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73話 破滅の者

【ユニークモンスター:破滅の者 オピオタウロスLv61】


通常のミノタウロスよりも一回り大きい体躯。

亜種とも違う淡く光る白銀の体毛。

禍々しい程に赤い隻眼。


ただそこにいるだけで他とは違う圧倒的なまでの存在感。

あの時のそれを遥かに凌駕して凶悪だった。


俺のプレイした中でユニークモンスターと遭遇した事はない。

そしてユニークモンスターなど都市伝説の類だと思っていた。


いつかの攻略用の掲示板で、ユニークモンスターと遭遇しメインパーティが全滅した、という内容の物を見た事がある。


その時は俺を含めた全員がデマの情報だと一蹴した。

それもそうだろう。数100万というプライヤーがいる中で、遭遇したのはソイツただ1人。

証拠の画像も動画もなく信じられるような話ではない。


全員に叩かれたソイツはそれ以降、掲示板で見かけることは無かったが、どうやら間違っていたのは俺達の方らしい。


見たことも、聞いたこともないモンスターだ。

それにウィンドウがユニークモンスターと表示している以上、疑う余地はない。


――だがだからなんだ。相手が強いのなんか最初から分かりきっている。お互い強くなって丁度いいじゃねぇか。


「久しぶりだな牛野郎。随分派手にイメチェンしたんだな。約束通りてめぇをぶっ殺しに来たぜ」


オピオタウロスは両手で斧を持ち、呼吸を荒くしてゆっくりと距離を詰めてくる。


焦るな。まずはスキルなしでどこまでやれるか……。


知らないモンスターだが、ミノタウロスの系統ならば基本的な攻撃の動作は大きくは変わらないはず。

双角に纏う雷を見る限り、遠中距離の攻撃も頭に入れるべきか。


ユニークモンスターと言えど首を斬り落とせば死ぬはずだ。


宿敵とも呼べるモンスターを前に、高鳴る鼓動を感じる。だがただの激情で刃を振るうのは下策。

いつも通りやれば問題は無い。


――先手必勝だッ!


俺は影化で一瞬にして背後に移動し、あの日と同じ様にうなじに影縫を突き立てる。


相手はまだ反応していない。

白く淡い光を放つ体毛の鎧を貫き、皮膚を裂き肉を斬る。

深紅の血液が噴射し、刃は宿敵に傷をつけた。


それでもオピオタウロスは振り返ろうとすらしないでただ前を向いている。

しかし、次の瞬間――。


「――ッ!」


双角の雷が一瞬強く発光。そしてオピオタウロスの身体全体から稲妻が走る。

影縫を伝い電撃は俺に感電し、ほんのわずかな時間身体の動きが止まる。


それを狙ったかのように、オピオタウロスの丸太のように太い右腕が俺の腹部に直撃する。

電撃のせいで避けることも防御する事もできず、俺の身体は凄まじい衝撃と共に吹き飛び、胃液が逆流し吐瀉物を撒き散らす。


「ガハッ……馬鹿力め。たった一撃でHPがかなり減っちまった」


およそ1割。素手の一撃で減らされた割合だ。

これが斧による斬撃ならまだ良かったが、振り回しただけの腕でこのダメージは笑えない。


オピオタウロスは雄叫びを上げ、遠距離にも関わらず俺に向けて大斧を振りかざした。それと同時に双角が一瞬光る。


「――雷撃かッ!」


予想通り、大斧を振り下ろした瞬間、その軌道を延長するかのように雷鳴を轟かせ、雷撃が放たれる。


――さっきは影縫を通してダメージをくらった。防御無視の攻撃か。


俺はその範囲から逃れるため、比較的空間に余裕のある右方向に駆け出す。


放たれた雷撃は地面を抉り、壁を破壊する。

斧の攻撃はあれがデフォルトだとしたら、相当に厄介だ。

見た目通り威力もかなり高いだろう。


俺は敵との距離を詰め、真横から斬り掛かる。

双剣と斧は火花を散らし、お互いを受ける。


純粋な力ではコイツには遠く及ばない。

だがスピードに関しては俺の方が上だ。


上下左右、あらゆる方向からの斬撃。

その斬撃はオピオタウロスの身体に細かな傷を作っていく。


――なんだこの違和感は。何か……見落としている。


激しい攻防が続く中、大斧を振るオピオタウロスに違和感を覚えた。

大きく腰を捻り横薙ぎの一撃。俺は跳躍しそれを躱わした時、その違和感の正体に気づいた。


「うなじの傷がない……だと? まさか、自動回復かッ」


確かに先程俺はうなじを突き刺した。決して深くはなかったが、この短時間で出血が止まるほど浅くもない。


それなのに傷は見当たらず、勿論出血している様子もない。


馬鹿げた攻撃力に、HP自動回復のスキル。

近距離も強い、遠距離もある。


――正真正銘の化け物じゃねぇか。ちまちま時間をかけるのはやめた方が良さそうだな。


【スキル 王の資質Lv7を使用します】


【ステータスがアップしました】


オピオタウロスは大斧の重さを利用し、振り抜き1回転するとそのまま空中の俺に大斧を振り上げる。


俺は影化を使い、敵の正面に出ると双剣で左右の脚を斬りつける。右脚を炎が炙り、左脚の傷口が凍りつくが、コイツの体制値が高いのかさっきからほとんど属性ダメージが入っていない、


オピオタウロスはそれに怯むことなく、左脚を叩き付ける。

ギリギリ回避するが、大地を砕くその一撃は雷撃を呼びそれに被弾する。


被弾した雷撃は俺の右腕を焼け焦した。

鋭い痛みが鼓動に合わせ押し寄せる。だが、腕の機能に支障がないだけまだマシだ。


「クソッ! 素手にもあの雷がついてくんのか。あの小汚い角が雷の源か? なら厄介なそこから潰してやるッ」


痛む腕に構うことなく駆け出す。

生半可な攻撃は自動回復ですぐに回復される。


【スキル 疾風迅雷Lv2を使用します】


【ステータスがアップしました】


更に加速した俺は、毒牙を振り上げる。

大斧により弾かれるが、それを軸にして縦回転。


そのまま捻れた角に影縫を斬り入れる。

が、へし折るか切り落とすつもりの一撃は、僅かに傷をつけるだけに終わった。


――なんて硬さだ。大罪を使うべきだったか!


俺の狙いに気付いたのかオピオタウロスは、雷を纏うと雄叫びを上げ全方位、無差別に雷撃を放つ。


影化で瓦礫の影に移動し回避するが、毎回あれをやられれば遠中距離の攻撃が皆無な俺には、どうする事も出来ない。


だが今のところオピオタウロスとも互角に戦えている。時間制限はあるが大罪を重ねがけすれば、一気に優勢に持って行ける可能性は十分にある。


そう、思っていた。


オピオタウロスは大斧を大地に突き刺し、天に向かい咆哮。

そして、淡く光る白銀の体毛をどす黒いオーラが包み込んだ。


俺はあれを知っている。


「ここに来て自虐系スキルだと? デタラメな奴だ」


額に一筋の汗が垂れる。


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