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027 墓参り


「久しぶりに遠出してこようかな」

「あたしも」

「じゃあワシも」

「3人してどうしたのよ?」

「墓参り」

「私達を作った人のところのね」

「そろそろ300回忌だと思うんじゃ」

「へぇ〜行ってきたら良いんじゃない?」

「うん、行ってくる」

「お土産話聞かせるね」

「何度もね〜」

「1回で良いです」



 夏の終わり頃、泥人形三人衆が思い出したように旅支度を開始した


 それぞれの抜け殻を残して中身だけ出てきて人形になり土や草等で自分を色付けし形を模しただけの使えない武具を持った


 どろちゃんは斥候のような軽鎧にナイフを持ち背に盾を背負う

 しーちゃんは魔法使いのようにローブと杖を持つ

 でんちゃんは重戦士、グラディウスのような剣と大きな四角い盾を持つ



「準備完了!行ってきます」

「行ってきます」

「行ってくる」

「行ってらっしゃーい」

「気をつけていくんだよ」

「で、何処に行くんだ?」



 3人はなんとなく街の方を見た



「ここから片道20日くらいの海を越えて隣の国の海岸沿いの崖の上」

「遠いね〜」

「そんなでもないかな、冬までに戻れると思うから」

「計算合わないけどいってらっしゃい」

「あとよろしくね〜」

「は〜い」



 3人はスピードスケートのパシュートのように3人が縦に並んでくっついて旅に出た


 最寄りの街を迂回、街道を外れて一直線に向かって進む


 3人共足は動かしておらず地面の水分をつま先側から吸って踵から出す、泥の粒の中心より少し下を水分が動くと泥の粒が前方へ回転、その推進力を使って滑るように動いているため障壁は空気抵抗だけだ


 数時間おきに先頭を交代しながら木に突っ込もうがすり抜け藪に足腰を切られようが柔かい粘土にはなんの障壁にもならないため関係なくどんどん進んでいく



「そろそろ休憩しようか」

「そうだね」

「流石に疲れた」



 領の境線となっている山の上、森林限界を超えており草しか生えていない地面に腰をおろした



「夕方か、ちょっと降らないと凍るね」

「そうだね」

「お客さんだ、どちらかといえばワシらがお客さんか」



 でんちゃんの向いている方から白髪っぽいボサボサ頭で灰色の服を着た色白い女性が1人歩いてきた



「ありゃ、バンシーじゃね?」

「そうだね」

「人間と間違われているかの」



 全然逃げようとしないことにちょっと驚いたような不審がっているような感じで残り30メート

ル付近で腕を組んで止まった

 バンシーは妖精だが叫び声で死の宣告をする魔物として有名で人間からも魔物もちょっと避けて通りたい生き物だ



「警戒されてるね」

「呼んじゃう?」

「おーい、バンシーさんや、儂らは泥人形じゃぁ、こっちおいで~」



 でんちゃんが呼ぶとバンシーさんはスキップでやってきた



「こんにちは〜」

「お邪魔してます」



 コミュニケーション力に長けたしーちゃんが対応するようだ



「うちの魔王がさ、珍しく誰か来たから見てこいってウルサイのよ」

「なるほど〜最近人は来ないんですか?」

「山の資源も尽きちゃったみたいで麓の街が縮小しちゃってもう人が来ないんだよね〜」

「なるほどねぇ」

「魔物は増えるけどモグラとかワーム系ばっかりで強いのは大体居なくなったしさ、寂しいものよ」

「大変だ〜」

「3人のところはどうなの?」

「うちのところは魔王が大きな街の方に森を侵蝕させるように見せかけて森の遷移はあんまりさせてないから狩り場として成立してるのよね」

「へぇ〜あんたらのところはやり手だね」



 バンシーはしーちゃんの隣に腰掛けた

 話がちょっと長くなりそうで男性陣は横になって休憩だ、とろけちゃいそう



「ていうかしっかり話のできる中堅以上な感じの3人が抜け出てきて大丈夫なの?」

「私達の所属は魔の森に飲まれちゃった女神の神殿の中の土像なのよ、今は私達を作ってくれた人間の墓参りに行くところなのよ」

「フリーに近いけど居場所は決まってるのね

 ざんね~ん、スカウトしたかったわ」

「喋り相手にもならないわよ」

「いい加減さ、働かない魔王と2人っていうのに飽きちゃってね」

「ちなみにここの魔王は何?」

「うちのところは地竜、パワー馬鹿、脳まで筋金入りの筋肉バカよ」



 バンシーは人差し指と中指をクイクイット曲げて筋肉バカを強調した



「じゃあバンシーがうちの方にくれば良いんじゃない?」

「え?いいの?私自慢じゃないけど結構嫌われ者よ?」

「良いんじゃないかな、うちのとこの魔王は変態だし、来るもの拒まずで受け入れてくれると思うよ」

「神殿にも行っていいの?」

「いいと思うけど、あんまり来すぎていると他の変人の目に留まって大変かもだから気をつけてね」

「怖いね」

「まぁまぁ遊びがてら来てみたらいいよ

 じゃあそろそろ行くから帰り道でまた通るから一緒に行こうね〜」

「待ってるよ〜」



 しーちゃんの会話を聞いてどろちゃん、でんちゃんはトロけた体をシャキッと整えてパシュートのフォームに整えた



「目標は地平線に見える海!今夜には到着しておきたいのでよろしく~!」

「よろしく~」

「よろしく~」

「いってらっしゃーい」



 バンシーに別れを告げて3人は一歩目からトップスピードでダウンヒルを開始した



「あの木を使って飛ぶよ!」

「でんちゃんよろしく~」

「グライダーで行こう!」

「お願い!しまーーーーーーーーーーす」



 葉の無い根曲がりの太い木を使ってでんちゃんはスキージャンプの要領でジャンプ1番、でんちゃんは薄く広がってハンググライダーのようになりしーちゃんがコントロールする


 射出速度は時速100キロを超えていたにも関わらずしーちゃんはぐらいの角度を操作し降下させてさらに速度を上げていく、どろちゃんも体の形をランスのように変えて三位一体のコンコルドのように風を切って滑空していく


 夜ということもあり障害物や鳥の魔物等は居らずあっという間に森林地帯を抜けて浜へ着陸した



「飛ぶと速いな」

「そうね、どろちゃんのいい作戦だった」

「あんな形に変形させられるとは思わなんだがな」



 空は下が赤、中間が紫、上は濃紺の美しい時間帯で3人は海越えの前にゆっくりと休むことにした


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