51話 地に落ちる竜
ファイアドラゴンの体躯は今まで殺してきたどのモンスターよりも大きい。恐らく10メートルはありそうだ。
背中に生えているのは鱗が変形した棘だろうか、その棘すら俺と同等のサイズはある。
圧倒的な存在感だ。さっきまでのファイアリザードが道端の石ころのように感じる。
コイツは己の力に絶対の自信があるのだろう。俺が動くまで様子見しているつもりか、地に足を付けて睨むだけで動こうとしない。
――空中に逃げられると厄介だ。翼を重点的に攻めるべきか。
【スキル 王の資質Lv4を使用します】
【ステータスがアップしました】
蒼色のオーラが俺の身を包むと同時に駆け出した。
この階層のフロアボス相手に手を抜く事は出来ない。元のステータスが低い分、スキルで補わなければ勝機は薄い。
右手に影縫を、左手に毒牙を構えドラゴンの眼前に跳躍し注意を引く。
巨大な牙が俺を噛み砕こうと迫るも、はなから目的は翼だ。
影化を使用し俺は一瞬にして翼の影から飛び出る。
双剣を振るい薄い飛膜を穿つ。
ドラゴンは咆哮をあげ、翼で俺を叩き付ける。
「――馬鹿が。学習しろ」
薄い飛膜に刃が通るという事は、翼が迫ってきたとしても斬り裂けばいいだけだ。
わざわざ機動力を落としに来るとはご苦労なこった。
――今距離をとれば一気に不利になる。2度目は簡単に近付かせてはくれないだろう。
飛膜に集中的に剣戟を振るが、巨大さ故に飛行不能レベルにするには俺の短剣ではまだ時間がかかる。
「――グッ」
瞬間、死角から丸太のように太い尾による薙ぎ払い。ギリギリでガードするも、受けた双剣が悲鳴をあげている。
衝撃で地面に叩き付けられ、間髪入れずに追撃の巨大な前脚での押し潰し。
数度横に転がる事で回避したが、直撃していたら笑えない。
双剣もこのレベルの打撃を受け続ければ耐久値がもたないな。なるべく回避したほうが利口そうだ。
いくら相手のレベルがソロ用に落ちているとはいえ、種族的にドラゴンは基礎ステータスが高い。
舐めてかかればすぐに消し炭にされる。
起き上がると、既にドラゴンはブレスの溜めに入ってる。
――あれはマズイッ。
その刹那、視界を埋め尽くすの程の大炎が放たれる。
触れるもの全てを焼き尽くす破壊的なブレスは、その範囲もふざけたほど広く逃げ場がない。
影化を使い一時的に岩の影の中に避難するが、レベルが5になった影化でも4秒強が限界。
それ以上ドラゴンがブレスを放ち続けるなら、直撃は免れない。
1秒。当たり前だが未だブレスは存在するもの全てを焼き尽くしている。
2秒。影から覗く視界は炎しか映らない。
3秒。多少炎が弱まるもなんの慰めにもならない。
4秒。クソッ、幾らか受けるしかねぇ。
強制的に影の中から吐き出され、その身を炎が焼き付ける。
「――舐めるなァァァッ!」
肌を焼かれながら、炎を斬り裂くように双剣を振る。
肉が焼ける嫌な臭いが鼻に届く。
次の瞬間、ドラゴンの牙が炎と共に俺を喰らおうと迫る。
身の丈程の牙に双剣を叩き付けるが、圧倒的な質量により俺がふっ飛ばされ壁に激突。
鋭い痛みと鉄の味を感じる。
――だがおかげで厄介な火炙りは免れた。
ドラゴンは咆哮と共に低空飛行での突進。
真正面からそれを受ける訳もなく、影化を使いドラゴンの背に移動し、
【スキル 大罪へ至る者Lv6を使用します】
【ステータスがアップしました】
「らあああァァァッ!」
ひたすらに刃を振るう。鱗を斬りつけ肉を断つ。
噴き出す真紅の血液が体を染めていく。
ドラゴンは咆哮にも似た悲鳴と共に、その巨体を大地に擦り付ける。
影縫を深く突き立て1本の線を引くように、そのまま背を駆け、血液は数瞬遅れてその線を色付ける。
そのまま顔面へと到達すると、次に毒牙を眼球にぶち込んだ。
ドラゴンは痛みに暴れ狂い、己の顔面ごと俺を大地に叩き付ける。
その間際に跳躍し、それを回避。
駆けて続く刃の切っ先が狙うは柔い喉元。
太い首を双剣が血で染めあげ、その肉を削いでいく。
ドラゴンの前脚が俺を叩き潰すように迫るが、首に向けられていた双剣を返し、3本の指を斬り落とす。
――スキルを使いすぎてMPがもうほとんど残ってない。それにフィールドダメージも馬鹿にできなくなってきた。だらだらと時間はかけられない。このまま一気にケリを付けてやるッ!
跳躍し、先程斬りつけた右の飛膜に再び刃を斬り入れる。
ドラゴンは暴れ狂っているが、動きが単調になっている分回避は容易い。
飛膜は既にボロボロで至る所に血が滲み、その巨躯を支えて飛ぶ力はもう残っていないだろう。
尾の打撃を躱し、ドラゴンの正面に立つ。
ドラゴンはブレスによる広範囲攻撃を放つため、口をあけるが――
「――2度もくらうかよッ!」
瞬時に接近し下顎を蹴り上げ、強制的にそれを閉じる。不完全なまでも、溜まったブレスはドラゴンの口腔内で爆発を起こす。
その衝撃で上がった顔面がさらに仰け反り、大きな隙ができる。
跳躍し、未だ血液を垂れ流している傷口に毒牙と影縫を深く突き刺し左右に振り抜く。
「まだだッ!」
そしてそのまま振り抜いた起動をなぞるように、双剣を横薙ぎに振るう。血液の奔流が俺を襲う。
重厚な肉は削げ落ち、微かに白い骨がチラつく。
同時に、ドラゴンは弱々しい鳴き声をあげその巨体を大地に預けた。
【フロアボスファイアドラゴンを討伐しました。30秒後に帰還します】
【経験値28000獲得】
【銀貨10000 深紅の炎石×1 竜玉×1】
【おめでとうございます。レアドロップ 炎竜の牙を獲得しました】
「トカゲの分際で手こずらせやがって」
HPもMPも残り少ない。仕方ないとはいえ、あまりスキルの重ねがけをし過ぎるのはよくないな。
こうしてソロ階層をなんとか攻略し支援施設へと帰還を果たした。
【ステータス】
名前:R5クロード・ラングマン レベル:29
職業:暗殺者 疲労:62
称号:暴虐の王
装備:R7影縫(耐久値216/250 )
HP+50 攻撃力+45 速度+30
R6サマエルの毒牙(耐久値169/200)
攻撃力+35 速度+25 毒属性15
HP: 110/980(+452)
MP: 11/160(+32)
攻撃力109(+152) 防御力76(+42)
魔攻70(+2) 魔防63(+2)
速度94(+82) 回避62(+12)
称号:暴虐の王
HP+150 攻撃力+30 防御力+20 速度+15
王の威厳 低確率で相手の攻撃を無効化
R6海神の首飾り
MP+30 攻撃力+20 速度+10 回避+10
R5巨人族の腕輪
HP+200 攻撃力+20 防御力+20
R5異界の兜
物理ダメージ10%増加 物理被ダメージ10%減少
全ステータス+2
スキル 剣術Lv7 王の資質Lv4 速度上昇Lv9(8.5%アップ) 影化Lv5 大罪へ至る者Lv6
スキルポイント55




