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002 実はバレてた



 寂れた神殿があるのは魔の森や魔王の森と呼ばれ魔法を使う生物『魔物』の棲む魔境だ


 昔は森と人々の暮らす境界にあったが森の侵食の方が早く飲み込まれてしまってから百年近い年月が流れていた


 まだ人の領域であった頃は花が咲き乱れ子供達が駆け回り年寄りの井戸端会議場であったり若いカップルがクネクネし合ったり宵闇に紛れてカクカクしたりと静かな方が珍しいくらいだった



「いっそ神殿ごと移転しちゃう?」

「女神ちゃん、それ危なくない?」

「なんでよ、キョンちゃん?」

「怪しまれない?この跡地に皆の足跡とかモーちゃんの台座の跡とか残っちゃうけど」

「イーちゃんとプンちゃんがなんとかしてくれたりしないかな」

「無理じゃない?」「ムリー」

「我はこの場所の方が動きやすくて良い」

「モーちゃんはねぇ、剣術修行だもんね」



 モーちゃんは台座から自分で抜けて影になる枝や蔓草、木を切る仕事をしてくれているし稀に魔物相手に無双している



「あの楽しい頃に戻りたいな」

「私も楽しかったけど馬のヨダレとか犬のオシッコとかは嫌だわ、毎日ひっきりなしよ」

「あの頃は茶色と黄色だったもんね」

「エルフのおばあちゃん以外は誰も洗ってくれないから」

「あのレーザービームのおばあちゃんね!懐かしい、生きてるかな」

「エルフだし生きてるでしょ〜」



 パタパタパターっとインプが2匹戻ってきた



「誰か来るよ〜」「エルフの人〜」

「噂をすればってやつじゃない?」

「え〜ホントにー?」



 来たのは厚手の紺色のコートを羽織り実用的な革の鎧を纏った金色長髪の若い女性、風に髪がなびくと尖った耳が見える

 背が高くスレンダーで顔が整っていてとても美しい



「これか、確かに臭うな」



 エルフの女性は腰のポケットから3メートル程の八角の棒を取り出しキョンちゃんに向けた



「キョンちゃん!」

「ヒィイイイイイイ!」


「アブレーション」

『バババババババババ』

「アババババナナナナナナ〜」



 棒の先端から見えない揺れる光線が発せられキョンちゃんの鱗状に重なっていた水垢が全て剥がれ落ちツルンとした表面になり色も白くボヤケていたのがまるで金属のような光沢とクリアさを取り戻した



「よし!キレイになれば確かに里の至宝に似ているようだ

 これでババアの遺言に応えられたかな」



 呟いた若いエルフの女はキョンちゃんの表面を見て驚いた顔をした



「はっ、そうかもしれないね」



 高笑いしたままエルフの女は森の奥に進んでいった



「キョンちゃん何があったの?」

「キレイにされちゃった」



 キョンちゃんはくるっと方向を変えて全員にその姿を見せた



「ピカピカじゃない!」

「女神様!私も光らせて下さい」

「私これ以上キレイになったら連れ去られちゃう」

「私はボツボツオシリを何卒〜」


「我がその尻のデコボコ、切り落としてやろう」

「プリ尻をペッタンコにしないで!」


「「あーっはっはっは、あ〜ぁ」」



 シュールな笑いのあと話を戻した



「で?」

「なんか遠くから鏡写しの魔法で伝言飛ばした人が居たみたい『まだ死んどらんわ!』ってさ」

「じゃあまだ生きてるんじゃない、あのおばあちゃん」

「でもさ、あのおばあちゃん皆が展示されてから300年くらいずっと腰が曲がったおばあちゃんだったよね」

「何歳なんだろうね」

「あっ!キョンちゃんの裏に鏡写し来たよ!」

「えっ!読んで!」



 血のように赤くおどろおどろしい書体でキョンちゃんの裏側に文字が浮かび上がった



「『女性の歳を勘繰るなら全員殺す』ってさ」

「女神様恐ろしや!救済を!」

「私、まだ死にたくない」

「犯人は女神様とキョンちゃんです〜」



 また血の文字が浮かび上がった



「『分かった』ってさ

 え!?どろちゃんの証言が通っちゃったんじゃない!?あっ、でもちょっと待って続きがあるみたい」



 文字は続いていた



「『全員有罪、首洗って待ってろ』って」

「ヒィィィぃぃぃぃぃ」

「私はまだ死にたくないんです!」

「たった300年足らずで死にたくなかったわ」

「私達は逃げますので女神様全てを被って下され〜」

「全て我が代行してくれよう」



 …皆が首を傾げた



「モーちゃん自害するの?」

「あ、そういうことか

 ではやめておこう、少しでも長く生きていよう」

「触らぬ神に祟りなしってね」

「女神様〜、既に触ってしもうてます」

「祟られてないだけマシね」

「全ては女神様が責任を取って下され〜」

「ねぇ、また伝言来たわよ」



 血の色は変わらないがちょっと若気な丸い文字の伝言だ



「『また遊びに行くね』ってさ!いつでも来てね!待ってるよ〜」

「ねぇねぇ、皆気付いてるようで気にしてないみたいだから言うけどさ」「言っちゃうよ?」

「イーちゃんプンちゃんなぁによ?」

「このグループ念話が駄々漏れってヤバくない?」「ヤバくなぁーい!?」


 …


「「「ヤバ〜イ!」」」



 エルフのおばあちゃんには全員が魔の物だということがバレて居たらしい



「排除されなくて良かったね〜」

「ね〜」



 今日も穏やかに過ぎていった


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