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【完結】最弱から始まる廃課金ゲーマーのダンジョン攻略~最弱キャラに転生したけど、知識と経験があるので最強です~  作者: 吉良千尋
第3章

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59話 格の違い


「――は?」


エルメスの顔面は地面に叩き付けられている。勿論やったのは俺だ。

コイツは何が起きたのかわかってないのか、馬鹿みたいに口を開け言葉すら吐けないらしい。


簡単な事だ。高速移動や瞬間移動で攻撃する場合、基本的には背後から攻めるのがセオリー。

俺の影化もそれと同じく、だいたいは背後からの奇襲に利用する。


上や下から攻めれるのならそれも有効だが、影化の場合スキルを進化させて行動範囲を広げる必要がある。


そしてエルメスの場合、コイツが単に馬鹿なだけだ。

俺は何度も影化を使い、背後から奇襲というパターンを見せてきたが、その使い手に似たような事をして通じる訳がない。


エルメスが消えた――正確には超高速移動だが、俺はその瞬間に影化を使い、軽く後頭部を殴っただけだ。

エルメス自身が、自分のスピードについていけてない。視界もぼやけて俺が影化を使った事にすら、殴られるまで気付かなかっただろうな。


恐らくアイツのスキルは雷神。

かなり強力なスキルだが、燃費が悪すぎて使える場面は限られてくる。あんな使い方をしていたら、魔法剣士のメリットなんか何も得られない。


「それがてめぇの本気か? 悲しくなるくらい弱っちぃな」


エルメスはゆっくりと立ち上がり、再び切っ先を向け、恨めしそうに俺を睨む。


「調子に……のるなッ!」


顔面への高速の刺突。

俺は突き出された腕を掴むことでそれを阻止した。


「貴様……ッ!」


「反抗的な目だな。1つ、お前に手本を見せてやろう」


腕を掴まれているというのに、それに対処することなく俺を貫こうと睨み、力を込め続けるエルメス。


「なにを――」


【スキル 王の資質Lv5を使用します】


【ステータスがアップしました】


蒼のオーラが包み込み、エルメスの目が絶望で染まり、段々と剣に込める力が抜けていく。


「どうだ? 俺に勝てそうか」


【スキル 大罪へ至る者Lv6を使用します】


【ステータスがアップしました】


「ぁ――」


握る力を増し、エルメスの骨が悲鳴を上げる。


「オリビア、コイツのあらゆる防御面に全力でバフをかけろ」


茫然自失していたオリビアが我に返る。


「な、なんで――」

「やりたくねぇならそれでいいが、コイツ死ぬぞ」


「わ、わかった、やるよ」


それを聞くとオリビアは直ぐに祈り、淡い光がエルメスを包み込みバフがかかった。

魔法剣士は全体的にバランスのいいステータスだ。

マーカスのように防御力に特化しているならまだしも、並のステータスでこの状態の俺の攻撃をくらえば、一撃で死んでしまうだろう。


俺は掴んでいた手を離し、


「ほら、仕切り直しだ。まだそのスキル使えんだろ? こいよ」


「貴様ッ……!」


エルメスは勝てないとわかっていながらも距離を取り剣を構える。


そして宙を一閃。

雷撃が放たれ、それと同時にエルメスが消える。


前後の挟撃と言ったところか。


――馬鹿が。学習しない奴だ。


俺は1歩右にズレるとその刹那、雷撃がエルメスを直撃し自爆した。


「アグッ……」


それからエルメスは何度も俺に斬りかかって来たが、その全ては俺に掠ることすらなく宙を斬っていた。


「何故ッ! 何故当たらないッ!」


最早羞恥の感情すらないのだろう。

憤り、地団駄を踏み更にまた単調な攻撃を繰り返す。


エルメスは今、正面から向かって来ている。

自身を奮い立たせるように雄叫びをあげ、雷すら纏えなくなった剣を振り上げ、俺を両断する勢いだ。

コイツから出てくるものは、もう何も無さそうだ。


俺は親指と人差し指で剣を摘むように止めた。


「なッ――」


「ああ、そうだ忘れてた。まだ使えるスキルはあったな」


【スキル 疾風迅雷を使用します】


【ステータスがアップしました】


これが今できる全力。確実にオーバーキルだろうが、ここまでさせたのはコイツだ。

最初から素直に言うことを聞いていれば、こんな事もしなくて済むんだがな。


「死ぬなよ」

「ちょ、ま――」


そして俺は容赦なく、全力の拳を鳩尾に叩き込んだ。

エルメスの身体はくの字に折れ曲がり、血を吐きながら壁に激突しめり込んだ。

これでまだ立ち上がれたのなら俺の負けでもいい。


「リリア、回復してやれ」


「もう! やりすぎですよ!」


その自覚はあるが、コイツらへのお仕置はまだ終わっていない。どうやら退屈そうしている奴が何人かいるからな。

それに、俺に負けたならまだ言い訳も出来るだろう。

反骨心は根ごと取り除く必要がある。


リリアが回復を施している間、勿体ないがMPポーションを2本ほど飲んだ。疾風迅雷が切れればMPが0の俺は、ウルのように地べたに這いつくばってしまう。


さすがにそんな醜態を晒す場面じゃない。


「兄貴はやっぱり最強だな!」

「んじゃ、クロードさんはお疲れみたいなんで、俺達でフロアボス倒してくるっすよ」


「ワシがやるのじゃ! 見ているだけだつまらなかったのじゃ!」


3人はやられたサブパーティの心配をすることなく、浮かれ顔で駆け寄ってきた。


「何言ってんだお前ら、これからお前らもアイツらと戦うんだよ」


◇◇◇


◇◇



あれから数時間が経過し、既に15階層を攻略した俺達は宿舎へと帰還している。


サブパーティとクラッド達の戦いも同じく一方的な展開となった。

俺を抜いたメインパーティ4人と、サブパーティ5人のチーム戦だったがまあ酷いもんだったな。


戦意喪失しているのもそうだが、なにより連携が全く取れていない。

個の力が集まっただけで、全員が好き放題な動きをして結局はクラッド達が圧勝。


ステータス的な意味での俺達の差はそこまで大きくはない。

アイツらはぬるま湯につかりすぎている。メインじゃない分、それでも構わなかったが新層に行くなら話は別だ。


修羅場を経験していないからこそ、個の力に頼り連携を疎かにしてきたんだろうな。


「これでアイツらが折れずに変わってくれればいいが……」


自暴自棄になって45階層に挑む可能性も捨てきれない。まあその時はその時か。


「ん? 今日はいつもより紅茶が美味いな」


俺はいつも通り紅茶をすすった。いつもより味が濃く感じるのは気のせいじゃないだろう。

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