001 毎日が暇で刺激がほしい
「女神ちゃん全然人来ないね〜」
「そだね〜キョンちゃん」
そう念話で会話をしているのは森の中の屋根の朽ちた小さな白い神殿に立つ白い女神像とその前に置いてある鏡面仕上げされた同じく白い丸い盾だ
女神像は柔らかそうなフンワリとした衣装を来て何でも受け入れようと両手を柔らかく広げ軽く下を向いて微笑んでいる3メートルほどの石像だ
盾のキョンちゃんは直径1メートルほどある大きな石っぽい盾で結構重たい
「でんちゃん、今日は何する?」
「しーちゃんとどろちゃんはなにかしたいことないの?」
「えぇ〜しりとりとか?」
「僕は今日、顔を上げといてみようかなぁ」
「ずっちーな!ずっちーな!私も上げたい」
「でんちゃんだけ上向いてるのが一番ズルいよ」
「だってそういう形なんだもん、いいだろ?」
「いいな〜」「おれも上げてたいな〜」
でんちゃんとしーちゃん、どろちゃんは女神像の下で女神の威厳を出すために作られた泥人形3人のだ
でんちゃんは顔を上げて手を伸ばし女神に縋ろうとする若い男
しーちゃんは女神の降臨に感動し女の子座りで目の涙を拭うほっかむりのオバチャン
どろちゃんは土下座し額を地面に押し当てているお爺さんだ
どろちゃんが頭を上げたら面白い格好になるのでたまに動いて笑いを誘っている
「モーちゃんはさ、なにかしたいこと無いの?」
「剣の修行」
「そんな修行したってさ剣士としては最強でしょ?だって持つ人無しで動けるんだものさ」
「本体を叩かれたらアウトだから」
「真面目かよ」
キョンちゃんと女神像の間の台座に刺さっている奉剣クラウゼン・モーという剣に話を振ったが真面目回答過ぎて面白くなかった
奉剣クラウゼン・モーはどこかの騎士団の当代最強と詠われた騎士団長が使っていたソウルイーターという実体のない魔物も斬れるという剣で柄までいれると2メートル近い長さがある
しかし他に使える人が居ない超重量の大剣だったため騎士団長の遺言で奉納された剣だ
奉納された時には既に意識を持ち自分一人で自由に動けたため元々居た5人には『誰にも使われたくなかったから抵抗したんだな』ということがバレてしまっている
「私などよりもイーちゃんとプンちゃんに聞いては?」
「イーちゃん、プンちゃんなんか無い?」
「僕達はお客さんの気配がしたら戻って来るからね」
「そうだね、みんな良いようにしててよ」
「く〜いいな〜自由に動けてさ」
「良いでしょ〜」「良いでしょ〜」
イーちゃんとプンちゃんは神殿の屋根を支えていた8本のうちで残った女神の後ろの2本の柱の根本に居る2体の天使像だ
元々天使像は無かったが森を飛んでいたインプ(コウモリの羽のついた小鬼)が面白半分で擬態して定住しただけで自由に動き回れるのが特徴、柱の根元を回り込んで見下さないと見つけられないような位置にいるので居てもいなくても良い
登場人物
女神ちゃん 後方
守護女神像 = リビングスタチュー
性格:大雑把
でんちゃん しーちゃん どろちゃん 女神と剣の間
女神を敬う人々の朽ちた像 = 泥人形
性格:でんちゃん=ロマンチスト
しーちゃん=小心者
どろちゃん=お笑い担当
キョンちゃん 先頭
真実を映す鏡 = トリックデーモン
性格:いたずらっ子
モーちゃん キョンちゃんの後ろ
奉剣クラウゼン・モー = ソウルイーター
性格:真面目 努力家
イーちゃん プンチャン 女神の後ろの柱の陰
神殿の柱の根元の天使 = インプ
性格:イーちゃん=気分屋
プンちゃん=真似っ子
「若いカップルが来るよ〜」「来るよ〜」
半透明の2匹のインプが遠くから戻ってきた
「カ、カ、カ、カ、カップル!なんでこんなところに?」
「あれじゃない?あの〜ほら、アレの前にするアレよ」
「女神ちゃんアレしか言ってないでなんなのよ」
「キョンちゃん!あの契約を結ぶ的なアレよ」
「あ〜結婚前のプロポーズってこと?」
「そう!それそれ!」
「私の娘を連れて行かんでくれ、この通りだぁ」
「私、あんなところに売られていきたくないわ」
「何卒、私の許嫁なんです、頼みますから!」
泥人形のでんちゃんが女神を取り立てのヤクザと見立てて小芝居を始めてしーちゃんとでんちゃんも乗っかってきた
女神はニヤニヤっとしてしまい顔を戻すのに必死になっていた
「どろちゃん上手い!形もそのまんまでイケてる!」
「でしょー」
「ちょっとぉ、キョンちゃん本番で悪ノリしないでよ?」
「それはどうかな?」
「あっ、来た来た、なんだろう緊張しる」
「噛んだ」「噛んだね」「ププ」「緊張感に欠ける」「笑わないのー!」
そんな話をしていると草を踏みしめる2つの足音が聞こえてきた
女神は無駄に緊張し顔を強張らせて噛んだが茶化されたこともあって自然な笑顔になれていた
「良かった、今日の女神様は柔らかい笑顔をしていらっしゃる」
「そうね、私達を祝福してくれているみたい」
女神から見て左に目が細い無精髭のちょっと薄汚れたオッサンと右に白いベールを羽織った若草色のワンピースの若い女の子のカップルだ
2人は手を繋いで笑顔で向き合い微笑んでから女神の方へ向き直った
「キョンちゃんさ、あの男の右の口角だけちょこちょこ上がるんだけどなんだか年齢差的にも怪しくない?」
「女神ちゃんもそう思う?ちょっと読心してみるね」
「よろしく」
カップルはキョンちゃんの前で向かい合いオッサンが跪いた
「僕のお嫁さんになってくれますか?」
「は…え?」
盾のキョンちゃんと剣のモーちゃんがカタカタ揺れ始めた
「キョンちゃんモーちゃんどうしたの?」
「女の方が詐欺師だった」
「あの女からヤバい臭いがプンプンする、声の掛け方、仕草、何なら顔まで造り物だ」
「ええええええええ!悲しい」
女の子が女神像をふと見ると右目だけが動いたように見えた
「キャアアアアアアアアア!」
「どうしたんだい?」
「女神像、女神像がぁあああ」
「なんとも無い、良い顔をしておられるよ」
男が見た時には柔らかい表情を、女が見た時には睨みつけるように女神ちゃんはイタズラをしていた
「私、ここでは無理!本当にムリなんだからぁ!」
「ちょっま…その顔どうしたんだい!?」
「え?」
若い女の子の顔がどんどんと老け小ジワが浮き上がってきた、女はキョンちゃんに映った自分の顔をみて両手で顔を覆った
「どういうこと!?魔法はまだ効いてるはずなのに」
「魔法ってなんのことだ!?その顔は!?」
「煩いわね!隠し事の1つや2つくらい女ならあるわよ!」
「そういう問題じゃないだろ!?俺いや、俺より老けた顔してるじゃないか!?」
「だから何よ!私を好いてたなら良いじゃない!」
「騙したのか!キレイな顔は魔法で作ってたのか!?俺の金はそんなことに消えていたのか!」
「あんなはした金でこんな魔法維持できないわよ!馬鹿じゃないの!?」
「何だと!?いや、もういい、俺は帰る、一人で勝手に帰ってくれ」
「魔の森を女一人でなんてムリよ!あ…」
キョンちゃんに向いていた女が振り返った時には男は物音すら立てずに風のように消えていた
「あのロリエロ親父め、大した金も出さずに結婚だなんだと
大体こんな女神像のところでプロポーズなんて今どき古いのよね〜、胡散臭いボロい神殿だこと何も金になるようなものが無いじゃない」
女は散々に喚き散らして大きなため息をついて女神像に背を向けて貧乏揺すりをし始めた
「イーちゃん、アンチマジックの魔法使ったでしょ?」
「キョンちゃんにはバレたか」
「プンちゃんもトゥルーの魔法使ったでしょ?」
「バレた」
「二人共最高」
「「イェーッハ!」」
仲間達で浮かれて笑っている時に女が振り返ってしまった、といっても顔が笑っているの女神像だけだが…
「みぃたぁなーーーーーーーー!」
「ギャアアアアアアアアア」
女神が剣を引き抜き表情を強張らせて動き始めたのを見た女は恐怖の余り眼球を上転させて泡を吹いて失神した
「あーらら」
「女神様、お鎮まり下さい」
「この世はもう終わりなのね」
「私をお供させて下さい!」
…
「でんちゃんのオチがイマイチだったなぁ〜」
「振る方は楽だよな!」
「一番楽なのは乗っかるだけのしーちゃんだよ」
「みぃるぅなーーーーーー!」
「「ギャアアアアアア」」
女神のノリに悪ふざけが重なってワイワイ、傍から見ている分には小学生レベルの内容だが彼女らはとても楽しかった
「あーぁ、面白かった」
「女神ちゃん、明日何する?」
「え〜キョンちゃんもう明日の話するのぉ?」
「じゃあこれから何する?」
「アレ(詐欺師の女)を切り刻むとか?」
「バンシーに成りそうで嫌だ」
「モーちゃんがバンシーも切れば良いじゃない」
「嫌だ、錆びる」
「どうせ錆びない金属じゃなーい」
「まぁそうだな」
他愛もない話をしていると女が目を覚ました
「あ」「あ」
誰の声か、非難するためか、注意するためだったのか女が体を起こした瞬間の一声だった
女は森に棲む叫びのカラスという魔物に鷲掴みにされて遥か上空へ連れ去られ落とされた
「キャアアアァァァーーー」『ドジャー』
そして2度、3度と落とされ骨という骨が砕け散ったあとで飲まれたようだ
「大変でしたな〜」
「そうじゃな〜」
「女神様が元に戻られた!」
「これせ世界は平和に戻るのね」
「Hi Five!」
…
「今回もでんちゃんがダメだったね」
「ええい!オチは難しいんだよ」
新作開始、初ハイファンタジー
内容ダラダラのを大体1話完結でやっていく予定です
仕事漬けの薄給ブラック企業勤務ですので
誤字脱字、言い回しについては確認しきれて居ません!
かなり寝惚けて書いていますので「あん?」となるとは思いますが、なんとな~くで理解していただくようお願いします