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43話 福音


オシリスの視線は跳躍した俺に向けられている。

だからコイツは自分に迫る炎の球に気付くのが一瞬遅れた。

その結果、魔法により魔法壁は破壊され、秘剣の刃はオシリスの右肩から左腰にかけて一閃。

皮膚を裂き肉を斬り、秘剣をその血で染めた。


先程オシリスの放った氷の槍を弾かずに、叩き割ったのは音を出すため。

ウルにこの状況を察してもらう為にわざと大きな音を立てた。


前衛は余所見することはかなりリスクがあるが、後衛ならばそのリスクはない。

音に反応したウルに見せつける為、弾かれるとわかっていても再度剣を振るった理由がそれだ。


当然、物理耐性がある魔法壁を展開しているオシリスも視界に入る。

少しばかり賭けの要素はあったが、その後機転を利かせて援護射撃を放ってくれた。


そのおかげで厄介な魔法壁は破壊され、俺の刃がコイツに届いたという訳だ。

おまけに流血も発動している。


「ガハッ……卑怯な、事を……」


「卑怯? 何を言ってんだお前。これは戦略だ。気付かないお前が馬鹿なだけだ」


吐血し、恨めしそうに俺を見る。手応えからしてあの傷はそう浅くはない。


「な、生意気な……」


どうやらコイツはあまり気が長い方じゃないらしい。

歯を食いしばり、顔に血管を浮かばせている。


怒りに振るえながらステッキをかざすと、オシリスのすぐ後ろに幾つかの魔法陣が展開される。

そして先程と同じ氷の槍が数本宙に浮き、その切っ先を俺へと定めている。


「――調子にのるなよッ!」


氷の槍が一斉に俺目掛けて弾幕となり、猛威をふるう。この狭い下水道であれを避けるのは至難の業だろう。

影化がなければな。


氷の槍が放たれると同時に俺は影の中へと入り込む。


「――ッ! どこへ逃げたッ」


――ワンパターンだが結局この場所が1番いい。


俺を見失い慌てふためくオシリスの様子が影の中からよく見える。

次の瞬間には、俺は無防備な背後の影から姿を現し――。


「お前如きに逃げるわけないだろう」


そのまま墨月を右の背面――つまり、心臓部に刺し込む。


「――私は…つ、する……必ず貴様を……」


心臓に刃が入り込み、最早最後まで言葉すら紡げないままオシリスはその場に倒れた。

オシリスを中心に血溜まりが広がり、やがて俺の足元へと到達した。


「言うなら最後までハッキリ言えよ」


クラッドとアルベルトの戦闘も既に終わりが見えている。

どうやらオシリスの取り巻きは、全員魔法使いだったようだ。


下っ端が魔法陣を展開した次の瞬間には、クラッドは身体の回転を加えた槍の投擲を放ち、魔法陣を破壊し槍はそのまま相手の腹部を貫通した。


――クラッドの奴いつの間にあんな戦いをするようになったんだ?


アルベルトはと言うと、相手がオシリス程じゃないにしろ物理耐性のある魔法壁を展開し、攻めあぐねているようにも見える。


しかしタイミングを見計らって、ウルの魔法がそれを破壊。

アルベルトはこの気を逃すまいと一気に距離を詰め、肘を腹部にめり込ませる。

そしてそのまま下がってきた顎に膝蹴りをかまし、がら空きになった横っ腹にダメ押しの後ろ回し蹴り。


「あいつ、結構攻撃がえげつないな」


【フロアボス:オシリスを討伐しました】


【経験値2500を獲得】


【銀貨5000 魔力の種×5 スキルの書(低級)×1を獲得】


【特殊アイテム 盲信者の福音を獲得。このアイテムは使用できません。また、捨てることも出来ません】


【30秒後に帰還します】


「兄貴! 見ててくれたか!」


アルベルトは、拳をぶんぶんと振るい嬉しそうに笑っていた。


「ああ、よくやった。それからウル、さっきは助かった。よくあれでわかったな」


「あれくらい分かるわボケっ!ワシは最強だからあの程度は簡単なのじゃ!」


悪態をつきながらも、褒められて口角が上がっているのに本人は気づいていないらしい。単純な奴だ。


「お疲れっす。なんかいつもより簡単だったっすね」


「私もそれは思いました。あの、本当にこれで終わりなんでしょうか」


魔法でワンパンすることが多いウルとは違い、直接戦うことが多いコイツらは、8階層の難易度が低いのに勘づいていたか。先程クリアを告知したウィンドウを疑うような表情をしている。


「たまにはこれくらい簡単でもいいだろ。それともお前らは毎回死にかけ位が丁度いいのか? それなら俺が直接――」


「い、いえっ! ほ、本っ当にギリギリの戦いでした。ですよねクラッドさん!」


「そうっす! 今回勝てたのは運が良かったからっす! いやあ、危なかったっすねぇ」


言い終える前に慌てながら、言い直すが目が泳ぎまくっている。

せっかく俺が直接鍛えてやろうと思っていたのに、まさかこんなに嫌がられるとは残念だ。

それにどうやら、人殺しの罪悪感はこの戦いで薄れたらしい。

ウルに関しても直接殺していない分らあまりきにしていなさそうだな。


何はともあれこれで8階層は攻略した。

今のところ順調だが、10階層もかなり近い。そこからが本番だ。


そんなことを考えていると、30秒たったのか俺達は支援施設へと転移された。

そのまま解散し、俺は宿舎でアイテムの整理を行う事にした。


「種系はまとめて畑にいるシエルに渡すとして、後はざっくりこんなもんか」


【経験値の書(中級)×1 経験値の書(低級)×15 資質の葉×15 スキルの書(低級)×2】


他にもあるが今必要なのはこれだけだ。

経験値の書は少しレベルの低いアルベルトを中心に使っておくか。

まだ少し先の話だが資質の葉に関しては種が育てば、成長率を上げられる。


問題はスキルの書か。低級からランダムに1つ取得できるが、これを誰に使うかが問題だ。

俺は現状のスキルで間に合っているし、俺だけのワンマンパーティになってしまってもこの先では通用しない。

ウルの火力は今でも十分頼りになるし、他の3人に使うべきだな。

クラッドとリリアか? 俺とクラッドが2強になってアルベルトを補助する形にした方が、戦闘が楽になりそうだ。


リリアは十分役に立っているが、もう一声欲しい所だな。


「福音、か……」


8階層初攻略時に必ず手に入るのが、盲信者の福音。このアイテムはしばらくの間は価値がないが、後々の階層にて重要な役割を果たす。


次に8階層に周回目的で入ったとしても、オシリスとは遭遇せずに少し強いだけの下っ端へと転換されているはずだ。

この福音は下っ端からはドロップすることはない。


――このまま行けば明日は9階層か。少し早いが休むとしよう。

私事ではありますが、皆様のおかけで1万pvを達成することが出来ました。いつも応援してくださりありがとうございます!


引き続き廃課金ゲーマーをよろしくお願いします!

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