63話 2度目のレアリティアップ
【おめでとうございます。クリぼっち聖夜祭初クリア特典として、聖夜の贈り物×1 を獲得しました】
『早かったね! お疲れ様!』
支援施設に戻ると、先程とは違いサンタコスチュームのアルタートが出迎えた。
サイズのせいで一瞬ルドルフと重なって見えてしまい、俺としてはその姿は遠慮して欲しいところだった。
「お前の言う通り、難易度はそれなりに高かったから苦労したぞ」
『でしょ! 今は君じゃないと無理だよ。でも、お目当ての物は手に入ったんだし良しとしようよ!』
お目当ての物、と言うのは聖夜の贈り物の事だ。
進化水晶の他に何が選べるのかは分からないが、それなりのアイテムでもない限りは悩んだりはしない。
俺は無言でウィンドウで聖夜の贈り物をタッチすると、
【聖夜の贈り物:進化水晶、星の欠片、R7夜空のマントのうちから1つだけ、アイテムを選ぶことが出来ます】
星の欠片とマントか。前者は集まる気がしないから論外として、マントの方は正直に言えば欲しいアイテムではある。
このマントは魔法耐性がかなり強く、終盤でも役立つ装備だ。
だが今現状で言えばやはり、
【進化水晶でよろしいですか?YES/NO】
俺はそのままYESを押した。
【進化水晶を獲得しました。自動的にアイテムボックスへと移動します】
――よし、これでR6に進化することが出来る。
【進化水晶をR5クロード・ラングマンに使用します】
【R5クロード・ラングマンのレアリティがR6に進化しました】
【ステータスが大幅にアップしました】
【レベル上限がアップました】
【蓄積されていた経験値が加算されます】
【レベルがアップしました。スキルポイントを5獲得】
【ステータスがアップしました】
やかましい程次々にウィンドウが表示されていき、R6になった事で俺のステータスはかなり上がった。
これでまた1つ目的に近付くことが出来た。
――もう少しだ。もう少しでアイツをぶっ殺してやれる。
そのウィンドウを見たアルタートは、ニコニコしながら俺の肩にとまり、
『おめでとう! また一段と強くなったね! このままもう1つのダンジョンに行くでしょ?』
「ああ、配布系のダンジョンなら消耗していても問題ないだろ」
『そう言うと思ったよ! 実はもう皆に招集をかけちゃってるんだ!』
丁度そのタイミングで、宿舎の方からウルが目を擦り、大欠伸をしながらこちらは向かってくるのが見えた。
――人がボスと戦ってるあいだ爆睡してた癖に……なんか腹立つな。
「むぅ、なんじゃこんな朝っぱらから……ワシはまだ眠いのじゃぁ」
そう言って目の前でボサボサの髪をかきながら、再度欠伸をするウルの頭に拳骨をした。
「ぃっ――な、なにをするのじゃぁ!」
「お前が悪い」
涙目で頭を両手で抑え、睨み付けてくるがこの位で許してやろう。
「駄目ですよ、ウルちゃんをいじめちゃ! ウルちゃん大丈夫ですか」
いつの間にか合流したリリアが、ウルを抱き寄せ頭を撫でる。
「もっといってやるのじゃ。こやついきなり殴りおったのじゃ! ワシはなーんにも悪いことしてないのに」
「全く人の気も知らないで呑気な奴だ」
ウルは舌を出し、憎たらしい表情で煽ってくるのでもう1発拳骨をしようとしたら、さすがにリリアに止められた。
そこから数分、アルベルトとクラッドも合流しメンバーが揃うと、アルタートは他の奴らには説明もせずに魔法陣を展開した。
『詳しい事はクロードから聞いてよ! それじゃあ行ってらっしゃい!』
なんて無責任な奴だ。
笑顔で見送っているが、全部俺に丸投げしただけじゃねぇか。
文句を言っても仕方がないので、もう1つのイベントダンジョンへと転移した。
転移した先はいつぞやの階層で行った街に似ている。あの時のように人々の姿はないが、その代わりに煌めくイルミネーション。
色とりどりのライトに照らされた噴水が幻想的で、巨大なクリスマスツリーも用意されている。
雪も程よく積もり、美しい冬の街並みをつくりだしていた。
【メリークリスマス! この街には沢山のプレゼントが隠されています! 探しだしてプレゼントをゲットしましょう!】
【クリア条件:プレゼント0/15】
ウィンドウが表示される。どうやらこのダンジョンは非戦闘ダンジョンで、プレゼントを探し当てるだけでいいらしい。
ニコラスの戦闘と比べると、悲しくなるくらいに優しい展開だ。
俺は早速プレゼントを探しに行こうとすると、
「クロード! さっきのお返しじゃっ!」
「――いてっ」
俺の後頭部に適度な硬さの何かが当たる。それと同時にうなじにヒヤリとした感触。
どうやらウルが雪を丸めて投げてきたらしい。
「てめぇ……後悔するな――」
言いかけた所で、また俺の顔面は雪玉が1つ。
「あ、兄貴……今のはその手が、滑って……ふっ……」
「アルベルト、お前わざとだな」
雪玉を丸めて投げるのに手が滑ったも糞もないだろう。それにコイツは最後に耐えきれずに鼻で笑っている。
「クソガキ共が」
「そんなことしちゃクロードさんが可哀想ですよ! 」
リリアは俺の顔に着いた雪を指で払い、アルベルトとウルを止めに入った。
可哀想というのは納得がいかないが、この際止めてくれるのならなんでもいい。
「やるならもっと思いっきりやりましょう!」
「――は? うわっ!」
次の瞬間には、リリアが両手で雪を大量にすくい上げ、俺の顔面に押し付けてきた。
「ふふっ、たまにはこう言うのもいいんじゃないですか?」
「いいわけ、ねぇだろうが」
それを見てウルとアルベルトは笑い転げている中、クラッドだけは1人もくもくと雪だるま製作に打ち込んでいた。
「――てめぇら……覚悟は出来てんだろうな」
【スキル 王の資質Lv6を使用します】
【ステータスがアップしました】
【スキル 疾風迅雷Lv1を使用します】
【ステータスがアップしました】
蒼色のオーラが俺を包み込んだ。こんなくだらない事に使うのは癪だが、やられた以上倍返しにしてやらなければ気が済まない。
それに3対1だ。文句は合わせない。
レアリティが上がって、初めてスキルを使う相手がコイツらになるとは俺も思っていなかったな。
「――あれ? 俺の雪だるまの頭が消えたっす」
「ちょ、兄貴何マジになって――ぎゃぁぁ」
「ぎゃはは、アルベルトお主何をぶふっ」
「く、クロードさん落ち着いてくぎゃっ」
◇◇◇
◇◇
◇
その後俺は王の資質が切れる間での間、ひたすら3人の顔面に雪玉を投げつけた。
クラッドの雪だるまはかなり大きかったが、まあアルベルトなら大丈夫だろう。
クラッドは俺が雪だるまを奪っても、また別の場所でこっそりと作っていたので、恨みはないが雪玉を作るのも面倒だったのでそれも使わせてもらった。
なし崩し的に雪合戦になってしまったが、その後しっかりとプレゼントも回収した。
雪合戦で疲れ果てたのか、3人は座り込んでいる。
クラッドだけが唯一ピンピンしているのは、雪だるまのおかげだろう。
「お前らなにバテてんだ? この後もダンジョンに潜るんだぞ」
全員が同時に悲鳴をあげた瞬間だった。
そして俺の顔面には一斉に雪玉が飛んできた。
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