「イエーイ」



 女神ちゃんの右横っ腹に流れ弾が当たりどろちゃんは喜んだ



『パァーン!』

「人差し指もげるよー!」

「多少かけても良いんじゃない?」



 女神ちゃんの心無い一言にどろちゃんは泣いた、更に痛い指に追い打ちをかける子供達にブチギレ、最後には無になった


 木製の的が壊れた翌日に石の魔法を使う職人さんが石で同じような的を作製してくれた、お陰でどろちゃんはそれ以来指を痛めず済むこととなった



「あの石の的、いつか壊れるんじゃない?」

「女神ちゃん怖いこと言わないで、もう指が死んじゃう」

「それは…仕方ないか」

「鬼!」



 どろちゃんは女神ちゃんの一言でとても心配になった


 参拝者の居ない雨の降らない夕方に的にパンパンと当たる音にビクビクと過ごす日々が一ヶ月程続いたある日のことだった



「子供等が『エアバレット』で石の的を撃ち抜くにはどうしたらいいか?と聞いてきたんだがどう答えたものだろうか?」



 ダニエルが相談に来た

 どろちゃんは「そんな奴死ね」と本気で思って

いたが念話には出さなかった



「そうねぇ、弾速を上げる、空気の圧縮を高める、弾の形状を紡錘形にする、回転を加える、石の弱い所を見極めて当てるくらいかな」

「的確な指摘をありがとう」

「もし、石の的を貫通もしくは破壊出来たらこっちには絶対に撃たせないでね」

「今も禁止にしているが勿論そのようにする

 石の的を射貫けるなら衛兵に勧誘するか従軍させる、最低でもこんな壁から撃つようなことはさせない」

「じゃあ良いわ!教えてあげて」

「ありがとう」



 ダニエルは渋良い笑顔を見せて帰っていった



「キョンちゃんありがとう」

「良いのよ、どろちゃんも痛かったでしょ?女神ちゃんに意地悪しちゃダメよ」

「はぁい」

「じゃ、あとは経過を追っていこうか」



 子供達は人の居ない時間帯を見つけては的を狙い、試行錯誤を続けた


 夏は葉に狙撃を邪魔され、秋には枝の葉だけを狙ったり木からぶら下がるミノムシを撃ち抜き石像達は体液まみれにされたりと徐々に精度が上がってきていた


 冬のある日のことだった



『ドンッ!』

『ドンッ!』『ズ』



 数ヶ月間で的にエアバレットが当たると地響きが起きたり石の的が数ミリ動くようにさえなっていた



『ドンッ!』『ミシッ』

『ドンッ!』『パラパラー』

『ドンッ!』『ビキィィィ』

『ドンッ!』『ビキィィィ』

『ドンッ!』『バコッ』『ズ…ドーーーン』



 石の的が縦に割れた、石工が楔を打って岩を割るように縦にエアバレットを撃ち込んで割り易くしたのだ



「…」

「…」

「…」



 女神ちゃんとどろちゃんの開いた口が塞がらない、キョンちゃんも見えない口があっぽんになっていた


 石の的が割れた1時間後、ダニエルが2人の子供を連れてきた



「この2人が犯人だ、挨拶しろ」

「何度も当ててごめんなさい」

「ごめんなさい」



 頭を下げた子供達は以前にイーちゃんの目を通して見た2人だ

 2人共身長は180センチ近く体は細い、1人は黒い肌、もう1人は浅黒い肌をしている



「ダニエルさんから助言を貰ったんですけど女神様達のおかげだと聞いたので、えーっと、ありがとうございました

 大変失礼なことをしてすみませんでした」

「すみませんでした!」



 内心ホントだわ!と女神ちゃんはイラッとしたが柔かい笑顔は崩していない、プロだから!



「助言を聞いて風の読みも気温や天候、木々の揺れ方なんかにも気をつける方にしたら精度が格段に上がったんだ」

「僕は杖を替えたんだ、魔石も無属性から風の属性の良い形のに変えて魔力の練り方もできる限り精密にしたんだ

 そしたら風の影響も減ったし速度も威力も上がったんだ!ダニエルさんに礼を言ったらココでお告げを聞いたっていうから、お礼に来たんだ」



 ええ子等やとジジババ臭い感心をしたキョンちゃんだが表情は無い



「そして正式に領主軍に従軍することになりました!これで親孝行出来ます!本当にありがとうございました」

「僕もお母さん1人しか居なくて学校に行けなかったんだけど、弟と妹を学校に入れてあげられるくらい給料貰えるみたいなんだ!だから、ありがとうございました」



 ええ子等や〜と全員が感心した



「というわけだ、的にして申し訳なかった

 そして許すどころか助言までして未来を切り開いてくれてありがとう

 また頼むよ」



 3人を見送る神殿メンバーズは親心な気分を味わった



「俺は許さねえからな!」



 1人を除いて…



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