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109話 魔女の秘密


まず、ここが弐の間である事はウィンドウがそれを告げいているので間違いない。ただ今までのダンジョンでは、クリア条件の告知もされていたはずだ。

今回はそこが欠けている。クリア条件が不明なのか、それともそもそも条件がないのか。

もし前者ならそこも含め攻略になっているのだろう。後者は中々考えにくいが、仲間内で争わせるようなダンジョンだ。今までの常識はあまり通用しない。


──それに、ルルの奴はいかにもこのフロアのボス的振る舞いをしているが、そもそもアイツはなんなんだ? 本当に神域ダンジョンの設定に組み込まれているのか? アルベルトはアイツを知っていた。つまり、侵入経路は不明だが外部からの乱入者である可能性も捨てきれない。


「駄目だ。考えた所で埒が明かねぇ。不死の条件も、クリア条件すら分からない……クラッドも上手く躱しちゃいるが、そう長くは持たねぇ」


多くの触手に襲われながらも、無駄のない動きでそのほとんどを躱している。だが、そのうちの幾つかは被弾し、徐々にその回数も増えているように見える。

クラッドにギリギリまで耐えてもらったとして、それでも3分……いや2分が限界だ。


考えろ。思考を止めるな。


「あ、兄貴……」


微かだがアルベルトの声が聞こえた。意識が戻ったのだろうか。最早俺の知識と持っている情報だけでは、ここは突破できない。

ここに来る前から知っているのなら、もしかしたらそこにヒントがあるかもしれない。


「アルベルト、アイツはなんなんだ。知っている事を教えてくれないか。これ以上モタモタしてるとクラッドどころか全滅しちまう」


アルベルトは細い呼吸を繰り返しながら、ルルを見て一筋の涙を流した。


「わ、わかってんだ。あれが本当のルルじゃ……ねぇって。でも、どうしようもないくらいルルの声でルルの顔で……すまねえ兄貴。本当に」


「謝るな。たった1人の肉親だ。お前は何も間違っちゃいない。立派な兄貴だよお前は」


「はは……兄貴が褒めてくれるなんて珍しいな。本当に……やべえんだな。アイツはダンジョンに行く為のゲートとして、俺の村で……儀式をしたんだ」


アルベルトは弱った笑み浮かべ、何かを決心したように涙を拭った。


「ダンジョンに、行く為……だと?」


「ああ……俺もよく分からないけど、そう言ってた。それと、黙ってたけど……俺もルルも元々この世界、ニフェルタリアの生まれなんだ」


「……」


──少しづつだが、謎が解けてきた。まずルルは恐らく乱入者だ。方法はわからないが、そこは重要じゃない。そしてクリア条件が告知されないのは、ルルによってそれが満たされたからじゃないか? 壱の間の件ももしかするとアイツが絡んでいるのかもしれない。


アルベルトの目はもうほとんど見えていないのだろう。黒目がかすみ、身体も力無くだれている。

リリアに頼んで回復をしてもいいが、きっとコイツはそれ拒むだろう。わざわざ俺に妹を頼んだくらいだ、戦った時から覚悟はしていたんだろうな。


「い、今思えばこのダンジョンはニフェルタリアのおとぎ話に似てるんだ。異界の神が創った塔を、色んな世界の人が集まって登っていく。最後は異界の神を倒して、皆の願いが叶うんだ……俺が好きだったおとぎ話なんだ」


「その異界の神ってのは──」


「願いの神、カイロス」


──願いの神、か。詳しいことは分からないが、辻褄はあっている。ソイツに願いを叶えさせるためにわざわざダンジョンに来たってことか? だが、肝心のルルの正体がわからねぇ。


「アルベルト、そのおとぎ話の中にルルに共通点のあるやつはいないのか。そうだな、例えばカイロスを殺そうとしていた奴とか」


所詮はおとぎ話と一蹴するのは簡単だ。今この手詰まりな状況ではどんな小さな可能性も切り捨てられない。

それに、ざっくりとしか聞いてないが、確かにダンジョンと酷似している。そんな偶然があるだろうか。


「……いたよ。そいつは世界を滅ぼす……不死の魔女メーデイア。でも結局、カイロスの願いによって封印されたんだ」


余程そのおとぎ話が好きだったのだろう。そしてきっと、アルベルトは主人公に憧れていたんだ。最強にこだわる理由が納得出来た。


「不死の魔女メーデイア……」


おとぎ話の通りなら、アイツを倒す術はない。

あくまで予想だが、もしかしたらルル……メーデイアは完全な不死ではないのかもしれない。

完全な不死ならわざわざ妹の身体を乗っ取る必要がないからだ。


──そこら辺が攻略の鍵か。


「アルベルト、最初に謝っておく。これから俺はお前の最も嫌がるであろう事をする」


アルベルトは困った顔で、少しだけ微笑み、


「あ……兄貴はいつだって強引だよ」

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