第弐話 粘土と赤ワイン
初級女神のゆきちゃんが、バイトしてる茶屋の前を、自転車で帰宅していると、
「ジャンプ♪」
と、ゆきちゃんが、自転車の後ろに飛び乗ってきた。
「やっとバイト終わったよ♪はるとくん、あたしの家までお願い!」
「そんな勝手な!」と心の表面で思ったけど、心の奥はるんるん。
だって、彼女が無邪気に胸をぼくの背中に押し付けてくるんだもん。
「はるとくん、あたしね、理想に近づく方法を見つけたの」
「理想?」
「そう、書庫の『美少女にも解る鬼道百手』って本に、その方法が書いてあったの。
だからはるとくんは、今日、あたしに殺されて♪」
「え!?」
「鬼道の後継者として、あたしはあなたを殺さないといけないの。お願いあたしに殺されて」
「そ・・そんな・・・・」
そんな訳で、僕は殺害予告されながらも、ノコノコと彼女の部屋に上がってしまった。惚れた弱みの性と、まさか殺さないだろうと言う甘い気持ちからだ。
「そ・れ・で・は・こ・ろ・す・ね」
ゆきちゃんは楽しそうだが、言葉は物騒だ。
「さっ、服を脱いで、」
「服を脱ぐ?」
と、照れる僕がに、
「今夜、死ぬんだから、もう良いでしょう」
と容赦のない言葉を言った。
「さあ、土に還るのよ」
ゆきちゃんがそう言うと、僕は粘土に変身した。
血を意味する赤ワインで、粘土は真っ赤に染められ、象徴的な意味で僕は死んだ。
僕の意識はと言うと、多分生霊の状態で、ふわふわ浮いている感じだ。
「象徴的な死か・・・・そう言う事ね」
ぼくはほっとした。
「今日は徹夜になりそう」
ゆきちゃんは、粘土をモミモミとほぐした。
なんだろう、体の芯まで揉み解されていく。
ぼくの中の邪念が解かれている。
彼女は、揉み解された粘土に、まずハーブを混ぜた。
意識が飛びそうなほど、スースーする。
次に、ヨモギの香りがする薬草を混ぜた。
そして、鍋の中でぐつぐつ煮立っている、一見ビーフシチューだけど、かなり怪しげなスープを、粘土に丁寧に、なじませていく。
ゆきちゃんは、何かのサイズを書いたノートをあけ、
「うん、うん、なるほど・・・」
そう呟くと、粘土のぼくを掴み製作に取り掛かった。
「何を作る気?」
粘土の僕の問いかけに
「あたしの理想・・・・後は出来てからのお楽しみ」
としか答えてはくれなかった。
でも、答えはすぐに解った。
彼女がまず最初に手がけたのが、足だったから、
多分、人形だろう。
そして、腰の部分・・・・間違いなく男子バージョンだ。
「あたしが作るあなたの大事な所・・・」
ゆきちゃんはニヤニヤしながら言った。
「あなたの大事な所?って事は、僕を作ってるの?」
「ふふふっ、あなたの大事な所は今、あたしの手の中・・・」
「可愛い顔して、なんて事を言うんですか!」
「未来を作る大事な所よ、そして、その未来は今あたしの手の中。
エッチー意味だけじゃ無いんだよ、少年♪」
怖いくらい透き通るような清楚な顔のゆきちゃんは、マジな表情で言った。
「う・・・うん」
「安易な未来じゃない。破滅を乗り越える力が必要なの」
「う・・・うん」
僕のの胴体と手足、そして、顔が出来上がった頃に、屋根裏部屋の天窓から朝の光が、入ってきた。
「・・・出来た、私の理想が・・・さあ、後は人の姿に戻すだけ」
ゆきちゃんが何かを呟くと、僕の身体に血が流れ始め、神経が回復した。
そして、僕が完全に人の身体に戻ると、ゆきちゃんは何かに気づき、叫んだ。
「変態!いつまで裸でいる気?ここは女の子部屋だよ!」
とゆきちゃんは体操服を貸してくれた。
そして自分の身体を確かめた。
「あたしが作った理想のあなた、あなたは再構成されたの」
ゆきちゃんは、そう言うと僕の背中にそっと触れた。
「僕には何がどう変わったのか・・解らないけど」
「素人には解らないかも、でもね、あなたは確実に、私の手によって変わったの」
ゆきちゃんは、自信満々言いながら、自分の手を見つめ、言葉を繰り返した。
「そう・・・・私の手によって変わったの・・・」
僕は、ゆきちゃんの綺麗な手を見つめた。
「こんなに綺麗な手が、僕を変えたんだ」と思うと、心が躍った。
「あなたは、後世の歴史家が、進化と呼ぶかも知れないぐらい変わったんだよ。
どんな破滅が起ころうとも、生き残れる精神力と身体に」
「えっホントに!?」
「世界を滅ぼしかねない程の最強の人間に・・・」
「それは・・・かなり困るけど・・・」
「ただ腕力は最弱のままだけど」
「えっ!?そんな・・・」
つづく




