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74話 予期せぬ覚醒

自虐系の上位に位置するスキル、黒闇天(こくあんてん)


王の資質と同列、攻撃力だけを考えるのであればそれすらも凌ぐ破格のスキル。

『seek the crown』の最強格のスキルのうちの1つをまさかモンスターが使うとは。


モンスタースキルとしての効果は知らないが、キャラクタースキルと内容が同じなら絶望的だ。

HPMP共に総量の50パーセントを使用するが、全ステータスが50パーセントアップ。更に物理ダメージ20パーセント上昇。


効果時間は60秒とさほど長くはないが、それでも使い手が問題だ。


王の資質を使ってやっと、コイツのステータスを凌駕するかしないかなのに、それが更に1,5倍になるわけだ。


ステータスだけで判断するのであれば、敗戦は濃厚。


――逆に60秒凌げばアイツのほうが不利になる。だが、逃げ回って弱ったコイツに勝ったとして……俺は納得するのだろうか。


「――逃げるのは1度で十分だ」


コイツの最強をねじ伏せてやる。


どす黒いオーラに包まれたオピオタウロスは、大斧を持つとそれを俺に向けてぶん投げた。


回転しながら迫る大斧を補助するように、黒雷がほとばしる。


跳躍してそれを躱すと、毒牙をオピオタウロスに向かって投擲。

右腕を振り上げ弾こうとした瞬間、影化で毒牙の影に移動し毒牙を掴み、タイミングを遅らせて振り抜かれた腕に突き刺す。


が、黒闇天(こくあんてん)のスキルのせいか刃が深くまで刺さらない。


――硬いッ。


それは即座にバックステップで距離をとると、数瞬前に俺がいた場所には黒雷が放たれていた。


速度はまだ俺の方が高い。それだけが唯一の救いだ。


【スキル 疾風迅雷Lv2を使用します】


【ステータスがアップしました】


俺はできる限り速度を高め、双剣を握る手に力を入れ大地を蹴った。


「――くそがあああぁぁぁぁッ!」


自分を奮い立たし縦横無尽に双剣を振るう。

宿敵の鮮血が飛び散り、傷を増やしていく。


俺の顔面には巨大な拳がめり込むが、それでも構わずにただひたすらに、宿敵を刻む。

執着の魔に取り憑かれたように、瀕死になりながらも影縫を、毒牙を振るい続ける。


強烈なボディブローが腹を打つが、不思議と衝撃も痛みもない。

獲得してから初めて称号の特殊効果が発動したらしい。低確率で攻撃を無効化。

今まで被弾することはそう多くなかったから忘れていたが、今の一撃を無効化したのはかなりでかい。


その拳を斬り裂き、新たな赤を生む。


――これじゃあダメだ。火力が足りないッ。


オピオタウロスのHPは減っている。それは間違いない。だがそれと同時にコイツはHP自動回復で傷を癒している。


俺は相手の顔面を蹴りつけ、距離を取った。


「クソッ、化け物め」


今の乱舞の最中に被弾したのは3発。たったそれだけで俺のHPは残り1割程に減っている。

対する相手のHPは恐らく3割程度。黒闇天の分を除いたらほとんど効いていない。


ポーションを全て飲み干し瓶を投げるように捨てる。もうこれ以上俺には回復する手段がない。これで決められなければ、負けるのは俺だ。


オピオタウロスは自身の身体に傷を付けた俺を睨み、咆哮と共に駆け出した。

空間全体を揺らすその叫びに呼応するかのように、天からは無差別に黒雷が降り注ぐ。


そして黒雷を纏う双角を俺に向けると――。


「――なッ! くそったれが」


嫌な予感がして一瞬早く横にズレていたから命はあったが、オピオタウロスから俺の真横へと一直線に極大の雷撃が放たれ、深々と大地を抉り壁を破壊。

それを受け止めた壁は軽く数十メートルは抉れて、小規模の洞窟のようになっていた。


オピオタウロスは岩に突き刺さった大斧を引き抜き、再び俺へ迫る。


【スキル 疾風迅雷Lv2を使用します】


【ステータスがアップしました】


もはやコイツと打ち合うのには王の資質だけでは足りない。

この馬鹿げた膂力からくる大斧の破壊的な攻撃は、まともにくらえば最悪一撃で終わる可能性すらある。


疾風迅雷を使ったからと言って大してステータスが上がる訳ではないが、たった数パーセントの速度が命取りになる。


大斧の横薙ぎの一撃を双剣を叩きつけ防ぐ。

黒雷がほとばしり、炎と氷が舞う。


「こんな所で……こんな所で立ち止まってる暇はねぇんだよッ!」


【スキル 大罪へ至る者Lv9を使用します】


【ステータスがアップしました】


【スキル 大罪へ至る者がレベルアップし、上限レベルに到達しました。スキルポイントを30使用し、対象のスキルと統合が可能です】


【取得済み統合可能スキル 王の資質Lv6】


「今より強くなれるのならなんでもいいッ!」


俺は全てのスキルポイントを使い果たし、スキルを統合した。


【スキルを統合します】


【王の資質Lv6と大罪へ至る者Lv10が統合し、新たにエクストラスキル 原罪の王Lv6を取得】


【エクストラスキル 原罪の王は攻撃スキルも含まれます】


【ステータスが変化します。王の資質、大罪へ至る者の双方が発動中のため、原罪の王も自動的に発動されます】


【スキル 原罪の王の取得により称号 原初の罪人を獲得】


【称号は1種類のみ適応されます。自動的にステータス補正率の高いものが自動的に反映されます】


【ステータスがアップしました】


おびただしい数のウィンドウが表示されると同時に、全身から力が溢れるような感覚を覚える。


影縫の一振が、毒牙の一振が宿敵の肉を裂き、骨を断つ。


だがそれでも、オピオタウロスは怯まない。

幾度も打ち合い、数秒が数時間のように感じる。


相手の大斧が俺の肩に突き刺さり、それと同時に毒牙は相手の脇腹へと深く刺さる。

お互いがお互い、自身の最強で敵を屠る事だけを考えている。


殴られ斬り裂かれようとも、両者の腕は止まることを知らない。


そうして永遠とも呼べる数秒の間に数十の剣戟を交わし――。


【R6サマエルの毒牙の耐久値が限界を迎えました】


オピオタウロスの最大の一撃を受けた毒牙が遂に砕けた瞬間だった。

残るは影縫のみとなったが、毒牙はオピオタウロスの大振りの一撃をギリギリで防いでくれた。


ほんの一瞬、相手の動きが止まった。


【エクストラスキル 原罪の王の攻撃スキル王の一撃(レクスラーミナ)を使用します】


影縫を金色に輝く光が包み込む。

スキルの内容はわからない。だが身体は勝手に動いている。


「――――おらあああぁぁぁぁッ!」


一閃。


煌めく斬撃は巨大化し、目の前の宿敵を襲う。

大斧でそれを防ぐが、触れた直後には音も立てずに砕け散り――。


金色の斬撃はオピオタウロスを両断した。


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