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014 秘策



「10日あれば飛竜の谷まで行けるかな?」「かな」

「何それ?」

「亜竜が子供を産む垂直で深〜い谷だよ」「故郷」

「へぇ〜イーちゃんプンちゃんはそこ出身なんだね」

「そうさ」「さ」



 街と街を繋ぐ街道から遠くに見える雲を突き破る尖った山を目指して歩き続ける、人間ではないので体力に問題はない



「歩くってさ、楽しいね!」

「最初はね」



 しーちゃんは嫌な予感がしたが案の定30分もたてば…



「遠くね?」

「まぁ遠いよね」



 嫌な予感が当たったわぁ〜と思いながら更に1時間後…



「もう良くね?遠くから眺めるで良くね?」

「良いけど遠出したくないの?」

「したいけど、もっとパーっと行きたい」

「文句言ってないで歩きなさい」

「はい」



 しーちゃんの一喝で文句は言うものの足を止めずにかなりの速度で歩き続ける



「結構人歩いてるね」

「日中だけ!」「だけ!」

「夜はどうするの?」

「交代で見張るの」「メハル」

「大変だ〜」

「眠い」「めむい」

「夜は背負ってあげるよ」

「ありがとう」「ありが とう!」



 5日後、当初の想定よりかなり前倒しで到着した


 途中、上空を亜竜や飛竜と呼ばれるワイバーン(大きいプテラノドンの顔がワニっぽくなっている魔物)の集団が通り過ぎたが襲われることもなくそのまま歩き続けたのでかなり早くなった



「アレ等の巣って危険じゃないの?」

「危険だと思うけど?」

「なんかあったら皆どうすんのよ」

「泥人形は掴めないし攻撃されても問題ない、ブレスで灼かれても表面だけだから何の問題もない」

「透明化する」「インヴィジボォ(ル)」

「なるほど〜危険なのは私だけか」

「そういうこと」

「じゃ行こうか、イーちゃんプンちゃん案内宜しく」

「心得た!」「えた!」



 砂利・草の道を歩いていて女神ちゃんはもう一つ気が付いた



「しーちゃん達さ、歩く音がしないね」

「そりゃ泥だからね」

「湿った音もしないけど」

「全部巻き込んで動けばなんてことないよ

 見て、どろちゃんなんて足上げずに滑ってるからね」

「ん?うん登りも降りも滑るが楽じゃよ」

「楽しすぎじゃん?」

「そうかも」



 イーちゃんプンちゃんも仮想実体は歩いているように見えるが実は浮いるので歩行の疲労感はなかったりする



「アレが飛竜?ワイバーン?か、デカいね〜」

「それより人間の数が多いね」



 平らな山頂から見下ろす谷はかなり深い、岩肌の引っ掛かりに木の枝で作られた頑丈そうな大きい巣にが点在し子供を守るように大人のワイバーンが覆い被さっているのが見えた

 崖下には細く流れの早い川が見えており、頂上の方にはうーっすら滝も見える

 崖上には見下ろす人間が多数おりキャラバン隊が串焼きや飲み物、グッズ等も販売しておりワイバーンは完全に見世物となっている



「観光地化してるじゃない」

「飛竜もストレスはほとんどないくらい当たり前になっちゃってるよ、お、そろそろ鳴くよ」「なく」


『ギャァッ、ギャァッ、ギャァッ!』



 子供達が親のワイバーンの翼膜を押し退けるように崖上に向かって顔を出し甲高い鳴き声をあげたら

 それを見た観光客が巣に向かって様々な肉塊を雨のように落とすと子供達がタイミング良くバクバク食べるのが見えた

 たまに親も食べてしまうし、顔面直撃で失神する子供も居て見ている分には楽しい



「餌付け?」

「そうそう」「食べたい」

「飛竜増えちゃうね」

「増えると平原の魔物がゴソッと減るんだ」「ゴーット、ヘル!」

「餌付けしてるから人間も襲わないか」

「襲うけど減るよね」「ヘル!」

「で、人間を襲うことが増えたら狩ってとするわけね」

「そうね」「ヘル!」

「人間怖いわ〜」



 ひとしきり観光したあとにイーちゃんプンちゃんは露店で串焼きを買って両手に串を持って食べ歩きながら山を降りる



「しーちゃん、カップルだらけだね」

「じゃあ谷に落とす?」

「気に入らない相手とか浮気者とかは落とされるんだよ」「ゴートゥヘル!」

「人間怖いわ〜」



 帰り道の中程で10日が経過すると女神ちゃんは色を失って白くなっていき段々と風に吹かれて粉塵になって体を失った



…「はっ!」



 女神像の女神ちゃんが気が付いた



「あれ?皆帰ってきた?かな?」

「何の話?魔王に習った『分身』早くやってみなよ」

「え?『分身』をやって観光地化した飛竜の谷に行ってきたけど、皆戻ってる?」

「女神ちゃん待ちですけど、勝手に脳内トリップしてないで『分身』しなさいよ」

「キョンちゃん待って、私わけが分からない」

「だからー、魔王の『空蝉』の魔法で分身の作り方を女神ちゃんの頭の中で練習させてもらったの

 あんただけずーっとそのまま10日間も寝たまんまだよ」

「え?あのえっと?え?私、夢見てただけ?」

「ちっ、あのクソ変態魔王め!女神ちゃんと脳内トリップデートかましやがったなぁ!

 モーちゃん、アイツの首落とす練習頑張ってね!頼むよ!?」

「相分かった!」



 結局女神ちゃんは『分身』の魔法は使えず、魔王はしーちゃんに化けて女神ちゃんの脳内で10日間のデートを楽しんだだけだった



「完全無視決め込んじゃるわぃ!」



 女神ちゃんはおこです


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