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011 変態の穴


 穴、それは突然に…



「ひゃ!」



 女神ちゃんの足元の石の床が突然に抜け、落下…しそうになりモーちゃんに捕まって耐えた



「折れる!潔く我を離して落ちるがいい」

「嫌!助けて、落ちたくない」

「なれば柄を外すか」

「ヤメて!それだけは本当に!」

「折れるからっ、あぁぁぁぁーーー…」



 奉剣クラウゼン・モー、別名崩剣クレイモアであるモーちゃんの台座の下も崩れて女神ちゃんとともに落下していった



「どうなったのよー!」

「我はもう使い物にならなそうだ」



 微かに光が差し込む穴の底、女神ちゃんは?型に曲がった落ち込んでいるモーちゃんを持っていた



「こんなものアレよ、グネグネよ

 とりゃ!ウリャ!そいや!」



 グニャ、ンギィ、パンパンパンパンパンパンパンパン



「真っ直ぐに近くなったかな」

「まぁ、歪んでいるがな」

「振るには十分ね、段々目が慣れてきたから横穴行ってみようかな」

「普通に登った方がいいのでは?」

「土を掻いて私が登れるとでも?」

「失礼しました」



 刀身が波打つ長大な剣を肩に担いで身長3メートルの女神像がトンネルを進むとちょっとした大広間に出た



「私が普通に動けるとか結構な広さじゃない?」

「天井までは私を突き上げても全然届かないくらいあるな」

「なんか居るよ〜」

「ブモオオオオオオ」



 頭の左右に2本の角を生やした二足歩行の牛さんだ



「ミノタウロスだな、ということはココはダンジョンか」

「祝!初ダンジョン!」

「そんなこと言ってるうちにこっちくるぞ」

「モーちゃんよろしく」

「我は今自分じゃまともに動けない、とりあえず刺してくれればいい」

「うん、分かった」



 女神ちゃんは右手にモーちゃんを持ち右足軸に大きく体を捻って背中をミノタウロスにみせ左足を地面に滑らせるようにスタンスをとって腰の回転を腕と手にしっかり伝えて指先までしっかりと剣の柄を押し切って投げた


 3メートルの巨体で竜巻の如く捻って投げた剣は天井に斜めに刺さった



「ゴメン」

「おい!ミノタウロス行ったぞ」

「じゃ投げるから宜しくね」

「は?」



 自分より少し小さいくらいのミノタウロスの体当たりを肘から下でかちあげるように受けて腰を落とし腰巻きを掴んで天井に刺さるモーちゃんに向かって放り投げた


 天井までは7メートル少々あったが天井に刺さるくらいの勢いでミノタウロスは飛ばされモーちゃんの刃に頭が数センチ入った



「OK!?」

「十分だ」



 頭に剣が刺さったというよりは剣がくっついたままミノタウロスは地面に降り立ったが剣の刺さっている額から血が噴き出しそのまま剣が深く深くめり込んでいく

 ミノタウロスは剣の柄を持って引き抜こうとするが剣が動くと更に血が噴き出しすぐに力が入らなくなり意識を失った

 ミノタウロスの体は血が抜けていくごとに小さくなり最後にはモーちゃん残して消えてしまった



「モーちゃんナイス!」

「投げるなら正確にだ、力は要らない」

「今度からそうする、あれ?歪みがキレイになったね」

「魂吸ったからな、回復したのさ」

「キモ」

「肝臓は無いぞ」

「肝臓は内臓!ダジャレ、寒ぅ」

「石像でなければ刺さるんだがな〜」

「イーちゃんでもプンちゃんでも笑いのツボには刺さらないってぇ〜」

「そういうことじゃない、もういい」



 女神ちゃんに無駄に力があるのは3メートルの石像(白い硬質な石)が重たいからに他ならない

 ふわりとした服を着た格好をしているが中身は抉られていないので体積的には3メートルの全裸の女性が3〜4人分程もある、3メートルの女性の標準体重は約200キロ、それが3人分として600キロ、石像に使う石の比重は大体2.5〜2.8程度なので総重量は1.6トン

 対してミノタウロスは筋骨隆々で2.5メートルの巨体といえど素早く動けるとするとイイトコロ400キロ(0.4トン)くらいで女神ちゃんの4分の1だ

 体重40キロの女性が2才児を高い高いする程度でしかなく、それを全力でやったら怖いことになるだろう


 理屈はね?



「今、怖いことを考えてしまった」

「なに?」

「いや気にするな、さっきのミノタウロスの悲劇を考えてしまっただけだ」

「ふーん」



 女神ちゃんがキレイになったモーちゃんを担いで天井をガリガリ削りながら進む

 通路では赤く光る目がいっぱい付いている狼を踏み潰したり、天井で後方奇襲を掛けようとしていた蜘蛛の魔物をモーちゃんで知らず知らず切り裂いたり、生身なら通れない青い炎が揺らめく油の道を平然と歩いて奥へ奥へと進んでいく



「今度は大きい扉があるよー」

「ダンジョンのガーディアンの部屋じゃないか?」

「なにそれ?」

「ダンジョンの核を守護する最強の魔物が居るんだ」

「倒したら外に出れる?」

「倒した先にあるダンジョンの核に触れて外に出るように願えばいい筈だ」

「じゃあ行こうか」

「そうだな」



 ガタン、ニィィィィと油の足りないドアのヒン

ジが歯の痒くなるような音を響かせた、女神ちゃんは顎に梅干しを作り唇を鼻に寄せ眉間にシワを寄せて嫌いな音を耐えきった



「石像?」

「あれ、女神ちゃんそっくりだな」



 薄暗い部屋に居たのは一体の石像、女神ちゃんを少し小さくして人間サイズに落としたレプリカ像と言っても良いようなモノだった



「侵入者、排除する」

「ニセモノを排除してやるよ、刃毀れするまでタコ殴りじゃああああああ!」

「ヤメ、マジでーうぁやめええええ」



 小さい石像を女神ちゃんがモーちゃんを使ってかち割ろうと全力で叩きつける



『ガキンッ』「ヤメロてええ」

『ガンガン、キィィィィィィ』「欠ける!」

「ギィイイイン、ギャリギャリ」「ちょわ!」

『ガィン、ガィン、ガィン、ガィン、ガィン』「ちょ、まぁてよ」



 小さい石像を滅多打ちにしてモーちゃんが少しずつノコギリになってきた頃、ようやく援軍がやってきた



「女神様ーーーーー!お止め下さい!」


「ぬ、魔王?」

「もしかして…」



 石像と女神ちゃんの間に割って入って魔王が土下座した

 ※注、女神ちゃんと魔王は念話チャットで繋がっていませんので話は通じていません



「すみません、ほんの出来心なんです!」


「どいうこと?」


「あの、その、余りにも振り向いて貰えないもんでなんとなくダンジョンも含めてあの、あ、ま、なんていうか石像を作ってしまいまして」


「え?彫刻したの?」


「近くで愛でたいなと思って完コピしてしまってちょっと恥ずかしくも嬉しかったと言いますか、はい」


「ん?」

「女神ちゃん、魔王はソナタが好きで好きで堪らず同じ石像を作ってしまい、動かしてみたくてダンジョンの守護者にして自分の思うように動かして遊んでいたということだな」

「遊びなら良いんじゃない?」

「全く自分と同じ顔の奴が体を触られてたり好きでもない奴とイチャイチャしているのを想像してどうだ?」

「鳥肌が立つかな、キショイ」

「そういうことをアイツは此処でしていたんだ

 誰にも見つからないようにダンジョンに配下の魔物を配置して罠まで作ってな」

「超キモい」

「まぁそういうことだ」

「モーちゃん、あの石像壊せないの?」

「出来ると思うが切りつけてくれるか?」

「あい、わがった!」



 魔王は脂っこい冷や汗をダラダラ流しながら取り繕うような言い訳を繰り返し言いながら土下座から五体投地へ移行していた


 女神ちゃんは魔王の頭を丁度いい踏み台にして両手持ちしたモーちゃんを自分そっくりな石像に脳天唐竹割りに一閃した



「あっ」


「やったわ」

「上手いじゃないか」

「ありがとう」



 石像を砕き、奥の間の白い宝玉に触れながら神殿に戻ること、神殿の地面を修復することを願って帰還した



「あ、おかえり女神ちゃん

 魔王に合わなかった?焦って飛び込んで行ったんだよ」

「遭ったよ、アイツ超キモいんだよ

 私ソックリな石像作ってイチャイチャしてたんだ」

「えっ!超キモいですけどぉ〜」

「でしょ?もう完無視よ」

「そうね」



 それ以来、神殿の誰も魔王と口を聞かなくなってしまったそうな



「だって、好きなんだもん仕様がないじゃないか」



 ストーキングだけでタッチングして来ない魔王のことを下半身無双の爺さんよりはまだ良いなと思うモーちゃんであった

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