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36話 因縁のダンジョン


連結階層をクリアしてから3日が経過した。

その間に8階層攻略はせず、その他の基礎戦力向上や新機能解放とガチャによる人員増加に伴う人事異動、武具の分配などやる事はかなり多かった。


ガチャにより増えた10人の内、6人は使い物にならず素行不良を理由に素材にしてしまった。

あまり合成をしたくはなかったが、そこに関してはアプリの特性上割り切らずにはこの先は進めない。

厳しい様だが、ダンジョンで無駄死にするよりかは遥かに有意義だ。


これに関しては反対意見が多く出ると予想していたが、実際1人も反対することはなかった。

ダンジョン攻略において、向上心のない奴や仲間の足を引っ張る奴は、排除していかないとこちらが死んでしまう。


ただやはり、素材にする事で罪悪感がないかと言われればそういう訳でもなかった。少なからず思うところはある。

合成を免れた4人は比較的まともな奴らで、レアリティは低いが順応性が高く、早くもこの世界のルールに従っていた。


そして俺は、パーティの再編成を行った。

簡単に言えばカミルをパーティから脱退させた。戦力どうこうと言うよりも、新機能である『学術院』に配置する人員として最適だからだ。


この件は全員で話し合い決定した事であり、本人も納得している。


カミルはパーティメンバーとして優秀だった分、後釜は苦労するかもしれないが、アイツはそんな事は気にしなさそうだ。


オリバーのパーティからも、農家の娘であるシエルとドワーフのジンは、それぞれ『畑』と『鍛冶場』に配置する事にした。

これで現在解放されている支援施設の機能には、全て人員を配置することができ、アイテムを生産し続ける事が可能となった。


これでメインパーティ5人、サブパーティ5人、各機能に1人ずつと余すことなく人員を配置する事ができた。


そして俺達メインパーティは今、4階層をクリアし支援施設へと帰還した所だ。


「4階層は問題ないな。このまま経験値特化ダンジョンに行くぞ。これから日に1度は必ず入る事になる」


レベルの上がった俺達なら、あのダンジョンも問題なくクリア出来るはずだ。


「いくんですね、あそこに」


「ああ、俺とお前にとっては因縁のある場所だしな。それに、今後の攻略を考えると避けては通れない道だ」


俺とリリアが最初に入り、初めて仲間を失ったダンジョンだ。まとわりつく因縁にもそろそろ終止符を打たなければならない。


それに、新たなパーティメンバーのレベル上げも効率よくこなさないといけない。


「おっしゃー! どんどんレベル上げて最強になってやるぜ! 兄貴、今すぐにでも行こうぜ!」


と、やかましいのはカミルの後釜として入れた新人、アルベルトという自称格闘家の少年だ。


派手な金髪につり目で、素行の悪そうな見た目とは裏腹にかなり真面目な性格をしている。R4で戦闘能力も比較的高く、従順でパーティメンバーとして申し分ない人材だ。


「アルベルトは元気っすねぇ」


「最強はワシなのじゃ! お前みたいなチンチクリンが最強なぞ笑わせるでない!」


「おい、ウル。いちいち突っかかるな。じゃないと――」


「うるせぇ! お前なんかツルペタじゃねぇか。最強の座は俺のもんなんだよ!」


――やれやれ、また始まった。


カミルが抜けてからというもの、パーティの戦力は上がったが、どうもコイツらは相性が悪いらしく事ある毎に言い合っている。

なんだかんだで連携はしっかり取れているから問題ないが、毎回これを付き合わされるのは中々体力を使う。


「な、なにを言うこの変態小僧め! ワシはまだ発展途上なのじゃ! そんなこと言うたらリリアだってツルペタじゃろうが!」


ウルはそう言って対抗するが、リリアが1番の被害者なのは言うまでもない。

恥ずかしそうに顔を赤らめて、胸を隠すように自身を抱きしめている。


「おい、リリア気にするな。ガキ共の戯言だ」


「気にしてませんよ!別になんとも思ってませんから! 話しかけないでください!」


明らかに気にしているであろう態度だが、これは俺が悪いのか? 全く面倒な奴らだ。


「クラッド、どうにかしてくれ」


「俺にぶん投げないで下さいっす」


クラッドは視線をそらし、コイツらをなだめる役は意地でもつくまいとしている。


未だギャーギャー騒いでいるコイツらを見ていると、カミルを抜いたのは失策なのかもしれないと、思わざるを得ない。


「おい、いい加減にしろ。お前ら置いてくぞ」


俺は仕方なく騒ぐガキ共にげんこつをお見舞いし、力ずくで2人を止めた。


「あ、兄貴なんで俺まで……」

「クロード! ワシは悪くないのじゃ!こやつが……」


「次グダグダ言ったやつは置いてく。分かったら黙って大人しくしてろ」


威圧するようにそう言うと、2人はげんこつをくらった頭を抑え、すごすごと下がっていった。


『君も中々苦労してるね』


アルタートはいつの間に現れたのか、俺の肩に止まり2人を見て失笑していた。


「かなりな。それより今から経験値特化ダンジョンへ行く。魔法陣を頼む」


『はいはーい! 頑張ってねー!』


指を鳴らし魔法陣が現れると、俺は足早にそこにふみこんだ。


【経験値特化ダンジョンへようこそ!ここでは無限に湧き出る角兎を狩り放題!時間は300秒です。沢山狩ってレベルアップを目指しましょう!】


支援施設から森林へと視界が変わり、以前と変わらないウィンドウが表示された。


経験値特化ダンジョンの角兎は、最低レベルが5と定められているがそれ以上は俺達のレベルに合わせて変動する。

現状、パーティの平均レベルは10。角兎のレベルも同じ程度に設定されるはずだ。


前回はレベルが低いのと、武器などが揃っていない事もあり、かなりの苦戦を強いられたが、本来このダンジョンで苦戦する事などありはしない。


「綺麗なとこっすね」


似たような階層はあったはずだがクラッドは呑気に、生い茂る木々達とその木漏れ日を見て感心している。


「説明するのも面倒だ。ウィンドウの通り、時間内に角兎を殺しまくれ」


「おう!任せてくれ兄貴!」


アルベルトは拳をブンブンと振り回し、やる気に満ち溢れている。

俺とリリアを除いた3人はこのダンジョンは初見だが、現状の装備とレベルなら特に問題はないだろう。


だが、リリアの表情は少し曇っているように見える。シンの事を思い出しているのだろうか。気持ちは分かるが、それも乗り越えていかなければならない。


「――いけるか」


リリアは目をつむり軽く深呼吸をし、


「はい、大丈夫です!」


どうやら心配は要らなさそうだ。


「ワシが1番乗りじゃぁ!」


そんな俺達をよそに、ウルは木々の間から顔をのぞかせる角兎を見つけ、早々に攻撃を仕掛けていた。

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