04 陽菜子と仲良くなるために
その日から陽菜子はちょっとしたクラスのアイドルになった
可愛いのに嫌味がなく女子たちも
和気あいあいと話していたし
男子たちも僕たち以外は可愛い可愛いと
ちやほやしていた
僕たちは僕たちで
最初は違和感があったが段々と馴れてきたのか
少しずつ陽菜子と接する機会が増えた
透き通るような大人しい見た目とは裏腹に
陽菜子はかなりの元気キャラだった
部活は園芸部に入ったようで
そこでも先輩後輩から人気があるみたいだ
うちのクラスには花屋の娘の璃々がいる
花が好きな陽菜子は特に璃々と仲が良いようで
いつも二人はくっついている
璃々もやはり園芸部で共通の話題もやはり花だ
ある日の昼休み
何の花が好きかという話題のようで
あれもこれもとキャッキャしている二人を
ぼーっと眺めつつ放課後の部活に向けて間食を摂っていた
「私は~チューリップかな~」
飲み込もうとしていたおむすびが一気に上がってきて
むせかえったところを二人が振り返って見ていた
そのタイミングで好きな花の話題は終わってしまったが
こちらとしてはひなのことを思い出すことになってしまった
世の中のひなという名前の人間は
皆往々にしてチューリップが好きなんだろうか
そんな風に生まれる前にインプットされているのか?
しっかし陽菜子は不思議な女の子だ
何もかもがひなに似ている
まるで本人なのではないかと思うくらいに
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
陽菜子に出会ってから密かに花について
自分なりに知識を蓄え始めた
季節の花や花言葉、育て方など…
少しでも陽菜子に近づきたかった
恋をしているのかと言われればそれはなんだか違う気がするが
なぜか陽菜子に興味があったのだ
普段関わることがあまりないため
万に一つの可能性がないわけではないが
もしも話しかけられても話題に困らないように
そんな意味不明な理由から
全く興味のなかった園芸を調べるようになった
試しに休日はプランターに花を植えてみたり
庭に野菜の種を植えてみたりした
母はそんな僕を不思議そうな気味悪そうな
なんとも言えない表情で半笑いしながら様子を見つつ
たまに口出しをしながら手伝ってくれる
久しぶりの母との交流に少し懐かしさが込み上げた
暇を持て余していた父は縁側でビールを呑みつつ
お前が土いじりなんて珍しいじゃねぇーかよー
と冷やかし半分に声をかけてきた
ホント不器用なんだから〜と言う母も
お前が花なんて気持ちわりぃなぁ〜と言う父も
なんだかんだで嬉しそうだった
たまにはこういう親孝行もしようと思う
自分の為にやったことが
結果として両親を喜ばすことになり
ちょっと気恥ずかしかった