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31話 終戦

凄まじい爆風が土煙と共に駆け巡る。

落ちた奴らは確実に生きてはいないだろう。

だが、まだまだ敵の数は多い。スキルにも頼れないこの状況は、あまりいいとは言えない。


土煙が晴れるとそこにいたのは、視界を埋め尽くすほどの敵群。

あと5分もないが、本当に耐え切れるのだろうか。嫌でも脳裏に疑問がよぎる。


――次がキツくなるが仕方ない、か。


俺はアイテムボックスからありったけのゴブリンの傷薬を取り出し、ウルに渡した。


「それ全部のめ。多少なりともMPは回復するはずだ」


ウルは小瓶を受け取り飲み干すと、


「ゲロみたいな味がするのじゃぁ……」


今にも吐きそうな顔でしばらく口に含み、意を決して飲み込んだ。

ゴブリン製だ。味に問題があるのはわかりきってる。


「――く、来るっすよッ!」


クラッドの叫びと同時に、ゴブリン共は奇声を上げながら砦へなだれ込んできた。


「1体ずつじゃだめだッ! 一撃で複数殺せるように攻撃しろッ」


「そ、そんなのどうやって……」


クラッドは俺の言っていることが理解できないのか、それともただビビってるだけなのか不安そうな表情を浮かべていた。

俺はなだれ込んできた敵へ、腕を振り切るようにして数体のゴブリンを斬り裂く。


「――こうやるんだよ」


こんなの1体1体やっていたら日が暮れるどころか、無限に終わらない。

ゴブリンの槍を奪い、それを腹部に突き刺すとそのまま突進し相手のバランスを崩す。

そして倒れたゴブリン達を双剣でトドメを指し、次の敵へと距離を詰める。


【残り時間 3分】


右腕にゴブリンが掴みかかる。秘剣で刺し殺し、敵群へと投げるように肩を振った。


――あと3分。たった3分だ。


リリアの悲鳴が聞こえ、振り返るとジェネラル2体と数体のゴブリンに囲まれていた。


「リリアッ!――くそッ、 どけッ!」


迫るゴブリン達を斬り殺し、リリアの元へと向かう。

視界の端でカミルとウルが追い込まれている。

クラッドはなんとか耐えているが、時間の問題だ。


――数が、多すぎる。このままじゃ核の破壊の前に俺達が持たねぇぞ。一か八か、やるしかない。


俺は死力を尽くし敵を薙ぎ払い、リリアの救助へ急ぐ。王の資質が切れている今、敵の攻撃を避けながらだと間に合わない。

致命傷になりうる攻撃のみ回避し、あとの行動は全て攻撃に回す。


肉が裂かれ、血が噴き出る。痛みはない。怯んでる暇などない。一体でも多くこの状態で殺す。

リリアを囲むジェネラルを後ろから刺突。残る一体は顔面に墨月を突き立てた。


リリアは俺を見るなりすぐに駆けつけ、


「な、なんて無茶な……今回復しま――」

「しなくていい。俺よりクラッドやカミルを優先しろ」


「何言ってるんですかッ! そんなボロボロで、今にも死にそうじゃないですかッ」


リリアの俺を見る目は、心配の中に恐怖があるように見えた。

全身傷だらけで、致命傷はないとは言えこのまま戦い続ければHPは確実にゼロになる。それは俺も自覚している。


「それでいいんだよ」


「貴方……死ぬ気、なんですか」


「馬鹿言うな、こんな所でくたばってたまるか。お前はウルとカミルのところへ行け。道は俺がつくってやる。ゴタゴタ抜かしてる暇はねぇぞ」


カミルとウルが居るところまでの敵を、捨て身攻撃で殲滅し、3人を合流させすぐにクラッドの援護に回る。

3人が何か言っていたが、一々話してる暇もない。


元々前衛と言うだけあって、他に比べるとまだクラッドは少し余力があるようにも見える。


【残り時間 2分】


「――無事かッ」


「ギリギリっす! それよりクロードさん、ボロボロじゃないっすか!」


「そんな事はどうでもいい。ゴブリンの秘薬はまだあるよな。それをウルに飲ませて、あいつの魔法で殲滅しろ」


「り、了解っす」

「行けッ」


押し寄せる荒波を振り払い、クラッドの道を作る。

4人で固まっていれば、多少マシになるはずだ。

それに俺達がここにいる限り、ゴブリン共が核を破壊しに行くことはない。核の守備に回らなくていいのがせめてもの救いか。


クラッドを合流させ、敵群の流入地点である門へと向かう。

濁流のように押し寄せる敵をひたすら殺す。

首を斬り、胸を突き刺し、両断する。


1体のゴブリンを両断すると、その両断された後ろからオークの剣が迫る。コマ送りになる視界。

狙いは胸、心臓だ。


鉄の切っ先が近づく。


――ここまでか。


「――ガフッ」


次の瞬間、オークの剣は俺の心臓を貫いた。

身体の力が抜けていく。俺の血液が噴射し、敵を赤く染めていく。


「クロード、さん……? クロードさんッ!」


リリアの悲痛な叫び声が聞こえる。見なければいいものを……悪い事をした気分だ。

向こうではウルの魔法が敵を焼き尽くしているのが見える。


――アイツらは……大丈夫だな。


視界は徐々に闇が広がっていく。

次々に無慈悲の刃が俺の身体を貫くが、最早痛みはなかった。身体の血液が一滴残らず噴射してしまったような気がする。


【残り時間 1分】


――こんな、ところで……



【R4クロード・ラングマンのHPが0になりました】




◇◇◇◇◇



◇◇◇




【身代わりの人形を使用します。R4クロード・ラングマンが復活します】


【このダンジョンでは、再び身代わりの人形を使用する事はできません】


【スキル:王の資質Lv1を使用します】


【ステータスがアップしました】


【スキル:王の資質がレベルアップしました。ステータス上昇率がアップします】


――一か八かの賭けだったが、どうやら上手くいったようだ。ステータスも全回復している。


「――さっきはよくも殺してくれたな豚野郎。次はてめぇの番だ」


蒼色の光を纏い、俺はオークの細切れに切り裂いた。

ステータス上昇率が上がって格段に強くなった。

Lv1でも十分コイツらを殲滅できるが、今は紙でも切ってるような感覚だ。


コイツらの一挙一動が遅く見える。

四方八方から迫る攻撃を危なげなく回避し双剣で全てを断罪。


【残り時間 30秒】


――残り30秒か。コイツら全員殺し尽くしてやる。


鬼神の如き力で、襲い来るゴブリン達を蹴散らし、門を境に1体も漏らすことなく捌き続ける。俺の後ろには死体が山積みになっていた。


「――らああぁぁぁぁぁッ!!」


ゴブリンもジェネラルもオークもキラービーも等しく、俺の前でその命を散らしていく。

振り下ろされる刃を弾き、その肉を斬る。

拳が迫るなら、その拳をも斬り裂く。

ひたすらその繰り返しだった。敵の数は一向に減らず、無限にも思えるような時が流れる。


そして、その瞬間は訪れた。

俺の眼前に迫っていたゴブリンの剣が、光の粒子となって消えていった。

それとほぼ同時に、砦から光の粒子が溢れ天へと昇る。

それは血に塗れた(まみれた)戦場には似合わない、美しい光景だった。


――やっと、終わったのか。


【クリア条件:砦の防衛を成功しました。30秒後に次のステージへと移動します】


【連結階層の一部をクリアしました。ステータスのが回復します】


【経験値2560獲得】


【レベルアップしました。スキルポイントを5獲得】


「やっと、乗り越えたか……」


俺は倒れるように寝転び天を仰いだ。

今まで視界の大半が赤を占めていので、青く広がるそらが嘘のように見えた。

他の奴らもどうやら無事なようで、こちらに走ってくるのが見える。


――リリアからは、説教をくらいそうだな。




【ステータス】

名前:クロード・ラングマン レベル:10

職業:無職 疲労:21

称号:暴虐の化身


装備:R4墨月(耐久値13/40 )

攻撃力+5 速度+10

R5ゴブリンの秘剣(耐久値96/100)

攻撃力+5 速度+5 出血1%

HP: 80/250(+10)

MP: 20/50

攻撃力45(+35) 防御力33

魔攻29(+10) 魔防26

速度31(+20) 回避20


称号:暴虐の化身

攻撃力+20 魔攻+10 速度+5


R3ゴブリンジェネラルの腕輪

HP+10 攻撃力+5


スキル 剣術Lv2 王の資質Lv2 速度上昇Lv2(5%アップ)

スキルポイント5



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