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21話 2つの誓い



4階層を攻略した俺達は、5階層に挑む前に丸1日費やして4階層を中心に周回しレベル上げを行った。

結果から言うと、全員レベル2以上あげることに成功し、俺はレベル9まで上がった。

スキルポイントも溜まり新たなスキルも手に入れ、ようやく5階層攻略の準備が整った。


それぞれの持つスキルも上げるため、メインの攻撃を周回毎に1人に絞り、本来の使い方とは違う無駄撃ち等もひたすら繰り返していた。


リリアとウルは、MP自動回復のスキルを取得する事で枯渇対策とし、クラッドは槍術、カミルはバリアを取得させた。

そして俺も新たなスキル、速度上昇を手に入れた。


このスキルは、剣術や槍術と同じで常時発動型だ。このままでは大して役に立たないが、レベルを10まで上げることで進化し、最終的に韋駄天というスキルになる。

今は速度上昇Lv2だが、韋駄天まで辿り着くことが出来れば、追いつけるモンスターはそうそういない。


短剣とも相性がいいので俺にとっては必須スキルの1つだ。

ただ王の資質に関しては、かなり使ったつもりだが未だレベルは上がっていない。


「ふぅ、そろそろ行くか」


今日は無駄に疲労をためる訳には行かないので、トレーニングをすること無くアルタートが待つ広場へと向かった。


広場に着くと、他の奴らは既に到着していたようで俺が1番最後らしい。

それに対してウルがギャーギャー文句を言っていたが、昨日寝坊したコイツには言われる筋合いはない。


それを見てケラケラ笑っていたアルタートが、顔の前で止まり、


『次はとうとう5階層だね! いつも以上に対策してるみたいだから安心だね!』


「ああ、できる準備は全てした。今回は長い戦いになりそうだ」


『そうなの? でも君ならやり遂げてくれると信じてるよ!』


そう言って指を鳴らし魔法陣を展開する。


「行く前にお前らに1つ言っておく。俺たちが今から攻略するのは、5階層であって5階層じゃない」


「どういう意味だ?」


流石に今回はカミルでも看破できないらしい。

それも当然、なぜなら――。


「この先は5階層から7階層までの連結階層だ。これまでのように甘くはねぇぞ」


これが俺がすぐに5階層に挑まなかった理由だ。

『seek the crown』の事を何も知らないビギナーの頃、この階で相当痛い目にあったのをよく覚えている。初見殺しの階層なのは間違いない。


「ま、まじっすか!? それって結構ヤバくないっすか。あ――だから昨日あんなにレベル上げしたんすね」


「そういう事だ。全員に当てはまることだが……ウル、特にお前はペース配分を頭に入れておけ。後半になってMP切れは笑えないぞ」


「任せるのじゃ! 最後のボスはワシがカッコよく決めるのじゃ!」


そう言って、3階層でドロップした杖を天にかざした。

後は、正直運の要素も絡んでくるな。

本当は安全マージンをとって、もう少しレベル上げをしても良かったが、この世界を抜け出すには必要なリスクと割り切った。

いつまでもこんな所にいるのはごめんだ。


「――お前ら、死ぬなよ」


緊張にも似た感覚を覚えながら、魔法陣へと踏み込んだ。



連結階層の最初はチュートリアルの時のような、石壁に囲まれた通路だ。勿論、一本道ではなく迷路のような構造になっている。


――あの時の続き、か。


【連結階層へ侵入しました。クリア条件1:オーク3体の討伐 条件2:砦の防衛 条件3:ゴブリンキング1体の討伐】


【連結階層は条件をクリアすると、自動的に次のステップへ進行します。その際HP、MPなどの1部のステータスは一定値回復します。また条件クリア毎に経験値も精算されます】


ウィンドウには簡単にだが、連結階層の仕様が表記された。厳密にはまだあるが、大体はこんなものだ。


「クロードさん、指示をください。私達はどうすればいいですか?」


リリアはウィンドウを見て不安になったのか、明らかに表情が強ばっている。

連結階層だからといって、やることが変わるわけじゃない。気持ちはわかるが力みすぎだ。


「まず、オークの討伐に関してだがこれはいつも通りやればいい。4階層でオークのモーションは頭に入っているはずだ。それを3体同時に相手する。それだけだ」


3体同時、というのがネックだが雑魚モンスターを複数相手取った事もあるし要領は同じだ。

最も、相手のレベルはかなり上がっているけどな。


「ま、まつっす! オーク3体同時になんて、無茶っすよ」


「安心しろ、俺が2体引き受けてやる。お前らはいつも通りの討伐に専念すればいい」


クラッドはそれを聞いて少し安心したのか、これ以上騒ぐことは無かった。

俺の負担はかなり大きいが、この中ではレベルが高くスキルも豊富だ。楽な戦いにはならないが妥当な采配だろう。


1番面倒なのが、負担を均等にした結果誰かが殺られることだ。1人やられればその後はお察しの通り、そこから一気に崩れる。


だから結局、俺が2体相手をするのが自分にとっても、コイツらにとってもメリットが大きいのだ。


「他に何かある奴は?――ないなら行くぞ」


これ以上は特にないようなので、早速5階層攻略のため通路を進んだ。しばらく歩くと三本の別れ道に出くわした。構造上は十字路だな。

だがどの道も先が暗く、奥までは見通す事が出来ない。


「――クロード!ワシは右に行きたいのじゃ」


右、か。どの道全てを通るつもりだが、連結階層ということを念頭に置くと、正解は――。


「いや、ここで少し待機する」


「なるほど、どの道にもモンスターがいるということか」


カミルの言う通り、どの道を通ってもモンスターが待ち構えている。

正確に言うと、モンスターはこちらへ向かって歩いてくると言った方がいいか。


どの道を進んでも、討伐が遅れれば後ろからモンスターが迫ってきて、挟撃されてしまう。


単発の階層ならそれでもいいが、ここは連結階層。長丁場になるは間違いないので、リスクはなるべく減らしたい。


「よくわかったな。その通りだ」


ふと、リリアが1歩前に出て控えめに右手を上げ、


「――あの。提案なんですけど……2体はクロードさんで、残りの1体を私達にしませんか? 負担を増やしたい訳じゃないんですけど、オークの時に役立つかと思います」


確かに、それは盲点だったな。リリアの言う通り次の状況と、フロアボスでの戦いは数に関して言えば同じであり、良い練習台になりそうだ。


「そうだな、ならお前らは右へ行け。この狭い通路じゃ分担は厳しいだろ」


「クロードさん、私が提案したのに言うのも違うかもしれませんが……危なくなったら、必ず助けを求めてくださいね」


リリアは俺の手を取り、真剣な眼差しで告げた。


「心配すんな。オークでもあるまいし問題ない」

「約束、して下さい」


適当に流そうとしたが、手を握る力が強くなりそれを許してはくれなかった。


「わかったから早く行け」


必要以上に念を押されるが、俺としてはリリア達の方が心配だった。

レベルは上がったとはいえ、まだまだ緊張しているようで、普段通りに動けるかどうか。


そして、作戦通りリリア達は右に進み、俺は十字路で待機。


待つこと数分。前方と左方向から微かに足音が聞こえてくる。

もうアイツらは戦っているだろうか。いや、人の心配をしてる場合じゃないな。


「――チュートリアルを思い出すな。あの頃は、ゴブリン相手にビビって来た道を全力で逃げたっけ」


忘れもしない、この世界での全てはあそこから始まったんだ。

まだ数日だが、本当に色々あった。


俺は自分の右手を開き、傷を眺めた。

自分に誓ったこの場所で、シンに誓った傷を見て、身体が熱くなるのを感じた。


――俺はもう……弱かったあの頃とは違う。


通路には既に、2体のホブゴブリンが姿を現しこんぼうで俺を叩き潰そうと駆け出していた。


「――かかってこい雑魚共」




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