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016 元気百倍?



 今朝は朝からタープのような天幕が張られ柔らかそうなソファと数々の料理と酒が運ばえてきていた



「そうか、今年もアレが来るのね」

「そのようね」



 アンパーソンという商会の次男坊が余りにもモテず婚期を逃している

 商会長である父がそんなアンパーソンに女性の扱いを学ばさせるため年に一度だが水商売のお姉さん方と触れ合う時間を作っているのだ



「今年こそアンパーソンが女性を射止められるか見ものだね」

「そうだね」

「我はダメだと思うぞ」

「ワシも」「私も」「俺も」

「ダメだろうな〜」「ダミかな〜」

「皆酷い!でも結果はそうだと思う」

「来たよ!」



 男性が2人天幕に入ってきた

 主役のアンパーソンとその指導役の大伯父ジェレミーだ

 父方の血が強すぎてヒゲや眉、肌の焼き具合等で区別ができる程度で顔の基本構造がほぼ同じだ

 丸い顔の真ん中に丸い鼻、丸い頬骨が並び小さい目とにっこりの口がとても優しそうに見える

 アンパーソンはツルッと剃っており光る頭が特徴的で特に顔の装飾はない

 ジェレミーは頭にハンチングを被りグレーヘアのモコモコの髪がはみ出しているし、グレーヘアでモコモコのヒゲと同じくモコモコの眉毛が可愛らしい



「今日も楽しみだね」

「そうですねアンパーソンや

 いつも言いますがいつも通りやれイケ!それイケ!の押しだけではなく、市内パトロールをする時のようにゆっくりと周りを見回しながら散歩をしてみるとか、女性を褒めたり服を褒めたり気分を上げていくようにお願いしますよ」

「分かっている、今年こそ僕の頭に女性の扱い方を叩き込むんだという気で予習もバッチリしてきているんだよ」

「悪い予感しかしませんね〜、まぁ近くで見ていますので」

「あぁ、心配かける」

「ではバティさんに声を掛けておきますね」

「頼む」



 ジェレミーに育てられただけあってアンパーソンの物腰は柔らかく子供達には「変な顔〜」と言われながら遊んでもらえているのだが成人女性にはとことんモテない


 バティはお水のお店のママでジェレミーさんの愛人でもあるバタ臭い(西洋かぶれした)オバサンだ

 顔はのっぺりした平たい縦長の顔でモンペが似合いそうだがワンピースドレスを着て顔を厚塗りに仕上げている、かといって顔の印象は変わらないのが困ったお顔だ



「アンパーソンさんいらっしゃい、今日も宜しくお願いしますね」

「ああバティさん、元気そうで何よりです

 今日も頼みますよ」

「はい、今日もよりどり揃えていますからね」

「それは楽しみですね〜」

「準備に行きますので少しお待ち下さい」



 バティさんが天幕を出て数分後ぞろぞろと薄手のネグリジェのようなドレスを来た女性を5人連れてきた



「さぁさぁ皆、今日の皆さんを呼んでくれたアンパーソンさんです

 おもてなしの時間ですが、一旦仕事は忘れて一般の女性としてアンパーソンさんのためにお話をする時間とします

 女性の扱いに慣れていないのでどういう風に声かけしたら女性が喜ぶか、リアクションも含めてお教えしてくださいね」

「「「はい」」」



 女性が1人ずつアンパーソンの座るソファに腰掛けては雑談を振っていくがアンパーソンは緊張から口元が笑ったように引き攣り言葉の数を減らしていく



「どうしたんですかぁ?」

「お役に立てて嬉しいです」

「そうだったんですねぇ〜」

「僕を食べていいよ」



 こいつやべえやつだなと思われドン引きしていく女性があとを絶たない

 5人目の女性ときに最悪な発言をした



「どうして今の職業につかれたんですか?」

「困っている人を助けたときに心が温かくなってその時気付いたんだ、僕が何の為に生まれて、何をして生きるのか、何が僕の幸せがって…ね」

「そうやって金を貸して、暴利で人を破滅させて、家族にまで取り立てに行って、挙げ句にすぐ殴る蹴る?最低!」



 アンパーソンじゃ女性から不意打ちで『バシャッ!』と顔に水を掛けられた



「どうやってギッタンギッタンにしてやろうかしら!ここで出来ないのが悔しくて仕様がないわ!」



 ものすごい剣幕で怒りをぶつけられアンパーソンさんはヘコタレた、怒鳴り声を聞いてバティが戻ってきた



「こんなに濡れてしまったらもう力は出ないよ」

「アンパーソンさん、しっかりして

 あ、そうだ!今日はアンパーソンの大好きな新顔が入った!連れてきてもいい?」

「元気100倍!アンパーソン!」

「フフッお茶目さんだこと、入ってきてー!」



 バティさんは天幕の裏の人に声をかけると1人の少し年季の入ったオバサンが入ってきた



「元気8割減、アンパーソン」

「ちょっと、アンパーソンさん見てみなさいよ

 貴方の求めている包容力ある女性よ」

「そう言われればそうかもしれませんねぇ〜」

「じゃあ、頼むわね?」

「任せてください」



 バティさんと入れ替わりでオバサンが腰掛けた



「アンパーソンさん、私の源氏名はドーキンスと言います、今日はお願いしますね」

「ドーキンスさん、よろしくお願いします」

「こんなオバサン嫌だったでしょ?」

「いえいえそんな、美しいですよ」



 ドーキンスさんとのおしゃべりは盛り上がりに盛り上がり時間いっぱいまで続いた



「そろそろお時間のようです、お話上手ですわねアンパーソンさん」

「いえいえ、ドーキンスさんが盛り上げてくれたからですよ」

「あら、お上手だこと

 では今日はこれで、今度はお店に来てくださいね」

「喜んで伺いますよ」



 ドーキンスさんが立ち上がると色黒の団子っ鼻の男が乗り込んできた



「アンパーソン、俺様のドーキンスに手を出すなど許せん!おじゃま虫めが!」

「出たな、ヴィーキン

 今日という今日は許さんぞ」

「得意のパンチか?キックか?こんなところで暴力振るったらどうなんだろうな?クックック

 俺はドーキンスとこれから同伴出勤だから、おじゃま虫は帰るんだな、じゃあな」

「バイバイ、ヴィーキン、もう顔を見せるな!」



 ドーキンスさんは嬉しそうにヴィーキンの腕に手を絡めて出て行ってしまった

 天幕のすぐそこには口紅で口を真っ赤にしたジェレミーと口紅が乱れたバティがおり視線に気付いて入ってきた



「あきらめるもんか!ドーキンスさんのために最後まで頑張るんだ!」

「そうです、その意気ですよアンパーソン」

「明日以降で同伴出勤します?」

「みんなが僕に勇気をくれる!

 今ならいける気がする、お店に行ってくる」

「アンパーソン、どこのお店に?」

「泡のところさ」

「それ!イケ!変態アンパーソン!」

「頑張ってね〜」



 アンパーソンは勢いよく飛び出していった


 ジェレミーとバティは残った食事を皿に盛り付け酒を注いで高級そうなソファに2人で腰掛けた

 食べさせ合いっこをして唇を重ねたり、組んず解れず絡み合うところを女神ちゃん等は見ていた



「毎年こんなオチでさ、1番得してるのはあの2人だよね」

「そうだね」

「また来年もするのかな」

「だろうね」

「「ハァ〜」」



 無駄に疲れた女神ちゃんとキョンちゃんだった

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