103話 シスコン野郎
「……俺は妹を救いたい。たった一人の家族なんだ」
アルベルトは俯き消え入りそうな声でそう言った。
現時点で俺がアルベルトを下すつもりは一切ない。この戦いから降りろと、そういうつもりだったがルルの奴が余計な事を言いやがったせいで話が拗れそうだ。
「おいアルベルト、俺は別に──チッ!」
言いかけた所で、眼前にはキラリと光る鋼鉄の刃。
双剣をクロスさせギリギリでそれを防ぐ。
「だめだよおにーさん。どの道こうなるって決まってるんだからさ。きゃはは」
「女の子を相手にするのは趣味じゃないんすけどね……」
「クロードさん、アルベルトさんを頼みますよ!」
「わ、ワシも混ぜるのじゃー!」
クラッドは槍で、リリアは弓を放ち俺からルルを引き剥がす。ウルは1歩出遅れ炎の槍を放つ。ルルに被弾する直前、それは斬っておとされた。
「ふーん、おにーさん以外はゴミかと思ってたけど……少しは遊べそうだね!」
どうやらアイツの日本刀は特殊能力があるらしい。
とはいえ魔法が効かないわけではなさそうだし、ある程度はコイツらに任せても平気か。
それに、今ので火がついた奴も居るみたいだしな。
「わ、ワシの魔法が斬られたのじゃー! 今のはノーカンじゃ! なしなのじゃ! 次はもっと凄いのをぶっぱなすのじゃ」
杖を掲げ無防備にも魔力を溜め始めた。が、考えなしという訳ではなく、仲間を信頼しているからこその無防備さだろう。
リリアとクラッドもそれをわかっているようで、互いに頷き攻撃を仕掛ける。
「……クソ、俺はどうすれば」
アルベルトは未だ答えを出せずにいる。ルルの戦闘能力は恐らくかなり高いレベルにあるだろう。アイツらだけで勝てるとも思えない。コイツがどうするかはわからないが、どう転ぶにしても早いに越したことはない。
「おいアルベルト。てめぇが何を優先しようと俺は構わない。ここで俺達に加勢するも、アイツに加勢するも、傍観者としてこの戦いから降りるのもてめぇの自由だ。どの選択をしようが他の奴にもとやかく言わせねぇ。俺達だって余裕がある訳じゃねぇんだ、さっさと決めろ」
「俺は……ルルを救いたい。その為だけに生きてきた。兄貴、すまねえ」
ある程度予想はしていたが、全くとんだシスコン野郎だ。俺は気づくと口角が上がっていた。こんな馬鹿はきっと探してもそうはいない。
コイツとは随分長い間一緒に戦ってきたつもりだ。それがこんな形で幕を閉じることになるとは誰が想像しただろうか。
アルベルトも決心がついたようだな。いい表情をしている。
あとは俺が、覚悟を決めるだけか。
「──そうか、残念だ。それがてめぇの信念ならそれを貫け。悩む必要も詫びる必要もねぇ。俺は俺の為にここまできた。アルベルト、てめぇは妹のためってだけだ。御託はいい、今度は手加減しねぇぞ。恨むなよ」
【スキル 疾風迅雷Lv8を使用します】
【ステータスがアップしました】
【スキル 原罪の王Lv9を使用します】
【ステータスがアップしました】
【スキル 雷皇帝を使用します】
【雷の鎧が付与され、ステータスがアップしました】
ケラノウスの特殊スキル雷皇帝、初めて使うが中々のもんだな。
雷の鎧と言っているが、実際は俺が帯電しているだけだ。自動防御付きで属性ダメージ250%アップはぶっ壊れてるな。
「これを使ったのはお前が初めてだ。悪いが一瞬で終わらすぞ」
──じゃないと、俺の決心が鈍っちまうかもしれねえからな。
アルベルトの方も最大火力で決めるつもりだな。お互いある程度手は割れてる。長引いた所で何も変わらない。
「兄貴、今まで本当にありがとうな。こんな世界だけど、俺皆に会えてすげえ楽しかった。皆にはごめんって言っといてくれよ」
「お前──」
「行くぜ兄貴ッ」
地面を蹴りつけ距離を詰める。
崩拳、アイツが俺を殺した最強の技だ。あの時よりも更に威力はあるだろうな。圧が半端じゃねぇ。
──すげえやつだよお前は。だからこそ俺も全力で叩き潰す。
【スキル 王の一撃を使用します】
「さよならだ、アルベルト」
迫るアルベルトに向けそっと刃を振り下ろした。
「らあああぁぁぁッ!!!!」
閃光は容赦なくアルベルトに襲いかかり、アルベルトは裂帛の気合と共に拳を繰り出した。
両者が触れると僅かな間、音が消えた。その刹那、凄まじい衝撃波と爆風が辺りを襲った。床は抉れ、破片が皮膚に突き刺さる。
俺はその場から1歩も動かずに、土煙が晴れるのを待った。
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