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017 夜間警備員チョスナー


 夜の森を歩く垂れ目で鼻のスッと通った燻銀の色男が1人…


 私は夜間警備員チョスナー、街の壁の外を巡回するのが仕事だ

 魔物が集まっていないか野盗がいないか門が閉まったあとで戻ってきた人を救済したりと日が昇るまで仕事が尽きることはない


 そして重要なことがもう一つ、女神様の下で休憩すると身護って居てくださることの感謝を示すという重要な仕事がある


 この盾に背を預けてっと…



「また私を背もたれに寝てるよ、こいつは呑気なやつだよねぇ〜狼には据え膳だよ?」

「私のトレーニングにはうってつけの餌だがね」

「モーちゃんくらいだよ、こいつを有難がっているのはさ」

「朝までグッスリ、いい餌、いい仕事だ

 今日は森狼の群か…腕が鳴るな、音を立てずに切り刻んでやろう、参る!」



 モーちゃんは台座から自ら抜けて人間が振るうような軌道ではない異次元な捻じれ軌道で狼を片っ端から切り刻んだ

 全て討伐した後には狼の討伐の証拠である犬歯を切り取り寝ているチョスナーの手元に積み上げていく



「モーちゃんって偉いよね、こんな人間でも護ってくれるんだもん」

「このくらいのいい餌が無いと魔物は来ないからね、おっと次はゴブリンだ」

「いってらっしゃーい」

「グーグゥ、グ…フガァッフ、グー」



 グループ念話をONにしたまま女神ちゃんは寝ている…フリをしている…ハズ


 そんなことを全く気にせずモーちゃんの袈裟斬りは精度を上げていく

 狼は鋭く斬られた後に気付かずに何歩か走ってからズレて倒れるということがあった



「矢筈切りって言うんだっけ?」

「そうだ、鼻唄歌わせて3丁(約300メートル)歩かせれば妖刀に並べられるが、私はまだそれには及ばないようだ」

「だってモーちゃんは叩き斬る剣でしょ?撫で切る剣じゃないもん」

「同じ剣なら可能なはずだ、ゴブリンがまた来た、行ってくる」



 モーちゃんは日が昇るまで台座に戻ることはなく矢筈切りを目指して切り続けた



「まだ2割に届かないか…精進あるのみ」

「モーちゃんは何を目指してるの?」

「全ての剣の頂きだ」

「叩き斬る方はもう頂点としても矢筈斬りとあとは?」

「突きだ、外から突くが出血なく心臓だけを中で割るのさ」

「エグいね」

「職人仕事な感じがするだろう?」

「するけど、そもそも構造的に剣じゃなくて針とか錐とかじゃ無いと無理じゃない?」

「その理からハミ出さずして頂きには立てぬよ」

「なんとなく納得」



 キョンちゃんは途中で考えることを止めたらしい



「またゴブリンだ、今日の最後だろう、やってみよう」

「う、うん」



 腹の膨らんだ子鬼が寝てるチョスナーを起こさないように森の奥からゆっくりと近付いてくる


 そろそろ顔が見えるというところでゴブリンの左肩から斜め右下方向にぶっといモーちゃんが突き刺さり心臓ギリギリ手前からスッと数センチ入って入った傷から真っすぐ抜け出た



『ブシューーーーー、ピュー、ピュー、ピュー』


「失敗!」

「ざんねーん、私が思った通りの結果でした」

「なぜできないのか…試行錯誤は尽きない」

「単純に剣の幅でしょうよ、ザックリ刺さるときに肉を押し込みながら巻き込んで抜く時にひっくり返してるんだから血の出る方向を作っちゃってるじゃない」

「なるほど…キョンちゃんは博学だな」

「むしろ矢筈斬りがなんで出来ているのかが謎だわ」

「剣が通り過ぎる時の内側に巻き込む風圧で寄せてるんだ」

「そんな曖昧なもんでくっつけてるとか正気の沙汰じゃないね」

「ここ100年くらいの集大成と言っても過言ではあるまい」

「おっふ」

「更に100年重ねて刺突の奥義もマスター出来れば私が全ての剣の頂きに立つだろう」

「その後は?」

「魔王を斬る、そしてくっつけて生かすを繰り返すのだ」

「その行動に意味は?」

「全ての生物の生殺与奪権利を我が持つ、ということだ」

「何回か実行してしまったら鋳潰されて終わりってことだね」

「そそそそそそ、そうなるか…」

「ん?そろそろ起きるから台座に戻って」

「うむ」



 チョスナーはキョンちゃんに背もたれた時はしっかり体を起こして真っすぐの姿勢だったが段々頭が左へずり下がってきていた左肩がズルっと落ちたところで寝ぼけ眼をやっと開けた



「クッ、右の首と肩が痛い

 ハッ!今日も右手に血が…」



 自分の右手をしげしげと見つめ血を拭った



「臭い、ゴブリンの血か…ん?」



 チョスナーはのっそりと重い腰をあげ痛めた右の肩首を左手で擦りながらモーちゃんが最後にぶっ刺して噴血させたゴブリンを見た



「斜め上から真っすぐ刺したのか…

 剣の幅としては私の剣ではないとすると」



 モーちゃんを見て呟いた



「やはり無意識に抜いて私がゴブリンをやったんだろうな、手元に狼の牙も落ちていたしな

 私はなんと罰当たりなんだ、寝ぼけているとはいえ奉剣を使うなどな…」



 チョスナーは最後にキョンちゃんとモーちゃん、女神ちゃんに土下座して地面に額を当てて謝った



「申し訳ございません、また使わせて頂きましたこと、深くお詫び申し上げます

 私が勇者ではないことは明白、ですが街の平和は保たれたということで何卒ご容赦下さい〜

 はい!OK、OK!また来まーす」



 軽い感じで狼の牙をポケットにしまいゴブリンの右耳を削いで腰の袋に入れて持ち帰っていった



「あいつヤバイよね」

「アホだな」

「都合よく解釈できるって凄いよね」

「出たー女神ちゃんの事勿れ発言」

「まぁそれも良し」

「だってそうじゃなーい?運も味方で強者ってことにしておこうよ」

「そんなことしたらあいつ死ぬよー?」

「我もそうお思う」

「えー、仕方なくない?」



 チョスナーと女神ちゃんの頭の中はいい勝負をするかもしれないとキョンちゃんは考えている


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